発達障害者への支援

福冨一郎

 先日、「発達障害者相談支援スキルアップ研修」というのに参加してきました。主催は東京都発達障害者支援センターで、講師はセンター長の山崎順子さんという方でした。

 みなさんは発達障害と聞くと、どんなことを思われますか? 一般的には、空気が読めないとか、頑固だとか、少し変わり者程度に認識されていることが多いようです。また、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズまたはアインシュタインなどの天才が発達障害だったと言う人もいます。これらは、比較的障害が軽い例だと思われます。

 私が見聞きした障害の重い方の中には、コミュニケーションがほとんど取れない方、耳で聞いたことを覚えられない方、いつもとちがう状況になればパニックを起こす方など、いろいろな方がおられます。発達障害と一言で言っても、自閉症スペクトラム、ADHD、学習障害などタイプの違った障害がありますが、この研修では「発達障害」とひとくくりにしていました。

 今回の研修のテーマは「学童への支援」でした。けれど、この研修は大人の方にもあてはまるところが多く、まさに、学校は社会の縮図といったところだと思いました。学校の定義として「基本的に学校もしくは教室のルールと先生の指示のもとに生活するところ」となっていて、そこには発達障害をもつ学童の立場に立つと、彼らが苦手とする様々な状況があります。たとえば、人や声、匂い、物音など情報量がとても多いことによって、うるさくてその場にいられない。トイレが臭くて入れない。気になるものがたくさんありすぎて落ち着かない。話の重要な部分とそうでない部分がわからない。とか、周りの人達に合わせて行動しなくてはいけないので、すぐやりたいのに待たされることがいやだ。興味のないことまでしなくてはいけない。自分のペースでできない。などがあります・・・

 以下、全文は、おりふれ通信355号(2016年11月号)でお読み下さい。
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生活保護問題対策全国会議からアンケートの呼びかけです

編集部
 昨年3月、厚生労働省は、これまでは保護申請時のみに要求していた資産申告について、今後年1回資産申告書の聴取を求めるとする課長通知を発しました。(この通知について詳しくはhttp://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-254.htm

 この通知に基づいて、福祉事務所がグループホーム入居者に対して、50~60万円程の累積金を理由に保護の停廃止を行ったなどの事例が出てきているそうです。

生活保護問題対策全国会議が実態把握のためのアンケートを呼びかけています。
アンケートの内容は、「資産申告書の提出が義務であるかのような説明をされた」「資産申告書の提出を断ったら、指導指示文書を出された」「保護の停止あるいは廃止を受けた」「その時の累積金額」「停廃止通知に書かれている理由」などです。
詳しくは、http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/  

問い合わせは、あかり法律事務所
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階 
TEL 06-6363-3310/FAX 06-6363-3320
E-mail:tk-akari@wmail.plala.or.jp

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夏休み2016

編集部 佐藤朝子 

 今年の夏休みは友人に誘われてハワイ島に行って来ました。久しぶりの国際線の飛行機はエンターテインメントが充実していて、音楽を聴こうと思うとクラシック・ジャズ・Jポップなど様々なジャンルがあり、映画を見ようと思うと洋画・邦画・アニメなど、どれを選べばいいのか決められないぐらいたくさんの種類があり、映画好きの私は見逃した映画や、今話題の映画を楽しみながらウキウキとハワイに向かいました。     

 ホノルル到着後、トランジットを前に友人家族とはぐれたり、レンタカーを借りたらカーナビがなぜかハングル表記!だったりしてドタバタでした。日本のカーナビのように性能が良くないので道に迷いながら進んでいくと突然のスコールがきましたが、雨上がりには大きな虹が!しかもはじからはじまできれいに見えるではありませんか。思わず車を止めて見とれてしまいました。道に迷ったおかげでドタバタを忘れ、素敵な旅の始まりになりました。
 
Rainbow

今回の旅のメインイベントはマウナケア山での星空観賞でした。日中はキラウエア火山などの島内観光をし、夕方から山頂に向かって出発です。マウナケア山は「白い山」という意味で4200mもある富士山より高い山です。高山病を予防するため、2800mの高度で夕飯(お弁当)をとる時間を含めた休憩時間があり、世界で3か所でしか咲かない珍しい「銀剣草」を見たり、同じツアー参加者と話をして期待を膨らませていきました・・・

 以下、全文は、おりふれ通信354号(2016年10月号)でお読み下さい。
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Ginrei2


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書評『精神病院体制の終わりー認知症の時代に』立岩真也 青土社 2015

立命館大学 客員研究員 安原 荘一


 立岩真也さんという方は有名なわりには著作があまり広く読まれていないそうである。その最大の理由は読んでみても読みにくい、わかりにくいという点にあるらしい。立岩真也さんご自身は人前でお話しされる場合は極めてわかりやすく簡潔明瞭に話されるのであるが、モノを書かれる場合は全く別のモードで頭を使われているようである。もっともご本人によればこの本(に限らず最近の本)は、なるべくわかりやすく書こうと努力されているとのことであるが。

 さて本著は全体で2部構成になっている。第1部は「病棟転換型居住系施設」問題に関心を持っておられる方が、より深くその歴史的背景を知ろうと思ったら大変参考になると思う。認知症高齢者の「社会的入院」問題や非人道的な取り扱いは決して今に始まったことではないのである。本著では悪名高い京都の十全会系病院事件の経緯を詳しく追いかけている。単に十全会系病院の問題点のみならず、それを巡る当時の国会審議の議事録やNHKの当時のドキュメンタリー放送等にも丹念に目を通し、また当時の京都の蜷川革新府政の対応や日本精神神経学会の対応、そして前進友の会の当時の動き等、もう今では殆どの人が忘れてしまいかけているような問題に焦点をあてて分析していく、本著第1部第2章は、評者が一番感銘を受けた点である・・・

 以下、全文は、おりふれ通信351号(2016年6月号)でお読み下さい。
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当事者主動サービス連続学習会に参加して

福冨一郎


 ピアスタッフネットワーク主催の「当事者主動サービス連続学習会」に毎月、1年間にわたって参加してきました。全部で12回ありましたが、そのうち10回に参加させていただきました。参加人数は平均して24~25人くらいで、広い部屋で快適でした。

 最初の3回で、当事者主動サービスの基本を学びます。まずは、アメリカから始まったという歴史から入って、機能、原則、科学的根拠などを学びました。その中でとくに印象に残ったことがあります。
当事者主動サービスにおけるプログラム内容は、何でもよくて、ヨガ教室、料理を作る、など、何人かで集まって何かをするというものです。ただ、当事者がやれば何でも当事者主動サービスになるかといえば、そうではなく、原理原則と価値観に則ったものでなければなりません。原理原則には「ピアを基調としたサービス(似た経験をシェアできた人とつながりが持て、成功したロールモデルや症状への対処法、生き残るスキルなどによって希望を持ち、自分たちをエンパワメントできる)、専門家に頼らないこと(お互いにサポートし合う関係性を築くことで、お互いの問題を乗り越えるパワーに気づく)、自主的なメンバーシップ(サービスに受身で顔出しするのではなく、積極的に参加することで、ひとりひとりに責任感が生まれ、プログラムの重要な決定に参加してアイディアや情報を提供することで、自己肯定感が高まる)、平等主義・非官僚制、利用しやすいこと、秘密が守られること、一方的な判断をしない支援」などがあります。価値観には「エンパワメント(人ではなく、状況や問題に焦点を当てることで、他人の自信や自己肯定感が高まるように応援する)、自立、責任、選択(選択肢を提示する、善意の押し付けではなく選ばない権利もある)、敬意と尊厳、ソーシャルアクション(外に向かって行動を起こすなど)」があげられます・・・

 以下、全文は、おりふれ通信351号(2016年6月号)でお読み下さい。
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当事者主動サービス連続学習会を終えて

ピアスタッフネットワーク  (西村聡彦、佐藤由美子、川込あゆみ、飯野雄治)


 私たちピアスタッフネットワークは、2015年度、「当事者主動サービス連続学習会」を開催しました。学習会は国立精神・神経医療センター病院から一室をお借りして2015年4月から毎月一回実施し、2016年3月6日で計12回を無事終えることができました。

1 当事者主動サービスとは
 「当事者主動サービス」(Consumer Operated Services:以下COS)とは精神疾患・精神障がいなどの精神的な困難を抱える人たちのピアサポートプログラムのひとつで、アメリカにおいて実践と研究が進んでいます。COSのごく簡単な定義は当事者活動、つまり当事者(Consumer)が運営を担うサービスといっていいでしょう。COSの形態自体は、日本でいうと地域活動支援センターや就労継続支援事業所、その他公私を問わず様々な組織やプログラムで可能であり、その種別は問いません。とりあえずはセルフヘルプ活動や当事者会、茶話会、当事者中心の授産活動や運動プログラムなどをイメージするとよいでしょう。近年、日本で紹介されることも多いWRAPやIPS(ピアサポート)の実践や議論も研究されたうえで、COSは作られています。

 しかしCOSがこれまでの精神保健サービスと一線を画す点は、経営や運営の決定権を当事者自らがもっていることと、構造・価値・プロセスにおいてCOS特有の要素を有していることです。独自の価値観を構成要素のひとつにあげていること、プロセスの柱にピアサポートを据えていることはCOSの特徴的な面といえます。またCOSは利用者(ときに同時に運営者でもあるわけですが)の健康と幸せに効果があることが科学的な手法で実証されています。その意味で「科学的根拠に基づく実践プログラム(EBP)」のひとつにあげられています・・・

 以下、全文は、おりふれ通信349号(2016年4月号)でお読み下さい。
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こんこんさんの兵隊~戦後70年に想う

どさんこ

 日本敗戦の翌年「息子さんは生きていますよ」と、私の祖父母の家に一人の兵隊服の男が現れた。私の父は昭和20年の6月沖縄で戦死、北海道の小さな村で葬儀は済んでいたのだ。家族は初め信じられなかった。だが、父の戦友と名乗るその兵隊は、父のことも、私たち家族のことも、実によく知っていた。玄関に集まった大人たちに混じっている私の頭をなで、語りかけた。「ああU子ちゃんだね、お父さんはU子ちゃんの写真を持っていたよ。間もなく帰ってくるよ」と。疑っていた家族もついにこの兵隊の言葉を信じたのである。そして「息子は(夫は)(兄は)生きていたんだ!」と、家族全員、舞い上がって喜んだ。

 兵隊の来訪は、上官の命令で、体調を崩している私の父の衣類その他を受け取り、急ぎ戻らなくてはならない、というものであった。だが家族は、「せめて一晩、身体を休めて戻ってください」と、その男の手取り足取りして部屋に上げ、泊めた。そして祖父は「息子(九州まで来ているという)のところへ連れて行ってほしい」と懇願したが、軍の規則だからと断られた。また男はこうも語った。「私の妻子はこんこんさん(占い)をして、私の帰りを待っていた」と。大人たちが浮足立っている間、私はその男のあぐらの中に置かれていた。翌日、祖父の差し出す礼金を男は受け取らなかった。祖父はゆっくりと走り出した汽車の窓からその包みを投げ込んだ。

 それから1週間ほどが過ぎ、「詐欺ではなかったか・・・役場で聞いたら他の町でも同じようなことがあったらしい」と、叔父が疑いだした・・

 以下、全文は、おりふれ通信348号(2016年3月号)でお読み下さい。
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精神疾患にある人の自動車運転に係わる法改定—どう対処すべきか(短縮版)

                                                    みのクリニック  三 野 進

はじめに
 てんかんのある運転手が起こした重大人身事故が続いたことがきっかけとなり、昨年道路交通法改正と自動車運転死傷行為処罰法新設がありました。残念ながら事態は、統合失調症、気分障害やてんかんなど特定の疾患にある人に一方的な責任を負わせ、厳罰化を推し進める方向に向かいました。
 日本精神神経学会(以下、学会とします)は、以前より精神疾患にある人を運転免許欠格事由に挙げていることに強く反対し、精神医学的根拠はないので廃止すべきであると主張してきました。制限するとすれば「原因に関わらず急性精神病状態にあり、認知・判断・行動の能力が明らかに低下し、運転に支障を来たす状態」という状態規定に留めるべきである。そうすることで真に危険な状態を拾い上げ事故防止に役立つことができるとの原則を繰り返し表明しましたが、受け容れられることはありませんでした。
 今回、特定疾患にある人の免許取得に制約を加えるだけでなく、ひとたび死傷事故を起こせば過失であっても通常人より重い刑罰を科すことを認める差別法(自動車運転死傷行為処罰法)が成立したことを学会は重く受け止め、反対の立場を一歩進めて「精神疾患では急性の精神病状態にある時に安全運転に支障を及ぼすことはあるが、病的状態にあっても多くの場合危険運転にいたらない」ことを明確に示すことにしました。危険運転となる例外的な状態を明示し、精神疾患にある人たちの大部分は運転適性があることを精神科医が説明することで、当事者が自動車運転の権利を不当に奪われたり、理不尽な刑罰を科せられる事態を避けられると考えたからです。
 2法が国会で成立した昨年末から政令や法の運用に私たちの見解が反映されるよう警察庁、法務省と折衝を重ね、本年6月に診断書の記載方法、政令の解釈、規制への考え方などをまとめた「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」を公開しました。
 精神科医のためと銘打っていますが、患者さんの運転に携わる権利とリスクの問題を示し、精神科医がどう対処すべきか、その原則を述べたものです。患者さんと家族、また医療・保健・福祉専門職の方々にも活用していただき、今後も改訂を重ね患者さんの生活に資するガイドラインにしたいと願っています。
 ガイドラインに含まれる診断書記載ガイドラインは、学会が警察庁に提案し合意したものなので、警察庁ホームページに掲載され、各都道府県公安委員会にも配布されています。公安委員会は、診断書の記載内容と判断基準によって免許交付の可否を決めます。免許交付を制限された場合には、この基準をもとにその理由を問うことができます。
 今回機会をいただいたので、学会ガイドラインの道交法関連の部分を解説したいと思います。なお、私は香川県高松市の一開業医です。今回の問題では精神神経学会法委員会を担当する理事を務めています。本ガイドラインの内容に責任を負う立場にありますが、この小文で述べた内容は一個人としての発言であることをご承知下さい。

(1)質問票への回答義務
 今回の道交法改定では、一定の症状を呈する病気による重大事故への対策という触れ込みで、「病気の症状についての質問票への虚偽記載への罰則」と「医師の届出制」が新たにもうけられました。
 従来から、免許更新申請書の裏面に病気の症状申告欄がありましたが、自筆署名する義務はなく、形式だけが存在していたと言えます。今回の道交法改定で、この方式では該当者を的確に把握できないとして「運転に支障を及ぼす症状について故意に虚偽の申告をした者に対して罰則を設ける」ことになりました。罰則規定があることから当事者の心理的負担は確実に重くなっています。病気にある人たちは申告すべきなのか深く悩み、運転免許の更新を断念する人もでるでしょう。
 精神疾患に限れば、実はこの新しい質問票制度は従来と変わっていません。精神疾患に係わる質問は「病気を理由として、医師から運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている」という項目だけで、従来と全く同じです。症状に関する質問票なので、病気や症状に関する記載があってしかるべきでしょうが、本来そのような特別な症状はなく、法でも規定されていないのですから書きようがないのです。免許申請や更新の際には、患者さんは免許更新の直前に主治医と相談し、この質問について「はい」「いいえ」のどちらを回答するか相談しておけば、免許更新時に免許センターに行っても戸惑うことはないでしょうし、虚偽記載に問われることはありません。
 学会ガイドラインの【付記】Q&A1〜4で、患者さんが不安を抱かれることについて説明しています。全国各地の運転免許センターでは、「病気の症状に関する質問票の提出義務があり、虚偽記載したときには罰則がある」「一定の病気とは○○病です」と記載された掲示がありますが、これらの表現は言葉足らずで正確ではないことを確認しましょう。
 「病気等で不安のある方は運転適性相談窓口にご相談下さい」という誘導に対する対処も必要です。この窓口で病名を告げ、免許の可否を問うても回答は得られません。手続きの手順は説明してくれるでしょうが、病歴を聴取され主治医診断書を渡されることが大半であろうと思います。欠格病名に該当すれば、制度上、免許可否の決定は主治医か専門医の判断に委ねるので、そうするしかないのです。現状では、相談窓口に行くより学会ガイドラインを読むことで得られる知識の方が格別に多いのではないでしょうか。分からないことは主治医に質問すべきです。

(2)あらためられた公安委員会提出用の診断書
 相談窓口に限らず、質問票への記載内容によって、主治医の診断書を求められることがあります。従来の診断書は、診断時の症状安定だけでなく将来予測を記載することを要求されていました。現時点での運転能力の記載はまだしも、精神疾患が将来にわたって再発することはないとは誰であっても保証することなどできず、精神科医にとっては記載がはばかれる最悪の診断書でした。
 今回改定で診断書を要求される患者さんが増え、刑法罰との関係からも運転適性があることを積極的に証明する必要があることから、精神科医が医学的な判断により記載できる様式を提案しました。精神科医が書きやすいと思われる例示を整理し、公安委員会側の可否の基準と合致するよう合意したものが、学会ガイドラインの最後にある別添3「診断書記載ガイドライン」です。
 精神科医が警察庁の運用基準とこの記載ガイドラインを突き合わせて読めば、免許更新に制約を加えないためにどのような記載が必要であるかわかる筈です。警察庁はあくまで現時点での運転能力と将来再発するおそれの有無を求めていますが、私たちは病気の一般的な再発リスクと区別されて、それ以上の再発リスクがあるという表現で急性の精神病状態が運転能力低下をきたすことを示すことにしました。そして①特別な再発リスクがない、②あっても運転能力に影響はない、③安全運転能力を欠くことがあるが自制できる、の3条件をあげ、その場合には免許を保持できるとしています。「4その他特記すべき事項」に書かれた内容を、主治医に説明して貰えば、当事者にも内容は理解できる筈です。
 この「4」に記載が何もなければ、免許は更新されますが多くの場合6ヶ月後の診断書再提出となります。このことについては、主治医に念を押す必要があります。

(3)医師による任意の届出
 さらに今回の改正では、欠格に相当する病気の症状に該当する人を診断した医師は、その判断により任意に公安委員会に届け出ることができるという規定が設けられました。なんの条件もなく、医師が危険であると判断すれば、公安委員会に通報・届出できるとすれば、医師-患者関係に不信の要素を持ち込み、治療の不安定化をもたらします。また精神科医療機関への受診拒否の問題が深刻化することになります。
 近々日本医師会より「一定の症状を呈する病気にあるものを診断した医師から公安委員会への任意の届出ガイドライン」が公開されます。このガイドラインでは、届出にいたる慎重な手順が示され、精神疾患については、当学会ガイドラインを参照することとしています。学会ガイドラインでは、患者さんの運転能力が低下した状態にある4つの場合を考え、それを全て満たす場合においてのみ届出を考慮すべきであるとしています。
 現実には、この4点全てを満たす場合とは患者さんにとっても危険な状態であるので、殆どの場合入院などの医療措置に至ると思われ、医師が届出だけをするというのは考えにくいと思われます。
おわりに
 精神科医の実感としては、治療をきちんと受けている人が病気の症状を原因として交通事故を起こすことはまれで、事故を起こすリスクが高いのは安定した治療関係を持たない人であろうと思われます。治療関係を持たず医師からの助言を受ける機会もない患者には病気に対する認識もないので申告制度自体が無効で、罰則の有効性には疑問があります。
 繰り返しますが、精神疾患と交通事故との因果関係についての科学的な評価は存在しません。不幸な交通事故を防止する観点から、運転能力に欠ける人の免許を制限することには異論がありませんが、病気に罹患していることのみを理由として運転適性を有する人から免許を剥奪することは断じて許されることではありません。
 次回は、自動車運転死傷行為処罰法についてお話しいたします。

(参考文献・資料)
公益社団法人日本精神神経学会
「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」 
https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/car_crash_penalty/guideline.html


 【編集部から】

 より多くの仲間に読んで欲しいという当事者の方からの要望が複数あったので、著者の了解を得て短縮版を公開することとしました。ご意見、ご感想、ご質問や、おりふれ通信のご購読申込みもお待ちしています。

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精神疾患にある人の自動車運転に関わる法改定 記事資料

1 「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」
http://www.moj.go.jp/content/000109875.pdf

2 「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に関する要望書
https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/car_crash_penalty/files/20131018.pdf

3 日本精神神経学会「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」 
https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/car_crash_penalty/guideline.html

4 「自動車運転関連法案に対する精神神経学会の対応」衆議院・参議院 法務委員会の部分
https://www.jspn.or.jp/activity/opinion/car_crash_penalty/

5 法務省「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に関するQ&A」
http://www.moj.go.jp/content/000117471.pdf

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長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策を読む

編集部 木村朋子


 7月1日「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」のまとめが出た。1月号で長谷川利夫さんが提起した「急浮上する『病棟転換型居住系施設』の問題」に一定の検討結果が出たわけである。直前の6月26日、日比谷野外音楽堂での緊急反対集会「普通の場所で暮らしたい」には3,200人が集まった。前号に転載した「病棟転換施設をめぐる基本的な問題」で藤井克徳さんが指摘されたように、多くの人が精神障害のみの問題ではない根源的問題ととらえたのである。まとめには、「検討会」メンバー25名のうち2名の精神障害当事者を含むメンバーから、「あくまでも居住の場としての活用は否との強い意見があった」と書かれている。しかし結論として、「病床削減を行った場合に、敷地内への居住施設の設置を認めることとし、グループホームの立地に係る規制*の見直しを行う」と病棟転換型居住施設にゴーサインを出した・・・

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