石原 孝二
東京精神医療人権センターの総会が3月27日(日)14時~16時、にしの木クリニック1階会議室(及びズームミーティング)で開催され、規約の改正と運営委員の選出が行われました。総会参加者は24名でした。東京精神医療人権センターでは、この間、電話相談などの活動は続けられていましたが、(資料で確認できる限り)2011年6月を最後に総会が開催されなかったため、運営委員・役員の選出が行われず、会員管理なども行われない状態が続いていました。今回の総会は、規約改正と会員の確定、運営委員の選出を行うことによって、センターの意思決定機能を回復することを目的としたものです。その意味では、今回の総会は、センターの「再建」総会として位置づけられるものだと思います。
東京精神医療人権センターは大阪(1985年設立)に次いで全国で2番目に設立された精神医療人権センターですが、1973年に結成された「東京都地域精神医療業務研究会」(東京地業研)を基盤とする精神科医療の改革活動の中から生まれてきたものです。1981年には東京地業研のメンバーが中心となり、「診療所運動」の拠点として新宿に柏木診療所が開設され、同時に「精神医療をよくする会」が結成されました。また、精神医療をよくする会の機関誌として「おりふれ通信」が発刊されています。(精神医療をよくする会は1992年に解散し、それ以降「おりふれ通信」はおりふれの会によって発行されています。)1985年には、第二診療所として、立川に「にしの木診療所」が開設されました。1985年の大阪精神医療人権センターの設立などを受け、「精神医療をよくする会」のメンバーと弁護士のグループが中心になり、1986年3月の東京精神医療人権センターの設立が準備されていきました。
その後1997年度~2007年度には東京都地域福祉財団(のちに東京都高齢者研究・福祉振興財団)からの助成を受け、独立の事務所をもち、専従の事務局員を雇用するなど、活動が大きく展開した時期もありましたが、財団からの助成が終了した2008年度以降は活動を縮小し、すでに述べたように2011年6月を最後に総会も開催されていません。この10年は、東京精神医療人権センターは停滞期にあったと言えます。ここ数年間は、活動終了も視野に入れた話し合いが行われていたと聞いています。
東京精神医療人権センターの設立以降、日本の精神医療は、人権の擁護という視点から見て、残念ながらより良い方向に向かったとは言えません。過去の東京精神医療人権センターの活動報告やおりふれ通信の昔の記事を読むと、人権侵害の状況の基本的なところは変わっていないのではないか、という無力感と絶望感を覚えます。しかし、これまでの36年間のセンターの活動は、決して無駄ではなかったと思います。個々の相談事例では、相談された方の助けになったことも多かったのではないかと思います。また、精神科医療従事者、支援者、弁護士、当事者など様々な立場の人たちが、そのときどきの制度の下で、どのようにすれば、精神医療における人権擁護を実現できるのかについて、アイデアを出し、議論し、苦闘してきた活動そのものが、大きな財産です。センターの重要な機能には、精神科医療と人権の問題について情報を集め、問題を検討し、具体的な解決策を探るということがあるかと思います。日本全体の精神科医療の制度が大きくかわらないままだとしても、個々の相談事例を通じて、精神科医療と人権の問題を地道に考え続け、試行錯誤と思考の記録を次の世代や新たな担い手へとつないでいく必要があるでしょう。東京精神医療人権センターが解散するべき時は、日本における精神医療と人権の問題が無くなったときでしょう。それまでは、前へと進んでいる実感がもてなくても、この問題を考え続ける場としての、センターを存続させていくことが重要なのではないかと思います。
今回の総会では、組織としてのセンターの再建を目的としました。現在のセンターの活動は、36年前のセンター設立時と比べても、控えめなものとなっていますが、ここからまた、少しずつ活動を拡げ、他の組織との連携も強化していければと思います。
総会で選出された運営委員と規約、第1回運営委員会で選出された役員は以下の通りです。ここから新たなスタートとなります。今後多くの方に、センターの活動にご参加いただければと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【東京精神医療人権センター運営委員・役員】
運営委員=石原孝二、内山智絵、木村朋子、澤田恭子、内藤隆、中村美鈴、長谷川敬祐、尾藤昌子、星丘匡史、村上ひろみ、山本則昭(10名)
役員:(共同)代表=石原孝二、長谷川敬祐、会計=尾藤昌子、会計監査=内山智絵
【東京精神医療人権センター規約】
第1条(名称)本会は東京精神医療人権センターと称する。
第2条(事務所)本会の事務所は以下におく。 (略)
第3条(目的)本会の目的は、以下のとおりとする。
(1)精神医療と人権に係る情報を提供するほか、相談活動、その他の諸活動を行うことにより、精神障害のある人の人権擁護をはかること。
(2)精神医療と人権に関する研究、啓発、研修、提言、出版、などの諸活動を通して精神障害のある人の人権擁護をはかること。
第4条(事業)本会は以下の事業を行う。
(1)電話および手紙、面会その他による情報提供、相談活動。
(2)精神医療と人権に関する研究、啓発、研修、提言、出版などの事業。
(3)精神医療機関についての情報収集と公表の活動。
(4)その他本会の目的を達成するに必要な事業。
第5条(組織)
(1)(会員)本会は、個人の正会員および団体・個人の賛助会員をもって組織する。
(2)(総会)本会は年一回の総会を開催する。必要に応じて臨時総会を開催できる。
総会では運営委員(若干名)を選出するとともに、運営に関する基本方針を決定する。総会の議決権は、個人の正会員のみが有する。
(3)(運営委員会)運営委員会は、役員を選出する。また運営に関する基本方針に基づき、運営に必要な事項を決定する。
(4)(役員)本会の役員は、運営委員会が互選により選出する。
役員は、(共同)代表(2名以内)、会計(1名)、会計監査(1名)とする。
第6条(会費)本会の会費は以下の通りとする。
(1)(正会員)年間3,000円 (賛助会員)賛助団体 年間30,000円 賛助会員個人 年間 3,000円 ※割引制度あり
附則 本規約は1986年3月15日より執行する。
附則2(全面改正) 本規約は2022年3月27日より執行する。
【参照文献】
「おりふれ通信」No.1(1981年)、No.38(1985年)、No. 49(1986年)、No. 113(1992年)
「東京精神医療人権センター活動報告」第1号(1986年)~第25号(2011年)
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