精神医療国家賠償請求訴訟の東京地裁結審に向けて

精神医療国家賠償請求訴訟研究会代表 古屋 龍太

◆はじめに

伊藤時男さんを原告とする精神医療国家賠償請求訴訟(以下「精神国賠」)が、いよいよ山場を迎えています。早ければ来春には結審を迎えるかも知れません。本紙でも、これまでの裁判の様子が小峰さん他の方々から報告されていますが、直近の様子をご報告しておきます。

なお、精神医療国家賠償請求訴訟研究会(以下「精神国賠研」)の現在の会員・支援者は635名、20238月の総会で7つの常設委員会から成る運営委員会体制に移行しました。古屋が運営委委員長(代表)に選出されましたので、今後ともよろしくお願いいたします。

◆第14回口頭弁論

2023年125日に第14回口頭弁論が行われました。法廷の傍聴席には43名、報告会には会場37名+Zoom12名の計49名の方に参加していただきました。

今回の裁判では、原告弁護団側から証人尋問の申請がなされました。これまでの裁判で、原告側弁護団は、精神国賠研が集めた当事者・家族・専門職130名の証言陳述書をもとに、「時男さんひとりの身に起きたことではない」ことを示すために、膨大な証拠資料をまとめて提出しています。また、精神医療の政策に詳しい学識経験者として、精神科医・精神保健福祉士など10名の意見陳述書を裁判所に提出しています。今回、法廷における証人として新たに申請されたのは、以下の4名です。

・伊藤時男さん(原告)

・伊藤順一郎さん(精神科医)

・藤井克徳さん(日本障害者協議会代表)

・横藤田誠さん(憲法学者)

原告側からの申請に対して、被告国側からは、「それぞれ意見陳述書も提出されており証人尋問は不要」との見解が示されました。裁判官は、次回裁判期日で原告の証人尋問のみ認め、その他の方は必要が認められれば検討すると告げました。この結果、次回裁判では、原告の伊藤時男さんを証人に弁護団から1時間の主尋問、被告国側から20分の反対尋問が行われることになりました。

  閉廷後に行われた裁判報告会では、今後の裁判の見通しについて、結審に向かいつつある現状が確認されました。本裁判の結果が、仮に原告側の勝訴となれば、被告国側は控訴するでしょう。仮に原告側の敗訴となった場合には、あくまでも原告の時男さんの意思が優先されます。その場で、時男さんからは「できるところまでやる」との決意が示され、参加者から拍手がわきました。

本裁判も最後の山場を迎え、結審に向かおうとしています。ぜひご予定に組み入れて、傍聴席から時男さんの証言を見守り静かな応援をお願いします。

(中略)

〇出版のご案内

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『かごの鳥~奪われた40年を懸けた精神医療国家賠償請求訴訟』

伊藤時男著/古屋龍太編/寄稿:織田淳太郎、門屋充郎、杉山恵理子、長谷川敬祐、藤井克徳、東谷幸政

出版社:やどかり出版、発売日:2023/12/18

四六判:130頁 定価¥1200+税(¥1320

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〇裁判のご案内

精神国賠第15回口頭弁論

2024年227日(火)15時開廷

東京地方裁判所103号法廷

(東京メトロ丸の内線・日比谷線・千代田線

「霞が関駅」下車、A1出口より徒歩1分)

精神国賠研の会員・支援者は14時半までに裁判所ロビーに集合し、若干のミーティングを行った後に入廷します。

裁判閉廷後は、近くの貸会議室に移動し17時頃より裁判報告会を行います。書籍販売コーナーも設けて、『かごの鳥』その他の関連書籍も特価で販売します。裁判報告会はどなたでも参加可能ですので、ぜひご参加ください。

 

<全文は、おりふれ通信429号(2024年1月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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生活保護基準引き下げ違憲訴訟について思うこと

いのちのとりで裁判埼玉支援者 永山淳子(ながやま・あつこ)

 

3月29日、約9年間継続した生活保護基準引き下げ違憲訴訟さいたま地裁判決が言い渡されました。結果は、引き下げの違法性が認められ、一応勝訴ということになりますが、原告の主張の肝心な部分、すなわち、引き下げの根拠とされたデフレの算出方法は違法であるという部分が否定されたため、大いに不満が残る内容でした。

とはいえ、判決を法律の素人である私が適切にまとめるのは難しく、すでに適切な報告が出ていますので、この場では触れずにおこうと思います。

私がいつも理不尽に感じるのは、行政訴訟は概して長期化しがちで、結論が出るまで原告は長い間落ち着かない状態で過ごさなければならないことです。特に、今回の生活保護基準の下げ幅は、平均6.5%、最大で実に10%という数字です。

月々の生活扶助費は地域や世帯構成等により変化しますが、多めに見積もってもせいぜい10数万円ですから、そこから6%以上も減らされたら生活は大ピンチです。そのような扱いが不当と認められるまで、埼玉県では、9年もにわたり実に30回以上の口頭弁論が重ねられました。その間の当事者の気持ちを想像すると、何ともやるせない思いです。

裁判の長期化は、そのまま原告の高齢化につながります。近年、生活保護利用者の約半数は70代以上ですから、埼玉県でも多くの人が提訴の時点で高齢者でしたが、その人たちが結果的に9年間、裁判を闘うことになりました…

<以下、全文は、おりふれ通信422号(2023年5月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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精神科病院には退院支援義務がある

精神保健福祉士 細江 昌憲

 

東京都日野市の七生病院に入院中にコロナに感染したAさん(女性、50代)が、適切な医療を受けることもなく監禁され、精神的苦痛を受けたと、同病院を訴えた裁判が5月9日から始まった。

この裁判は、劣悪な環境下における監禁だけでなく、任意入院のAさんに対し、病院側が退院支援義務を怠っていたとし、不法行為責任を追及している。なぜ、監禁というおぞましい行為が、安心、安全であるはずの病院内で起きたのか、なぜ、感染する前から退院を求めていたAさんの思いがいつまでも放置されていたのか、精神病院が抱える構造的な問題が裁判で明らかになることを期待したい。

 

「監禁の状況」

Aさんは2021年3月10日にコロナに感染し、即日、ナースコールがない部屋(和室、畳)に6名のコロナ陽性患者とともに10日間も監禁された(南京錠で施錠)。身体的ケアは受けられず、また、入浴や歯磨きも一切できない、排泄は、ポータブルトイレが中央に置かれるだけという、劣悪な環境で、また、その部屋は、大声を出してもナースステーションに声が届かない位置にあった。このため、監禁されていない入院患者がたまたま通りかった際に「水をください」、「トイレがあふれています」などと叫び声をあげ、扉をたたくなどして呼び止め、看護師を呼びに行ってもらうしかなかったという。

この耳を疑うような有様について、担当弁護士は、「悪臭の充満する部屋で阿鼻叫喚ともいえる状況に置かれていた」と話している。これが病院のやることだろうか。

さらに、酷なのは、この部屋から、いつになったら出られるのか、全く知らされていなかったことだ。辛い、きつい状況に置かれたとき、その苦しみからいつになったら解放されるのかわからない、先が見えないほど残酷なことはない。Aさんだけでなく、監禁された方々が絶望のどん底で過ごしていたことを想像すると胸が詰まる思いだ。

このような病院の行為に対し、Aさんは人間の尊厳さえ完全に否定される苦しみを味わったとし、200万円を請求している。この額については、同様の裁判の判例などを参考にしたという…

<以下、全文は、おりふれ通信412号(2022年6月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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裁判傍聴記

当事者 小峰 盛光

2021年629日火曜日にあった精神科病院長期入院の国家賠償訴訟傍聴と報告集会の話をします。その日午前3時まで台東区の当事者と電話で話をし、3時間寝て、午前6時起床。コーヒーを飲んで目を覚まし、午前7時シャワー、午前8時出発、午前9時新橋駅到着。SL広場の喫煙所で一服。これから裁判と報告集会があると思うと眠気が心配になるので、カフェイン入りのエナジードリンクモンスターを買って飲んだ。午前930分、東京地方裁判所に到着。もちろん一番乗りである。なぜそんなに早く行くのかと言うと、当事者の目線で誰が早く来るか、又誰が一番やる気があるのか見たいから。二番目に来たのは埼玉の当事者でした。

次々に地裁1階ロビーに傍聴人が集まって来ました。東京地方裁判所は全面禁煙なので、日比谷公園の喫煙所に行く人もいました。本日は103号法廷です。今はソーシャルディスタンスで、傍聴は50名までですが、少し席が余っていたので3540人ほどが傍聴していたと思います。1人遅れて入ってきたのは、午前3時まで電話で喋っていた台東区の当為者でした。

午前11時開廷。本日は原告側の主張を長谷川敬祐弁護士が話しました。内容は言っていいのか悪いのか、プリントに取り扱い注意と書いてあったので、知りたい人は毎月第2日曜日に開催している精神医療国家賠償請求訴訟研究会の定例会に参加してください。今はコロナでズーム開催。もちろん無料です。

長谷川弁護士の主張に対して、被告側は3ヵ月時間をくれと言い、次回の第4回口頭弁論は927日、次回は国側の主張です。国賠訴訟の楽しいところは国の言い訳です。次回来ないとその場面を見逃すことになります。

裁判が終わると、歩いて隣の弁護士会館に移動。第2回口頭弁論の報告会は西新橋まで歩いたので、今回はラッキーだとみなさん思っていたと思います。弁護士会館5階によい部屋がとれていました。ズームで参加する人もいるため、準備に時間がかかり、その間各団体の宣伝などがありました。

私は一番後ろの席に座りました。司会の人と目があわないよう、質問などで指されるのを避けるためです。私のような当事者もいれば、前の方に座り、手を挙げて指してもらいたい当事者もいます。私の次に裁判所に来た埼玉の当事者は、次々と質問。例えば生活保護引き下げ裁判で、裁判官が判決で国民感情というと、何でも国民感情の判決が出てしまうのではないか等、すごく鋭い質問をぶつけていました。同じ当事者でもこれだけ違う。

そうして午後2時、朝から全く何も食べていないことに気づく。私の頭の中には、腹減った、もう2時だぞ、農林水産省の食堂、手しごとやの咲くら鶏竜田あんかけ丼690円のことしかなかった。当事者3人で食べに行った。うまい!これは本当にうまいから裁判所に行ってお昼食べるなら是非ここがおすすめです。

裁判所を後にして、立川へおりふれ通信の編集会議のため向かわなくてはならないのだ。一気に立川に向かわないと眠気が襲う。編集会議では、今回の裁判の記事を書くことになった。編集会議が終わり、自宅に帰ったのは午後1130分を回っていた。朝6時から夜1130分まで当事者活動。2021629日の内容は以上になります。これだけハードな当事者なのであります。

次回第4回口頭弁論は、2021927日月曜日午後4時 東京地裁103号法廷 裁判終了後報告集会を開催する予定です。

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神出病院事件問題の解決のために 第一回

吉田明彦(兵庫県精神医療人権センター、精神障害/双極性障害当事者)

 

はじめに

神戸市西区神出(かんで)町にある大型精神病院・神出病院(入院病床数465床)のB棟4階で起きた、看護師・看護助手らによってなされ続けた暴行・監禁・準強制わいせつ事件(※)のニュースは、瞬く間に全国の人々が知ることとなり、大きな注目を集めることとなった。

※ 医療法人財団兵庫錦秀会・神出病院で、同病院に勤務する男性看護師・看護助手ら6人が、入院患者たちに対し、男性同士でキスをさせる、男性患者の性器にジャムを塗ってそれを他の男性患者に舐めさせる、トイレで水をかける、患者を病室の床に寝かせて落下防止柵付きのベッドを逆さにしてかぶせて監禁する等の暴力行為を1年以上にわたって繰り返し、その様子をスマートフォンで撮影しLINEで回覧して面白がっていたというもの。被害者数は、当初3人と伝えられたが公判で少なくとも7人(検察は10人と主張)と認定され、公判で6人は暴行・準強制わいせつ・監禁等で有罪とされ判決確定した。

だが、この事件に関心を寄せる人々の間でも、現地神戸の我々と他地域の人々とでは、認識に少しズレがあるように見える。後者の多くにとって、事件は、裁判で加害者6人のうちの最後のひとりに判決が下された20201012日、あるいはそれが確定した同月26日に終わったものとみなされているのではないかという心配を我々は持っている。

そのような認識は事実・実情とまったく異なる。地元神戸では、事件を取材してきた神戸に支社・支局を持つ報道各社も、神戸市当局(健康局)も、議会(神戸市会)も、われわれ兵庫県精神医療人権センターを含む協力団体各方面も、そして、精神科病院協会や精神科診療所協会のような業界団体すらも、そのような認識は持っていない。狭義の「事件」の終わり、すなわち加害者職員6人の裁判の終結をもって幕引きとしたいのは、当該病院とその経営法人グループのほかには誰もいないのではないか。

 

常態化していた患者への暴力

まず、神出病院においては、虐待、いや暴力は当たり前のことであった。公判に出された供述調書や被告人らのことば、および神戸市当局が立ち入り調査を通して確認したところ(情報公開請求資料から確認)からは、患者に暴力を加えてはじめて一人前というような空気が病棟を支配し、若い看護師や看護助手はそれに染められていったことが明らかにされている。

刑事事件化された罪は「1年以上にわたって」という期間のものだったが、それより以前から、入院患者にあだ名をつけて呼び嘲弄する、ガムテープでぐるぐる巻きにして面白がる、車椅子に固定して倒す等々の暴力が、6人以外の多くの看護職員によって日常的に繰り返されていた、それがこの病院だった。

加害者のひとりは、暴行に加わりたくないと夜勤シフトを変えてくれるよう看護師長に求めたが無視されたと公判で供述している(この件について、神戸市当局も裁判より前に3月の時点で確認していることが、情報公開資料で確認される)。しかも、その拒絶の理由はその上司もまた暴力の加害者だったからだという。

刑事事件の被告人として裁かれた6人を除く他の暴力に加担した、あるいはそれを止めたり告発したりしなかった看護職員ら、医師ら、法人経営者らの責任はなおまったく問われていない。

私が、昨年7月2日放映の神出病院事件を扱ったNHK ETV「バリバラジャーナル どうなってるの?日本の精神医療」に一緒に出演して以来、交流させていただいている18年間同病院に入院し今は地域で一人暮らしをする男性、Tさんの話を紹介する。

音楽好きの彼が、決められた就寝時間以降もポータブルCDプレーヤーでイヤホンを使って音楽を楽しんでいたところ、看護師がそれをとがめ、それに反発したTさんを取り押さえようとして肘をぶつけ彼は歯2本を失った。ちなみに、彼はこの話を仕方なかったこととして淡々とする。元々、建設労働や船員として働く屈強な男だった彼がこれほどの暴力に対し抗議することを諦めるほどパワレス化されたという事実に、長期の社会的入院の惨たらしさや看護師による暴力の残酷さを思わずにはおれない証言でもある・・・

<以下、全文は、おりふれ通信400号(2021年4月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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「いのちのとりで裁判」 ~大阪地裁判決から生活保護を考える~

元生活保護利用者 和久井みちる

 

1.大阪地裁判決

「勝った!」

その時、大阪の弁護士さんからSNSに第一報が投稿されました。

2021年2月22日は大阪地裁で、生活保護の引き下げは違法だ・・ということを争う「いのちのとりで裁判」の判決が予定されていた日でした。私も判決が気になって、今か今かと報告が投稿されるのを待っていたのです。

「勝った!」とは、つまり「生活保護の引き下げは違法だ」という主張が認められたということです。

 

2.「いのちのとりで裁判」

「いのちのとりで裁判」は、2013年から実施された生活保護費の引き下げはおかしい、これは違憲だ・・という主張をして、全国で当事者の方1000人近くが原告となり、国を相手に争ってきた裁判です。残念ながら、私はこの裁判が始まったとき、すでに生活保護の利用者ではなくなってしまっていて、原告として一緒に参加することはできませんでした。その裁判は今、日本中で繰り広げられています。そして、今回は2020年6月25日の名古屋地裁判決に続く、二つ目の判決でした。名古屋判決が、偏見に満ちた無理解な判決だったので、大阪地裁の判決を聞いた人たちは飛び上がって喜びました。抜けるような青空の下、大阪地裁前で若手弁護士二人が「勝訴」「保護費引き下げの違憲性 認める」という旗を掲げた映像は、新聞やテレビのニュースでも大きく取り上げられました。

 

3.大阪地裁判決

 大阪地裁の判決文は100ページを超えるほどあり、法律的な文言は私には理解しきれないこところもいくつもあります。しかしそれでも、判決を読んでみて、裁判官が当事者の声をしっかりと聴いてくれていること、その上で引き下げの決め方のおかしさ、違憲性を指摘してくれていることはよくわかりました。さらに、「健康で文化的な最低限度の生活」は、ただ「健康な最低限度の生活」とは違う・・とも言っています。「死なない程度に生きていればいい」ということではなく、「文化的」なのだ、ということです。それはつまり「人間らしく」と言い換えてもいいと私は思います。この判決を考えるにあたって、裁判官自身が「健康で文化的な最低限度の生活」とは・・を自分の中に問い、考えた証なのではないでしょうか。そう考えると、「世論がそうだから」「与党がそう考えているから」とも受け取れるような名古屋判決は、本当に薄っぺらな、思慮のない判決だったと今さらながらため息が出てしまいます・・・

<以下、全文は、おりふれ通信400号(2021年4月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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630調査、さいたま市が情報開示を拒むのは何故???

埼玉県の精神医療を考える会 村田京子

 おりふれ202010月号で木村朋子さんが報告してくださったように、令和元年度630調査情報開示請求に対し、東京や大阪では全面開示、埼玉県でも隔離・身体拘束数以外は概ね開示であるにもかかわらず、さいたま市では、ほぼ全面黒塗りの開示決定でした。しかもマスキング(覆い隠す)情報がある場合は電子媒体での提供不可と紙での提供となったので、衝撃の「のり弁」調査票が届いたのでした。

佐藤光展氏が、神奈川精神医療人権センターHPに<さいたま市が忖度のり弁を提供!/海苔まみれにされた病院も理由わからず困惑広がる>という記事を、のり弁写真付きでアップhttps://kp-jinken.org/room/してくださっているので、ぜひご参照ください。また、東洋経済新聞辻麻梨子記者が、さいたま市に取材し、<精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問>という記事https://toyokeizai.net/articles/-/398941の中で触れてくださっています。こちらもぜひご参照ください。

さいたま市へは、昨年122日に審査請求書を提出、この度(119日付)弁明書が届きました。

非開示理由は「個人を特定できる可能性」と「病院の正当な利益を害するおそれ」の2点ですが、弁明書の中にはこんな記述がありました。「他人には個人が識別できなくとも、本人が開示されたことを知れば精神的な苦痛を受けるおそれがある情報と判断する」「市がむやみに開示することで当該病院と患者の信頼関係に不測の事態を招きかねず、延いては病院の事業運営に影響を与えるものである」。

さいたま市が患者さんや病院に対して、また630調査について、本当にこう考えているのかはわかりません(本当にこう考えているとしたら、それはそれで驚きです)が、こうまで言って開示を拒むのは何故なのか? 本当の理由、判断の根拠を知りたいものです。

上記、辻記者の記事の中に、多摩あおば病院中島副院長の言として「630調査にあるような情報は、出すのが当たり前」「精神疾患を持つ人の受け皿をどう見つけていくかは、病院だけの責任ではない」「みんなでどう支援していくかは社会の問題です。別に隠す必要はないんです」とありました。私が一市民として情報公開を求めているのも、患者や家族の苦しみ、病院の大変さや問題を共有し、社会全体で少しでも改善したいと願うからです・・・

<以下、全文は、おりふれ通信398号(2021年2月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

 

 

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精神医療国家賠償請求訴訟の目指すもの

東谷幸政(精神医療国家賠償請求訴訟研究会代表)

精神医療国家賠償請求訴訟研究会は、2020930日に伊藤時男さんを原告として国への提訴を行った。この訴訟は、長年にわたって我が国の悲惨な精神科医療の状況を放置してきた我が国の精神医療行政に対して、その不作為責任を追及するものである。

精神医療国家賠償請求訴訟の必要性を最初に呼びかけたのは、1995年の東京都地域精神医療業務研究会の夏合宿においてであった。この呼びかけは、「勝てるはずがない」とか、「そのような大変なことをやれる力量が無い」という反応によって打ち消されてしまった。そのような意見には納得しなかったが、「精神の当事者が立ち上がって、国を追及するのなら、それを支援するのが本当で、東谷さんが旗を振るというのは、立ち位置としておかしい」という意見には、「では、しばらく様子を見ることにしよう。」と考えた。

しかし、時は流れて、ハンセン熊本地裁判決の勝利の後も、いっこうに立ち上がる当事者は現れなかった。このため、日本病院・地域精神医学会総会をはじめとして、あらゆる場所で精神国賠の必要性を訴えたが反応は乏しかった。主要な当事者運動の活動家に、一緒にやろうと呼びかけたが、「そんな大変な役割を当事者に押し付けるな」と怒られる始末だった。

2012年になって、もうこれ以上、待つことは出来ない。アメリカの当事者運動や消費者運動で弁護士がしばしばやるように、原告の公募方式で原告を集めて、制度を変えて行くことを決意した・・・

連絡先:精神国賠相談部会の相談電話番号 03-6260-9827 10時から20時まで 原告、証言、入会に関する相談です。

精神国賠訴訟研究会事務局FAX 042-496-3143 メールseishin.kokubai@gmail.com 研究会活動に対するお問い合わせです。

<全文は、おりふれ通信397号(2021年1月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ> 
 

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国家賠償請求訴訟を提訴しました

弁護士 長谷川敬祐

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、令和2年9月30日、東京地方裁判所に対して、長期入院者に対する国の精神医療政策の違法性を問う国家賠償請求訴訟を提訴いたしました。この裁判は、精神医療国家賠償請求訴訟研究会が中心となって、原告の方を支援し、提訴に至ったものであり、私はその一旦を担っているに過ぎません。ですが、担当弁護士として裁判の内容等について説明させていただくとともに、一人の弁護士として思うことを書かせていただきます。

この裁判は、これまでの日本の精神医療政策の違法性を問う裁判です。被告は国であり、不当入院の原因を病院側に求める裁判ではありません。具体的には、日本の精神医療政策が、精神障害のある人は社会にとって危険性のある者であるという位置づけのもと、同意入院(医療保護入院)を規定し、現在まで変わらずにこれを運用していること、精神科病院について、長期収容を前提して民間病院に委ね、民間病院の設立を容易にしたり、医師や看護師数が一般科よりも少なくて構わないとする、精神科特例を設けたりしたこと、欧米諸国が入院医療から地域医療や地域福祉への移行を具体的に検討し、政策を転換してきたのに、日本は少なくとも原告の入院時期との関係では、医療政策、予算いずれも実効的な転換を行ってこなかったこと、強制入院であるにもかかわらず、精神衛生法の同意入院の実体的な要件は極めて曖昧であり、その審査手続も不十分であること、上記構造で形成された地域社会側の偏見があるにもかかわらず、強制入院の同意者として家族を位置付け、家族に本人の人権擁護とのジレンマを負わせ続けてきたこと等から、構造的に長期入院が生じる状態にしていたことを前提とし、それによって生じた長期入院により、我々が当たり前のように享受している地域で生きる権利を剥奪されたことは、憲法13条(幸福追求権)、憲法14条(平等権)、憲法22条1項(居住、移転及び職業選択の自由)、憲法25条(生存権)、憲法31条(適正手続きの保障)等に違反すると主張しています。そして、そのような憲法違反の状態が生じていることやその状態を是正すべき必要性があることは、昭和43年のクラーク勧告、その後の国際法律家委員会の勧告、国連の「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善のための原則」等から十分に認識できたにもかかわらず、国は長期入院者に対する実効性のある退院措置を講じることがなかったこと(不作為)が、国家賠償法上の違法であるとして、提訴いたしました・・・

<以下、全文は、おりふれ通信397号(2021年1月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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「引き出し屋」に精神科病院が連携!?

 引きこもり「支援」と称して、部屋から強引に連れ出し、施設に収容する「引き出し屋」の存在が問題となっている中、報道によると、その「支援」団体の一つである、あけぼのばし自立研修センターが暴行罪、逮捕監禁致傷罪で訴えられた。

  注目すべきは、同時に成仁病院(東京都足立区の精神科病院)の医師ら4人も逮捕監禁罪などで訴えられたことだ。同センターの施設に入所することを地下の部屋に監禁されながら9日間拒み続けた原告を脅し、同病院の閉鎖病棟に入院させたとのこと。原告は3日間に渡りおむつをされ身体拘束され50日間入院させられたという。

  弁護団は同施設の他の人に対する「見せしめ」の可能性も指摘している。訴えられた成仁病院はホームページで電気けいれん療法を喧伝する病院である。もしも強制入院を悪用しているとしたら大問題だ。

  強制入院は当事者にとっては逮捕監禁と変わるところはない。今回裁判になったら、単に「病気じゃないのに入院させられた」を争うものでなく、強制入院自体が問われるような裁判になることを望みたい。(kai)

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