神出病院事件問題の解決のために 第一回

吉田明彦(兵庫県精神医療人権センター、精神障害/双極性障害当事者)

 

はじめに

神戸市西区神出(かんで)町にある大型精神病院・神出病院(入院病床数465床)のB棟4階で起きた、看護師・看護助手らによってなされ続けた暴行・監禁・準強制わいせつ事件(※)のニュースは、瞬く間に全国の人々が知ることとなり、大きな注目を集めることとなった。

※ 医療法人財団兵庫錦秀会・神出病院で、同病院に勤務する男性看護師・看護助手ら6人が、入院患者たちに対し、男性同士でキスをさせる、男性患者の性器にジャムを塗ってそれを他の男性患者に舐めさせる、トイレで水をかける、患者を病室の床に寝かせて落下防止柵付きのベッドを逆さにしてかぶせて監禁する等の暴力行為を1年以上にわたって繰り返し、その様子をスマートフォンで撮影しLINEで回覧して面白がっていたというもの。被害者数は、当初3人と伝えられたが公判で少なくとも7人(検察は10人と主張)と認定され、公判で6人は暴行・準強制わいせつ・監禁等で有罪とされ判決確定した。

だが、この事件に関心を寄せる人々の間でも、現地神戸の我々と他地域の人々とでは、認識に少しズレがあるように見える。後者の多くにとって、事件は、裁判で加害者6人のうちの最後のひとりに判決が下された20201012日、あるいはそれが確定した同月26日に終わったものとみなされているのではないかという心配を我々は持っている。

そのような認識は事実・実情とまったく異なる。地元神戸では、事件を取材してきた神戸に支社・支局を持つ報道各社も、神戸市当局(健康局)も、議会(神戸市会)も、われわれ兵庫県精神医療人権センターを含む協力団体各方面も、そして、精神科病院協会や精神科診療所協会のような業界団体すらも、そのような認識は持っていない。狭義の「事件」の終わり、すなわち加害者職員6人の裁判の終結をもって幕引きとしたいのは、当該病院とその経営法人グループのほかには誰もいないのではないか。

 

常態化していた患者への暴力

まず、神出病院においては、虐待、いや暴力は当たり前のことであった。公判に出された供述調書や被告人らのことば、および神戸市当局が立ち入り調査を通して確認したところ(情報公開請求資料から確認)からは、患者に暴力を加えてはじめて一人前というような空気が病棟を支配し、若い看護師や看護助手はそれに染められていったことが明らかにされている。

刑事事件化された罪は「1年以上にわたって」という期間のものだったが、それより以前から、入院患者にあだ名をつけて呼び嘲弄する、ガムテープでぐるぐる巻きにして面白がる、車椅子に固定して倒す等々の暴力が、6人以外の多くの看護職員によって日常的に繰り返されていた、それがこの病院だった。

加害者のひとりは、暴行に加わりたくないと夜勤シフトを変えてくれるよう看護師長に求めたが無視されたと公判で供述している(この件について、神戸市当局も裁判より前に3月の時点で確認していることが、情報公開資料で確認される)。しかも、その拒絶の理由はその上司もまた暴力の加害者だったからだという。

刑事事件の被告人として裁かれた6人を除く他の暴力に加担した、あるいはそれを止めたり告発したりしなかった看護職員ら、医師ら、法人経営者らの責任はなおまったく問われていない。

私が、昨年7月2日放映の神出病院事件を扱ったNHK ETV「バリバラジャーナル どうなってるの?日本の精神医療」に一緒に出演して以来、交流させていただいている18年間同病院に入院し今は地域で一人暮らしをする男性、Tさんの話を紹介する。

音楽好きの彼が、決められた就寝時間以降もポータブルCDプレーヤーでイヤホンを使って音楽を楽しんでいたところ、看護師がそれをとがめ、それに反発したTさんを取り押さえようとして肘をぶつけ彼は歯2本を失った。ちなみに、彼はこの話を仕方なかったこととして淡々とする。元々、建設労働や船員として働く屈強な男だった彼がこれほどの暴力に対し抗議することを諦めるほどパワレス化されたという事実に、長期の社会的入院の惨たらしさや看護師による暴力の残酷さを思わずにはおれない証言でもある・・・

<以下、全文は、おりふれ通信400号(2021年4月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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「いのちのとりで裁判」 ~大阪地裁判決から生活保護を考える~

元生活保護利用者 和久井みちる

 

1.大阪地裁判決

「勝った!」

その時、大阪の弁護士さんからSNSに第一報が投稿されました。

2021年2月22日は大阪地裁で、生活保護の引き下げは違法だ・・ということを争う「いのちのとりで裁判」の判決が予定されていた日でした。私も判決が気になって、今か今かと報告が投稿されるのを待っていたのです。

「勝った!」とは、つまり「生活保護の引き下げは違法だ」という主張が認められたということです。

 

2.「いのちのとりで裁判」

「いのちのとりで裁判」は、2013年から実施された生活保護費の引き下げはおかしい、これは違憲だ・・という主張をして、全国で当事者の方1000人近くが原告となり、国を相手に争ってきた裁判です。残念ながら、私はこの裁判が始まったとき、すでに生活保護の利用者ではなくなってしまっていて、原告として一緒に参加することはできませんでした。その裁判は今、日本中で繰り広げられています。そして、今回は2020年6月25日の名古屋地裁判決に続く、二つ目の判決でした。名古屋判決が、偏見に満ちた無理解な判決だったので、大阪地裁の判決を聞いた人たちは飛び上がって喜びました。抜けるような青空の下、大阪地裁前で若手弁護士二人が「勝訴」「保護費引き下げの違憲性 認める」という旗を掲げた映像は、新聞やテレビのニュースでも大きく取り上げられました。

 

3.大阪地裁判決

 大阪地裁の判決文は100ページを超えるほどあり、法律的な文言は私には理解しきれないこところもいくつもあります。しかしそれでも、判決を読んでみて、裁判官が当事者の声をしっかりと聴いてくれていること、その上で引き下げの決め方のおかしさ、違憲性を指摘してくれていることはよくわかりました。さらに、「健康で文化的な最低限度の生活」は、ただ「健康な最低限度の生活」とは違う・・とも言っています。「死なない程度に生きていればいい」ということではなく、「文化的」なのだ、ということです。それはつまり「人間らしく」と言い換えてもいいと私は思います。この判決を考えるにあたって、裁判官自身が「健康で文化的な最低限度の生活」とは・・を自分の中に問い、考えた証なのではないでしょうか。そう考えると、「世論がそうだから」「与党がそう考えているから」とも受け取れるような名古屋判決は、本当に薄っぺらな、思慮のない判決だったと今さらながらため息が出てしまいます・・・

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630調査、さいたま市が情報開示を拒むのは何故???

埼玉県の精神医療を考える会 村田京子

 おりふれ202010月号で木村朋子さんが報告してくださったように、令和元年度630調査情報開示請求に対し、東京や大阪では全面開示、埼玉県でも隔離・身体拘束数以外は概ね開示であるにもかかわらず、さいたま市では、ほぼ全面黒塗りの開示決定でした。しかもマスキング(覆い隠す)情報がある場合は電子媒体での提供不可と紙での提供となったので、衝撃の「のり弁」調査票が届いたのでした。

佐藤光展氏が、神奈川精神医療人権センターHPに<さいたま市が忖度のり弁を提供!/海苔まみれにされた病院も理由わからず困惑広がる>という記事を、のり弁写真付きでアップhttps://kp-jinken.org/room/してくださっているので、ぜひご参照ください。また、東洋経済新聞辻麻梨子記者が、さいたま市に取材し、<精神病院「情報開示に消極的」な姿勢への大疑問>という記事https://toyokeizai.net/articles/-/398941の中で触れてくださっています。こちらもぜひご参照ください。

さいたま市へは、昨年122日に審査請求書を提出、この度(119日付)弁明書が届きました。

非開示理由は「個人を特定できる可能性」と「病院の正当な利益を害するおそれ」の2点ですが、弁明書の中にはこんな記述がありました。「他人には個人が識別できなくとも、本人が開示されたことを知れば精神的な苦痛を受けるおそれがある情報と判断する」「市がむやみに開示することで当該病院と患者の信頼関係に不測の事態を招きかねず、延いては病院の事業運営に影響を与えるものである」。

さいたま市が患者さんや病院に対して、また630調査について、本当にこう考えているのかはわかりません(本当にこう考えているとしたら、それはそれで驚きです)が、こうまで言って開示を拒むのは何故なのか? 本当の理由、判断の根拠を知りたいものです。

上記、辻記者の記事の中に、多摩あおば病院中島副院長の言として「630調査にあるような情報は、出すのが当たり前」「精神疾患を持つ人の受け皿をどう見つけていくかは、病院だけの責任ではない」「みんなでどう支援していくかは社会の問題です。別に隠す必要はないんです」とありました。私が一市民として情報公開を求めているのも、患者や家族の苦しみ、病院の大変さや問題を共有し、社会全体で少しでも改善したいと願うからです・・・

<以下、全文は、おりふれ通信398号(2021年2月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

 

 

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精神医療国家賠償請求訴訟の目指すもの

東谷幸政(精神医療国家賠償請求訴訟研究会代表)

精神医療国家賠償請求訴訟研究会は、2020930日に伊藤時男さんを原告として国への提訴を行った。この訴訟は、長年にわたって我が国の悲惨な精神科医療の状況を放置してきた我が国の精神医療行政に対して、その不作為責任を追及するものである。

精神医療国家賠償請求訴訟の必要性を最初に呼びかけたのは、1995年の東京都地域精神医療業務研究会の夏合宿においてであった。この呼びかけは、「勝てるはずがない」とか、「そのような大変なことをやれる力量が無い」という反応によって打ち消されてしまった。そのような意見には納得しなかったが、「精神の当事者が立ち上がって、国を追及するのなら、それを支援するのが本当で、東谷さんが旗を振るというのは、立ち位置としておかしい」という意見には、「では、しばらく様子を見ることにしよう。」と考えた。

しかし、時は流れて、ハンセン熊本地裁判決の勝利の後も、いっこうに立ち上がる当事者は現れなかった。このため、日本病院・地域精神医学会総会をはじめとして、あらゆる場所で精神国賠の必要性を訴えたが反応は乏しかった。主要な当事者運動の活動家に、一緒にやろうと呼びかけたが、「そんな大変な役割を当事者に押し付けるな」と怒られる始末だった。

2012年になって、もうこれ以上、待つことは出来ない。アメリカの当事者運動や消費者運動で弁護士がしばしばやるように、原告の公募方式で原告を集めて、制度を変えて行くことを決意した・・・

連絡先:精神国賠相談部会の相談電話番号 03-6260-9827 10時から20時まで 原告、証言、入会に関する相談です。

精神国賠訴訟研究会事務局FAX 042-496-3143 メールseishin.kokubai@gmail.com 研究会活動に対するお問い合わせです。

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国家賠償請求訴訟を提訴しました

弁護士 長谷川敬祐

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、令和2年9月30日、東京地方裁判所に対して、長期入院者に対する国の精神医療政策の違法性を問う国家賠償請求訴訟を提訴いたしました。この裁判は、精神医療国家賠償請求訴訟研究会が中心となって、原告の方を支援し、提訴に至ったものであり、私はその一旦を担っているに過ぎません。ですが、担当弁護士として裁判の内容等について説明させていただくとともに、一人の弁護士として思うことを書かせていただきます。

この裁判は、これまでの日本の精神医療政策の違法性を問う裁判です。被告は国であり、不当入院の原因を病院側に求める裁判ではありません。具体的には、日本の精神医療政策が、精神障害のある人は社会にとって危険性のある者であるという位置づけのもと、同意入院(医療保護入院)を規定し、現在まで変わらずにこれを運用していること、精神科病院について、長期収容を前提して民間病院に委ね、民間病院の設立を容易にしたり、医師や看護師数が一般科よりも少なくて構わないとする、精神科特例を設けたりしたこと、欧米諸国が入院医療から地域医療や地域福祉への移行を具体的に検討し、政策を転換してきたのに、日本は少なくとも原告の入院時期との関係では、医療政策、予算いずれも実効的な転換を行ってこなかったこと、強制入院であるにもかかわらず、精神衛生法の同意入院の実体的な要件は極めて曖昧であり、その審査手続も不十分であること、上記構造で形成された地域社会側の偏見があるにもかかわらず、強制入院の同意者として家族を位置付け、家族に本人の人権擁護とのジレンマを負わせ続けてきたこと等から、構造的に長期入院が生じる状態にしていたことを前提とし、それによって生じた長期入院により、我々が当たり前のように享受している地域で生きる権利を剥奪されたことは、憲法13条(幸福追求権)、憲法14条(平等権)、憲法22条1項(居住、移転及び職業選択の自由)、憲法25条(生存権)、憲法31条(適正手続きの保障)等に違反すると主張しています。そして、そのような憲法違反の状態が生じていることやその状態を是正すべき必要性があることは、昭和43年のクラーク勧告、その後の国際法律家委員会の勧告、国連の「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善のための原則」等から十分に認識できたにもかかわらず、国は長期入院者に対する実効性のある退院措置を講じることがなかったこと(不作為)が、国家賠償法上の違法であるとして、提訴いたしました・・・

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「引き出し屋」に精神科病院が連携!?

 引きこもり「支援」と称して、部屋から強引に連れ出し、施設に収容する「引き出し屋」の存在が問題となっている中、報道によると、その「支援」団体の一つである、あけぼのばし自立研修センターが暴行罪、逮捕監禁致傷罪で訴えられた。

  注目すべきは、同時に成仁病院(東京都足立区の精神科病院)の医師ら4人も逮捕監禁罪などで訴えられたことだ。同センターの施設に入所することを地下の部屋に監禁されながら9日間拒み続けた原告を脅し、同病院の閉鎖病棟に入院させたとのこと。原告は3日間に渡りおむつをされ身体拘束され50日間入院させられたという。

  弁護団は同施設の他の人に対する「見せしめ」の可能性も指摘している。訴えられた成仁病院はホームページで電気けいれん療法を喧伝する病院である。もしも強制入院を悪用しているとしたら大問題だ。

  強制入院は当事者にとっては逮捕監禁と変わるところはない。今回裁判になったら、単に「病気じゃないのに入院させられた」を争うものでなく、強制入院自体が問われるような裁判になることを望みたい。(kai)

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冊子「2013年データから見た埼玉の精神科病院」ができあがりました!

埼玉県の精神医療を考える会 市民ボランティア 村田京子

 埼玉県の精神医療を考える会では、「東京精神病院事情」に憧れて、手本としつつ、精神保健福祉資料(630データ)を有効に活かしたいと冊子づくりに取組み、今年10月に「2013年データから見た埼玉の精神科病院」(全65病院掲載)を発行しました(A4版150頁、頒価1,200円)。2003年、2008年データに続き、3冊目となります。
5年ごとの変化を見るために、前版と同じ基準で8項目(常勤医・常勤正看護師・常勤コメディカル一人当たりの在院者数、回転率、5年以上・3ヶ月未満の在院者率、家庭復帰の退院率、外来者)を点数化し、病院ごとにチャート図で表わしたり、各項目のランキング表を作るなど、630データの集約がメインですが、今回はユーザーに役立つ冊子にしたいという思いから、病院への訪問・見学も実施しました。また数は少ないですが入院経験者とご家族の心の声(アンケート)も掲載しています・・・
Saitamajijou

 以下、全文は、おりふれ通信356号(2016年12月号)でお読み下さい。
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『続・精神病で運転免許を返上しなくちゃいけないの?』

たにぐち万結


あの聴聞から、1年が経とうとしています。しかし、思い出したくもない煩雑な手続きと苦痛の日々は、過ぎ去ったわけではありません。
結果から先に書きますと、私は、免許停止になりました。6ヶ月の処分でした。

聴聞は、とても威圧的な警察官によるものでした。私は、後で述べるような手続きのため、合計2回の聴聞を受けました。
はじめの聴聞で訊かれたことはいくつかあり、書き出していると枚挙にいとまがないのですが、とても印象に残っている言葉がありました。
「あなたにとって免許は必要ですか?」
耳を疑いました。もちろん、いい意味での『印象的』ではありません。
私にとって免許がどうとか、もうそんなことは言っても通じまい。そう思いましたが、呆れる私にとっても、まさに免許は必要なのでした。
必要だと答えると、さらに質問をかぶせてきました。
「どうして必要なのですか?」
しばしの間、絶句してしまいました。どうして、今までスムーズに更新できていた免許が、突然更新できなくなり、しかも免許がどうして必要なのかとまで訊かれなくてはならないのだろうか。意味がわかりませんでした。前回から、重ねて言いますが、私は『無事故・無違反』なのです。
「これから働くことになれば、免許が必要になるかもしれません。実際、求人で見たら、普通免許が要る仕事はたくさんあります」
そう、確かに、今仕事らしい仕事には就けていないし、車も持っていませんが、いざ免許が必要になった時に、免許がないと困るのです。私は、いろんなチャンスを、失ってしまいます。驚いてしまった私でしたが、きちんと反論できたと思います。法の下の平等にもとる、瑕疵のある法律(注・欠陥のある法律のこと)だと主張し、弁護士にも助けられて、その場では、免許の停止を逃れることができました。
しかし、だからといって、聴聞が終わったわけではありません。私は、2度目の聴聞のための呼び出しを受けたのでした。

その後、警察に提出するための、診断書を書いてもらうため、弁護士と一緒に、主治医のところに行きました。そこでのことも、少し書きたいと思います。
弁護士と私が聴聞のことを話すと、主治医は、医者に運転ができるとか判断ができるわけがない、運転しているところを見たことがないので…と『逃げ』のようなことを言われてしまったのでした。そして、私が警察で聴聞を受けるのも、私が事故を起こしたから免許の停止になろうとしているのであって、自分に責任はない…と言われたのです。
事故もなにも、そんな思い込みで、今まで停止になるような診断書を書き続けていたのか。そう思うと、とても腹が立つのと同時に、悲しくなりました。
この主治医に、事故をしたと言った覚えはなく、勝手に決めつけられたのは、ロクに話もしない数分間の診察のためもあったかもしれません。とにかく、あるかなきかの信頼関係が、もろくも崩れ去っていくのをはっきりと感じました・・・

 以下、全文は、おりふれ通信347号(2016年2月号)でお読み下さい。
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薬とお金と合鍵で・・・ ~ある精神科クリニックの強制「通」院~

あおば作業所勤務 北島沙希

Aさんは約5年前、就職先を探している最中に、あるクリニックのデイナイトケアの利用を開始した。長年勤めた飲食業を退職したあとは、短期の仕事をしながら、仕事がないときには生活保護を受けながら生活していた。
あるときの勤め先の仕事内容は体力的にきつく、なんとか任期満了で退職してからは、次の仕事は慎重に決めようと考えていた。福祉事務所のケースワーカーには、「仕事をするなりしなければ保護費を打ち切る」と言われ、脅しのように感じていた。
その後、ケースワーカーに就職しないのであればクリニックに通ったらどうかと持ちかけられた。決めかねていると、階段の踊り場へ連れていかれ、突然胸ぐらをつかまれて「どういうつもりだ」と迫られた。恐怖のあまり何も考えられなくなった。しかたなく通うことを了承すると、「明日ここに来るように」と紙切れにかかれた住所を渡された。


“リワーク”のために・・・?
向かった場所は、家から電車で片道1時間以上かかるクリニックだった。翌日から週6日、朝から夜までデイナイトケアに来るように言われた。なぜこんな遠いクリニックを紹介されたのか疑問でしかたなかったが、“リワーク”のデイナイトケアであるため就労につながると思い、「6か月通って就職しよう」と通いはじめた。
通いはじめるとスポーツ、音楽鑑賞、クイズなどのプログラムに参加した。休憩時間は2時間と長く、ぼーっとするだけで時間をもてあました。特に就労に役立つと思えなかったので休んだところ、翌日家に看護師が二人来て、脇を挟まれるようにして強制的にクリニックへ連れていかれた。クリニックに着くと何をするわけでもなく、ほったらかしにされて、何のために連れてこられたのか全くわからなかった。
またある夜8時頃、コンビニに行こうと家を出ると、夜道で肩を叩かれた。振り向くとなぜかクリニックの看護師が二人立っていて、「明日は来てくださいね」と声をかけられた。一日でも休めば家まで看護師が来るのが怖く、休まずにクリニックへ通うようになった。

許されない、デイケアからの「卒業」
通いはじめてからやっと6か月がたち、主治医に「卒業したい」と伝えたところ、明確な理由なく「まだ」と言われた。延長された期間を過ぎたので、また「卒業したい」と伝えたところ、「まだ」と言われた。卒業したいというたびに期間は延長されつづけた。
約2年たったころ「卒業したい」と伝えると、「まだ薬を出していなかった」という理由でそれまではなかった向精神薬の投与が始まった。薬を飲みはじめると身体がこわばってきたため、それを主治医に伝えると「副作用じゃないと思うけど、副作用止め出しとくよ」と薬が増えた。
1年前、週二日作業所に通うことになったことを主治医に報告したが、「作業所終わったあとにデイケア来いよ」と言われたのを最後に主治医には会えていない。

『連れ出し』の恐怖
クリニックでは、デイナイトケアに出席していない人に対し、Aさんも経験した『連れ出し』が日常的に行われていた。朝8時頃と夕方6時頃に欠席者がいると、看護師たちが「『連れ出し』いってきます」と言いながら出掛けていった。
さらに2年前には、Aさんは自宅の合鍵を作らされた。合鍵はクリニックの職員が管理しているため、連れ出しの際には「Aさん、空けますよ」と家の中まで入られるようになった。不在時には勝手に家の中に入られて、玄関の棚の上に薬が置かれていた。トイレに入っていると突然窓が開けられ「来ましたよ」と声をかけられた。いつ勝手に家の中に入られるか怖くてたまらなかったので、毎日通院をつづけた。早いときには朝7時に連れ出しが行われ、一時期は恐怖のあまり眠れなくなった。

生活保護費がすべてクリニックに
 3年前ごろ、生活保護費が支給される前日に交通費がなかったのでクリニックを休んだ。事情を知った看護師から「金銭管理ができないのであれば生活費を管理する」と言われた。看護師が福祉事務所へ話し合いをもちかけ、それから生活保護の全額が福祉事務所からクリニックへ現金書留で送られるようになった。約30人のメンバーのうちAさん含めて10人ほどが、同じようにクリニックに生活費を管理されていた。一日いくらと定められた生活費を通院の際にもらうことになっているため、通院しなければ生活費がない。それに加え、預金通帳もクリニックのほうで預かるということになり、自分の生活費が人質にとられているような状態だった。通帳を渡したとき、目の前で看護師たちが自分の通帳を眺めながら「ふ~ん」と笑っていた、それがとても辛かった。

福祉事務所は・・・
Aさんはデイナイトケアを卒業したいと福祉事務所のケースワーカーへも相談していた。この5年間で担当は5回変わったが、そのたびに「今のところはここのクリニックに通うしかないよ」と同じような言葉が返ってきた。どの担当にも訴えを聞いてもらえることはなかった。

強制通院からの「退」院
片道1時間の通院時間をかけ、朝から夜までのデイナイトケアを週6日間、5年以上通い続け、もうすぐ60歳にもなるAさんには負担が大きく辛い。
通院先の選択は基本的に本人の希望によるものであることから、転院へ向けて区内で通いやすいところを探し、新しい受診先と初診の日を決めた。その旨を福祉事務所に伝えると、担当からは「本人がクリニックの主治医と話してもらわないと転院の手続きはできない」の一点張りであった。
クリニックへ電話をし、転院をしたい旨を申し入れたが、「福祉事務所と決めた通院なので福祉事務所の了解が必要だ」「継続が望ましい」ということを主張するのみで、本人の希望を聞き入れようとする姿勢はなかった。また、合鍵や現金、預金通帳を返却してほしいと伝えても、「福祉事務所と決めたこと」と応じなかった。
その後、Aさんと作業所のスタッフ2名と区議会議員にも同行をお願いし、福祉事務所を訪ねた。福祉事務所では担当職員含め3名と2時間余りの話し合いを行い、転院の手続きが出来ること、合鍵と現金、通帳の返却が福祉事務所を通して行われることをどうにか確認することができた。
後日、合鍵と現金、通帳がAさんの手元へ返ってきたが、現金に関しては、封筒に現金が入っただけのものが返ってきた。この5年間、Aさんのお金がどう動いてきたのか、クリニックがどのように金銭管理をしてきたのか全くわからないような状態であった。
クリニックへ「5年間の収支がわかるものを送ってほしい」と問い合わせたが、「院内の資料なので見せられない」と内容を開示できないという返答があった。お金を送っていた福祉事務所に問い合わせてもらえるようお願いしても、「開示させる権限はない」と返答があった。請求を重ねているが、現在も返ってきていない。

自分の生活を取り戻す
Aさんはこの5年を振り返って、「クリニックというところは、心を癒したりするためにあるところだと思っていたが、全く違っていた。薬とお金と合鍵でしばりつけられて、恐怖心だけで通わされていた」「心が空虚になり、心身ともに弱っていくような場所だった」と語っていた。Aさんと同じ思いをしている人が、まだクリニックのなかに沢山いるというのが心苦しい。
現在、Aさんは新しい主治医のもとへ月一回通院しており、作業所には2週間に一回のペースで通っている。新しい主治医との診察は本人いわく「別世界」だそうで、ちゃんと自分の話を聞いてくれるので安心して話ができるらしい。現在は向精神薬を処方されていない。そして金銭管理はAさん自身で問題なく行っている。しかし、合鍵はないとわかっていても、家にいるといまだに少し恐怖感があるそうだ。Aさんはいま医療への信頼と、自分の生活を取り戻している途中だ。

編集部より
精神疾患の疑いのある生活保護利用者に対し、東京都内の医療グループが自治体からの委託で福祉事務所に「相談員」として職員を派遣し、グループの精神科クリニックで通院治療やデイケアなどの「自立支援医療」を受けるよう誘導した疑いがあると、フジテレビにて報道されました。この問題に関する情報提供、ご連絡は下記にお願いします。
<医療扶助・人権ネットワーク事務局>
東京都新宿区四谷3丁目2番2号TRビル7階マザーシップ法律事務所内
電話 03−5367−5142(担当 弁護士 内田 明)


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障害年金 -精神の障害に係る等級判定ガイドライン(案)とパブリックコメント-

福冨一郎


 精神障害の障害年金認定において地域差があるので是正する目的で、等級判定ガイドライン案が厚労省から出されました。しかし、その内容は主治医が書く診断書に「日常生活能力の判定」という7項目の4段階評価と「日常生活能力の程度」という5段階評価で等級の目安をつくり、それによって事務官がだいたいの振り分けをして、認定医が総合評価をして認定するというものです。たとえば、生活能力の程度が3で、生活能力の判定が平均すると2.5から3未満くらいの場合、今まではほとんどが2級の判定でした。しかし、ガイドラインによると3級の可能性が高いです。このガイドラインがそのまま決まれば、認定の公正化とは逆方向に向かう可能性があります。
 精神福祉が医療モデルから社会モデルへと移行しつつある中、本人に会ったこともない認定医が診断書の内容だけで判定するという、究極の医療モデルになっています。社会モデルでの判定をするなら、本人にかかわる支援者や家族、主治医、雇用主など、多くの方々の意見をとりまとめて、いろいろな分野から選ばれた認定委員が判断すべきだと思います。そもそも、このガイドラインを話し合っている委員9名のうち8名が精神科医で、当事者は誰もいないそうです。議論の内容の偏りが懸念されます。以下、ガイドラインで特に気になった項目について書き出して、意見を述べます。

 1.精神障害の項目の気分(感情)障害について書かれた部分。「適切な投薬治療などを行っても症状が改善せずに、入院を要する水準の状態が長期間持続したり、そのような状態を頻繁に繰り返している場合は、2級以上の可能性を検討する」とあります。これって今までだと1級と判定される状況だったと思います。ガイドライン作成委員の中に気分障害に理解のない精神科医がいるような気がします。入院を要する水準ではなくても、日常生活に支援を要する2級に該当する場合はいっぱいあります。入院が2級の判定条件だとも捉えられかねない表現になっています。そうでないことを明確にすべきです。

 2.共通項目の家族の日常生活の援助や福祉サービスの有無を考慮するという部分。「独居であっても、日常的に家族の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合は、それらの支援の状況を踏まえて、2級の可能性を検討する」とあります。いやいや、独居で家族の支援がない人の方が、年金が必要ですよね。福祉サービスを受けられてない人にも、様々な理由があると思います。もしかしたら、年金がもらえたら、福祉サービスを受けたいと考えている人もいるんではないかと思われます。

 3.共通項目の相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮するという部分。「就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)による就労については、2級以上の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする」「一般企業(障害者雇用枠を含む)で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスにおける支援と同程度の援助を受けている場合は、2級の可能性を検討する」とあります。就労していることをもって、日常生活能力があると捉えられることがありそうです。そんなことはないです。身体障害のような外部障害の場合はわかりやすいかと思いますが、精神障害に関しても配慮があれば就労できる状態がそのまま日常生活は問題ないとは言えないと思います。実際に、生活はままならないのに外面だけは何とか保っている方もいっぱいいます。また、就労系障害福祉サービスと一般企業の記述を分ける必要があるのでしょうか。一般企業で就労系障害福祉サービスと同等の援助は難しいのが現状です。たまたま、就労において一般企業に縁があった方もいらっしゃると思います。こと就労に関しては、それを理由に障害年金の等級を下げたりすることのないようにお願いしたいです。

障害基礎年金の2級で月におおよそ65000円くらいしかもらえません。これでは、就労するか、生活保護か、しかありません。そもそも年金とは何か? そのあたりから考え直してもらいたいところです。厚労省では、障害年金のガイドラインについてのパブリックコメントを募集しています。どれくらい聞き届けられるかはわかりませんが、何も言わないよりは何か意見を書き込んでみた方がいいと思います。9月10日、17時までです。

精神の障害に係る等級判定ガイドライン(案)とパブリックコメント 9月10日まで
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495150111&Mode=0


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