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東京精神医療人権センター総会・勉強会(伊藤さん国賠訴訟)報告

東京精神医療人権センター 中村美鈴

 

毎年4月に開催している東京精神医療人権センター(以下「人権センター」)の総会ですが、おりふれ通信でご案内していたとおり今年は4/20(日)に開催しました。場所は昨年と同じ新宿の就労支援センター「街」の会議室をお借りしました。また、総会終了後は同会場で勉強会も開催しました。今年の勉強会は「精神国賠訴訟の経過報告」というタイトルで、原告代理人でもある人権センター共同代表の長谷川弁護士が講師を務め、伊藤さん裁判の経過の解説をされました。

今年の総会でも勉強会でも、参加された皆さんが積極的に発言され、活発な意見交換がされていたのが印象的でした。私は受付を手伝いながらだったので聞き逃したところもありますが、当日の様子を報告させていただこうと思います。

 

【人権センターの総会】

参加者は、人権センターの運営委員メンバーの他に、当事者、支援者、大学教授、医師などで15人ほどでした。

2024年度の活動報告について

<相談活動>

電話件数:延べ374件、メール等相談:56件、病院等での面会:31件(対象:10人)

<その他の活動>

精神科病院入院者訪問事業の東京都事務局との事業運営等に関する意見交換、千葉精神医療人権センター立ち上げ準備会との意見交流、東京三弁護士会の退院請求プロジェクトチームとの意見交換、清瀬・東久留米社会福祉士会での講演会、みちのく記念病院問題についてのNHKからの取材対応、人権センターの新リーフレット作成および配布、滝山病院問題への取組み活動(「滝山病院にアクセスする会」の構成団体となる)等

 

1年間を振り返ると、相談・訪問以外でも様々な活動を行ってきたなと実感します。上記活動報告と決算報告の後、訪問面会のざっくりとしたケース紹介(個人や病院が特定できない範囲で)を行いました。参加者から「訪問した病院のレポートはあるのか?」という質問が出ましたが、現行では病院別の記録はとっていないため、今後の検討課題となりました。また、本人が「退院したい、したくない」で揺れているケースについて、「そういう当事者が多い。『退院したくない』の奥にどんな思いがあるか、本人の話す内容から探れないか」という意見が出ました。このケースについては本人の意向確認が難しい方のため時間がかかりそうですが、本人の発する言葉の奥にどんな思いがあるのか、という視点を自分も持てるようになりたいなと個人的に思いました。

 

2025年度の活動方針について

2024年度と同様、基本の相談活動(電話相談と訪問面会)を行いつつ、その他の活動も必要に応じて行っていくという内容でしたが、参加者の方々から以下のご意見をいただきました。

・病院訪問を再開してもよいのでは(全部でなくとも一部でもいいから)。受け入れる病院もあるはず。例えば今年度は何件訪問すると目標を立てるとか、議論していってほしい。

・人権センターの存在を入院患者にどう周知していくのか、もう少し考えた方がよい。例えば家族会にアプローチするとか。会員を増やすために活動をもう少し広げていってほしい。せめて病院関係者には周知されるようになってほしい。

・大阪精神医療人権センターのノウハウを導入した方がよいのでは。

 

運営委員会からは、急に大きなことは体制的にできないので、できる範囲の中で検討していくとお答えし、2025年度の活動方針・予算・体制について承認いただきました。また、当事者の会費が安くなると嬉しいというご意見もいただきましたが、当事者の方は年会費3,000円のうち、ご自分の出せる範囲でよいことになっています。「知らなかった!」という方もいらっしゃり、改めて運営委員会よりご案内し・・・・・・

 

<全文は、おりふれ通信443号(2025年5/6月号)でお読み下さい。ご購読(年間3,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

 

 

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4.23精神国賠傍聴記

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本人の意志を顧みずまわりが勝手に決めていく
そういう社会はいつ変わるのか?        ピープルファースト奈良支援者 渡辺哲久
4月23日、伊藤時男さんの長期入院国賠訴訟の控訴審にピープルファースト奈良3名で参加しました。裁判長は事実調べの申請を却下、即日結審しました。地裁の不当判決を見直さないという宣言なので、敗訴が確実です。でも伊藤さんは「裁判には負けても、少しでも何かを残せれば」とおっしゃっていました。伊藤さんが入院中に、退院したいと言って退けられ自殺したなかまのこと、鉄格子の部屋に閉じ込められたけど隙を突いて飛び出し、池に飛び込んで溺死したなかまのことを話されていました。
「法に基づいてやったから合法」というのは、優生保護法裁判で国が主張し続けた主張です。まだ言うか。「本人は退院の意志を明確に伝えていない」というのは、優生では「除斥期間の20年の間に訴えを起こさなかったから無効」と言われてきました。「差別があり支配されていたから訴えられなかった」と優生の最高裁判決は言っています。
報告集会では、渡辺から「優生保護法の裁判では、地裁判決で当初7件敗訴が続き、2022年に大阪と東京の高裁で逆転勝訴して以降の地裁判決は6件すべてで勝訴。最高裁が差別を認め完全勝利しました。国が除斥期間を主張するのは職権濫用とまで言いました」と優生手術裁判の経験を報告。参加したピープルファースト奈良の阪本里恵さんは「私は入所施設に入ったことがあるが、何もかもまわりが決め、私の意志は関係なかった。自分の意志では出られなかった」と発言。同じく西本春夫さんは「生まれてすぐ乳児院に入れられてから32年施設にいました。そこで生きていくのに精一杯でした。施設を出て仕事がうまくいかなくて精神科にも入院しました。7月10日の判決も来ます」と発言しました。
精神病院と入所施設
入所施設をなくせ!がピープルファーストの始まりであり、目標です。今も13万人のなかまが入所施設に閉じ込められています。
ピープルファーストは、この2月に厚生労働省と十数年ぶりの交渉をして、「施設をなくせ」と求めましたが、国は「ピープルファーストが施設をなくせと主張していることは知っているが、施設に入所している人の親の人たち、施設を運営している人たちは施設をなくすなと主張されます。国が言えるのは地域移行を進めることだけです」と相も変わらずの答えです。
この壁を突き破れません。
みんなで力を出し合わないと進めません。それでピープルファースト奈良のなかまで話し合って、「精神病院のことを学ぼう」「伊藤さんの国賠訴訟を応援しよう」と今回初めて参加しました。
2022年9月、国連の障害者権利委員会が「精神病院と入所施設への隔離はやめろ」と勧告したのに政府は無視しています。
みんなで力を出し合って、あきらめないで進みましょう・・・

 

<全文は、おりふれ通信443号(2025年5/6月号)でお読み下さい。ご購読(年間3,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

 

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医療DXと精神医療の交差点:バラ色の未来か、それとも新たな分断か

精神疾患を抱えたシステムエンジニアの視点から 黒岩 堅

  1. 精神医療における情報共有のリスクと葛藤
  • プライバシーの深さと共有の危うさ

精神科の診療では、患者が過去の体験、対人関係、内心の葛藤を語り、それがカルテに記録されます。これらは他科の「客観的データ」と異なり、極めて主観的で個人の尊厳に深く関わる情報です。この情報が医療機関間で共有されることで、患者の「語る自由」や「隠す自由」が脅かされかねません。

  • 差別や偏見の温床

現場では、精神疾患が他科で軽視されたり、「精神科の薬のせい」と決めつけられたりする事例が後を絶ちません。情報共有が進むことで、むしろ不当なレッテル貼りや治療差別が助長される危険性があります。

  • 「便宜的病名」や誤解のリスク

保険制度上の都合でつけられたレセプト病名が、電子カルテで他院にそのまま伝わってしまうこともあります。こうした“制度と現実のズレ”は、患者への誤解や不利益な対応につながりかねません。

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  1. 医療機関ごとの治療方針の違いが生む構造的なズレ
  • 診断名や処方方針の多様性

精神科医療は、大学や病院によって診断基準や治療方針に幅があります。同じ症状でも「統合失調症」と診断されるか「適応障害」とされるかで、患者の社会的な受け止められ方は大きく変わります。

  • カルテ記録の文脈性

記録スタイルも大きく異なります。ある医師は対話を丁寧に記述し、別の医師は評価スケール中心で記載します。その差が共有された際に誤読や偏った判断を招く可能性があります。

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  1. システム設計上の限界と改善の方向性
  • データは「正しい」か?「意味が通じる」か?

電子カルテ共有の前提は「共有される情報が正しく解釈されること」ですが、現実には医療機関ごとの記録方針・診断傾向の違いにより、“情報の意味”が異なることをシステムは考慮していません。

  • アクセス制御と選択の自由の欠如

現在の設計では、精神科の情報が他科と同様に共有される設計が基本です。患者が「一部情報を見せたくない」と希望しても、その実装は不十分であり、“全てを見せるか、何も見せないか”という二択しか与えられていないケースが多いです。

  • UI/UXの配慮不足

患者が情報共有を「拒否する」選択をするには、直感的で分かりやすいインターフェースと、選択によって不利益が生じないという明確な保証が必要です。現状は、説明不足・誤解を招く設問・心理的圧力などが拒否の自由を奪っています。

結論:医療DXは“誰のため”かを再確認すべき

医療DXの本質は、患者中心の医療を実現することにあるはずです。しかし、現在の制度や設計は、管理効率や行政目的を優先し、当事者の尊厳や文脈を置き去りにしている側面が否めません。

特に精神医療では、診療内容が極めて個人的かつ機微なものであるため、「情報共有=善」と単純に語ることはできません。多様な医療文化や個人の意志を尊重する設計思想、そして分岐可能な選択肢と説明責任を持った運用が必要です。一当事者としては思います。

 

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