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日精協誌2023年4月号巻頭言の問題点

香澄 海

 

日精協会長の山崎學氏が書いた「滝山病院事件のマスコミ報道を受けて」とその問題点を指摘する。この文章は、1. 事件の概要、2. NHK報道への疑問、3. 東精協による調査の概要、4. 滝山病院の擁護、5. 入院者訪問支援事業への注文、6. 3点の主張という構成で書かれている。

 この中で、5. 滝山病院の擁護について、まず取り上げたい。山崎氏は滝山病院の看護師の兼業が多いこと、つまり非常勤職員の多さについて、「職員は昭和45年の開設以来、先代院長の経営方針が継承され、非常勤割合が90 %140名いる看護職員中で常勤職員は12名と、一般的には考えられない職員構成で運営が行われていた。非常勤職員については主たる勤務先と兼業勤務している職員が多く、兼業問題について議論の余地はあるが、一般科に比べて低医療費の結果として低賃金で働いている精神科医療従事者の現状を考えると、むげに兼業を非難できないような気がする」としている。

 しかし、山崎氏が同じ文章内で自ら認めているように、滝山病院は「人工呼吸器管理、透析を扱う病院」であることを考えれば、一般精神科よりも手厚い看護が必要なのは火を見るより明らかである。「非難できないような気がする」のは、乏しい看護職員の足りないケアのために酷い褥瘡ができてしまうなどの虐待に等しい行為を無視し続けた病院側の問題を考えていないからだ。つまり患者を【大切にされるべき尊厳ある人間】として意識していないのである。

 次に、山崎氏の発言「滝山病院は腎不全など重度の身体合併症を抱えた患者が多く、死亡退院という形でしか退院できない患者も多いと思われた。例えば、特別養護老人ホームは終の住み処として、亡くなって退所する施設であるが、滝山病院はそのような最後の最後の医療を提供している病院であり、死亡退院を強調することには違和感を覚えずにはいられなかった」について。

 精神科病院は終の住み処ではない。また、身体合併症があるから死亡退院が多いという主張について反論する。次頁の表をご覧いただきたい・・・

<以下、全文は、おりふれ通信423号(2023年6・7月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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読者からの手紙1  おりふれの会みなさま 八王子の滝山病院に対する想いです。

高知市 嶋村良三

 

 4月26日朝日新聞の31面に3段抜きで「滝山病院、都が改善命令」との見出しがありました。前にNHK「ルポ・死亡退院」を視聴していて、そのあまりのむごさに仰天して、急ぎファックスをDPI日本会議宛に送信していました。即ち「都に対して抜き打ちの立ち入り検査実施を申請してほしい」と。東京都は昨年情報提供を受けても、効果ある対応がされずじまいだった由。都庁自体の検査指導体制にメスを淹れねば改善は無理なのです。そこで改善の一歩は、抜き打ち立ち入り検査の制度化です。加えて監視録画録音を義務付けて、提出させることです。さらに民間の第三者が精神科病院を抜き打ち立ち入り検査できるよう、都や県の行政に制度化させることで、すでに大阪府「療養環境サポーター制度」で実施済み。これを参考により効果ある制度を東京都に求めてもらいたいのです。(中略)

NHKの「ルポ・死亡退院」で意外だった点は、周辺自治体の生活保護福祉担当者が滝山病院を「必要悪」として長年利用してきたとのこと。将来も利用せざるを得ないような現下日本のセーフティネット。この現実におぞましさを感じます。

私自身、すでに75才。障害1級の子を持ち、知的にも遅れのある子どもなので切実です。子どもが生活保護受給者になることもあり得るので、親亡き後が非常に心配。日本は障害者権利条約を受け入れているはず。同条約16条、24条、27条と日本国憲法の11条と25条。憲法という最高法規の魂が生かされずにいる国を、少しづつ改善させたい。その一歩にするためにもこの滝山病院事件を生かしたい。よろしくお願いします。

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読者からの手紙2 滝山にいる患者さんのことを思い、書いてみました。

根間あさ子

 

 「ルポ死亡退院」というテレビ番組を見て以来思い悩んでいます。
 あの放送は深夜の放送だったので録画して見たのですが、最初は、とても辛くてまともに見ることもできませんでした。でも目を背けてはいけないと、気を取り直してくり返し視聴しました。
 病名を持ち、入院経験がある者としてはあのような病院が存在することは恐怖でしかないです。決してよそ事ではないことなのです。私だって運が悪ければあそこにいたのかもしれないのです。
 暴力を振るっている人と同じ空間でその暴力を止めようともせずに平然と仕事をしている看護者がいるのを見れば、滝山病院の問題は逮捕された人だけの問題ではないことがわかります。職員のモラルが失われているのです。
 考えてみてほしいのです、もしそこに患者の立場であなたがいたらと。暴言を吐き暴力を振るう人間がいるのに誰も止めようとしないのです。酷い目に合わされても誰も助けてくれない所なのです。あなた自身は殴られていなくても、とても怖いし、絶望的な気持ちになるでしょう。
 私が、半世紀も前ですが、入院していた病院で、看護者が患者さんをレイプするという事件が起きました。しかし、警察に通報されることもなく事件にもならずに有耶無耶にされました。その看護者は首にもならず、もちろん逮捕もされず、別の病棟に配置換えになっただけでした。これは、この看護者だけの暴力行為でしたが、それでも患者にとっては精神病院が立場の違いで酷い扱いをされる場所なのだということを痛切に知らされた出来事でした。
 つい最近、東京都が、21年6月の調査で滝山病院の死亡退院率が64.3%だったと発表しました。この病院に入ったが最後、生きて外に出ることは出来ないということなのでしょう。そもそも精神科病院の患者は、入院が長期になってくると、だんだん諦めの気持ちが出てきます。もう退院できないのかもしれないと。ましてこのような、ただ死ぬのを待つだけの病院、まともなケアも受けられずに、何かというと縛られて、酷い褥瘡ができても手当してもらえない、そんなところにいる患者さんはどんな思いで日々を過ごしておられるのでしょうか。そう思うと居ても立ってもいられない焦燥感に襲われます。
 あの放送があってから数ヶ月がたちました。滝山病院から患者さんたちを救い出したい。何とかまともな医療を受けられる所に転院なり退院なりさせてあげたい。そう願わずにはいられません。
 私たちに出来ることはないのでしょうか?  

 

 

 

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