パリの空の下、アダマン号はいく 理想の精神科デイケアを求めて
コミュニティサポート研究所 齋藤明子
セーヌ川に浮かぶ木造船はデイケアセンター
映画の冒頭、歯が数本無いがっちりした男性がダミ声で「周囲の人に自分が思っていることを言ってもらっていると、殺されるぞ」と歌う。歌詞の内容は障害者にとって重要なエンパワメント(自分に自信を持つこと。障害者は助けてもらうことが多いため自分から発言するとか、自分から働きかけるという自尊感情を持ちにくい)だが、歌い手も歌詞も怖いので早く終わらないかな、と思ってしまった。
パリのセーヌ川には『アダマン号』という2階建の木でできた精神科デイケアセンター船が浮かんでいて「その中では患者も医師も垣根なく、語らい、歌い、踊る」という新聞広告を見たとたんに「行くっ」と決めて、家に一番近い『グランドシネマサンシャイン』という14階建ての映画館ビルに駆けつけた。
実は私は日本の精神科のデイケアの実情をよく知らない。クリニックとか病院を訪問したときに「見て行って」と言われてのぞいた程度である。でも『アダマン号』の映画から日本と違うかも、と感じられたのは「リラックス」と「楽しさ」だった。
みんなでする計算は、毎日合わない
『アダマン号』では1日1度みんなで集まってお金の計算をする。日本は現在「円」という単位だけだが、ユーロのフランスではユーロとその下のセント?という単位がある。何にいくら払った、だれがいくら納めた、と何人かの担当者が声に出して報告し、出席者が計算する。そしていつも計算が合わない。「大変だ!」と思うだろうと日本人は思う。でもだれも「えーっ」という顔をしていない。映画自体は「計算が合いませんでした」と担当者が報告するシーンで終わる。どう解決するのか映画的にも謎のまま、である。だれもあせっていない。
「金銭ごとき問題でオタオタするな!」ということなのかもしれないが、それより緊張感に追われて過ごすのでなく、デイケア全体に「楽しくやろうよ!」という無言の雰囲気が支配している気がする…
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