なぜ精神障害者は議会の傍聴が出来ないのか(後編)
心の旅の会 市民精神医療研究所 寺澤 暢紘
6 資格・利用制限条項見直し、撤廃に向けた取り組みの経過
精神障害者の欠格・制限条項撤廃に向けた取り組みは、1974年三重県で「精神薄弱者」を理由にした運転免許の取り消し処分をめぐって、欠格条項の撤廃に向けた活動が取り組まれ、裁判で免許取り消し処分が撤回された経過があります。
その後、1981年からの「完全参加と平等」を掲げる国際障害者年を契機に発足した、障害者施策推進本部(総理府)が関係各省庁で所管する63制度の障害を理由とした欠格、制限等について再検討する方針を明らかにした「障害者に係る欠格条項の見直しについて(障害者施策推進本部)」(1999(平成11)年8月9日付)決定し、見直しが行われています。
1972年には東京で「精神病院問題を考える市民運動の会」が、公衆浴場における精神病者の「入場制限」の掲示調査などを行い、その後世田谷区営プールの「入場制限」撤廃の取り組みが行われています。
そして、1981年の国際障害者年を受け、1986年に岡山精神衛生国際障害者年推進委員会が、「これでよいのか『欠格条項』を見て」との小冊子を発行し、欠格条項の問題が社会的に取り上げられる契機となっています。
こうした動きの中、厚生省から都道府県知事あてに「精神障害者に係わる資格制限・利用制限等について」(健医発第881号 昭和62年7月21日付け)が通知され、各都道府県市町村での条例・規則改正の動きにつながっています。
その後、1985年11月に大阪で「大阪精神医療人権センター」が設立され、1988年当時大阪はじめ岡山、京都、滋賀、東京等で制限条例撤廃の活動が取り組まれました。静岡でも1990年6月に三島、沼津を中心とした障害者団体により「議会傍聴制限撤廃の申し入れ」が行われました。(参考:「精神障害者の欠格条項」全家連欠格条項に関する研究会編 1995年発行)
また、「障害者の欠格条項をなくす会」では2009年に公平委員会の傍聴規則改正に向け、自治大臣官房文書課監修の「市町村例規準則集」に掲載されている、「公平委員会傍聴人取締規則」が差別規定であるとして、当時の自治大臣あてに「公平委員会傍聴人取締規則における欠格条項の撤廃を求める要望書」を提出しています。
7 公衆浴場法では伝染病患者と同じように精神病者を排除
1972年の東京における公衆浴場における精神病者の入場制限問題は、1920年の「浴場及浴場營業取締規則」が1942年に改正され、「伝染病患者」と「精神病者」が公衆浴場から排除されており、伝染病も精神病も人に感染するからという理解できない規定になっていますが、次元の違うものだと思います。現行の制限条項でも公衆浴場法と同じような文脈で、「伝染病の疾患又は精神に異常があると認められたとき」、「感染性の病気にかかり、又は精神に障害があると認められる者」との表記が存在しています。(参考:「公衆浴場の法的規制における欠格条項の変遷」川端美紀著)・・・
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