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1型糖尿病障害年金裁判(東京)ご報告

元原告 西田えみ子

 

いつも精神障害に関わることを興味深く読ませていただいている、おりふれ通信より執筆のお話をいただいてびっくりしつつ、私が提訴した裁判では精神障害をもつ友人、知人からあたたかい応援をいただきましたので、この場をお借りして御礼を伝えたく、さらには外見でわかりにくい障害仲間として1型糖尿病のことを知っていただけたらと思いまして、以下、つたない文章で恐縮ですがご報告します。

 

2022年726日東京地裁で「国は原告へ障害基礎年金2級を支払え」という判決が言い渡されて、国は控訴しないで89日に判決が確定しました。やったよー!と大声でご報告できない、うれしくも不安の残る、複雑な判決でした。

人は、呼吸ができないとすぐ死ぬ、心臓が止まるとすぐ死ぬ、ということはよく知られていると思いますが、同じようにインスリンがないとすぐ死ぬ、ということはご存じでしょうか。私は5歳で1型糖尿病を発症して、両親は医師から「一生インスリンを打たないといけない、打たないと2~3日で死ぬ」と告げられました。ある給料日の1週間前、お金がなくて病院へ行けなかった時は「医師は大げさに言ったのだろう。1週間くらい何とかなるだろう。」と考えてインスリン注射を節約しましたが、医師の予告どおり、2日目にはすごく苦しみながら集中治療室へ運ばれて危篤になりました。

呼吸や心臓にはおよびませんがけっこうすぐで、1型糖尿病は緊急性が高い上、生涯インスリン製剤を打つ必要があります。残念ながら福祉制度の対象ではなく、健常者と同じ3割負担で、月1万円~3万円の自己負担が一生かかります(インスリン注射かインスリンポンプか、治療方法の違いで金額が変わります)。個人差はありますが不安定な血糖値にともなう精神症状、知的や身体能力の低下をかかえながら暮らしています。インスリンポンプは高価ですが私には命綱で、社会へ効果的に参加するための車いすのような機器でもあるので「障害者に認定してください」「難病として認定してください」と社会保障を求めてきまして、認められないまま現在に至ります。

そのような中、成人後の福祉制度で唯一「糖尿病」の項目があるのが障害年金です。ただし、その認定基準はずっとHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/血糖値の平均値)が、高ければ状態が悪く、低ければ状態が良いと評価されていました。私は血糖値が乱高下しても平均値は低くて慢性合併症はあまりないので正当に評価されないだろうと、申請をあきらめていましたが2016年に糖尿病の認定基準が改正されました。いよいよ正当な審査を受けられると期待して20172月に申請しましたが、3月末に「該当しません」とだけ、理由の説明もなく却下されました。審査請求もよくわからない理由で却下されました。

お金がないので提訴は無理だとあきらめかけましたが、大阪で集団訴訟をしている方々のつながりから東京の弁護士につながり、法律扶助を受けて6名もの弁護士とともに「認定基準が不当だ!」、「私の障害は2級以上だ!」、「行政手続きの違法だ!」という3つの争点で提訴することができました。

裁判では障害が2級に該当するかに争点を絞られました。私もそうですが1型糖尿病患者の半数は14歳以下で発症するそうで、その場合は障害基礎年金しかなくて、2級でなければ年金を受給できません。国は、1型糖尿病は深刻な病気だけれど健常者と同じように生きられると主張して、私のことも血糖コントロールは大変そうだけど普通に生きているし、慢性合併症が大したことがないから2級ではなく3級ということでした。基準の改正で重視されなくなったはずのHbA1cも重視しているとのことで、まったくかみ合いませんでした・・・

<以下、全文は、おりふれ通信415号(2022年9・10月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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