神出病院事件問題の解決のために 第二回
吉田明彦(精神医療サバイバーズフロント関西、精神障害/双極性障害当事者)
- 前回第一回、筆者は兵庫県精神医療人権センターの運営メンバーとして書いたが、今年2月以降は同センターの運営委員から活動会員となり、現在は当事者グループ「精神医療サバイバーズフロント関西」主宰として活動を継続している。
1990年代後半、筆者は国際協力NGOの駐在員としてフィリピンにいた。ミンダナオ島山間部などでの研修ののち、首都圏マニラの都市貧困地域での母子保健プログラムほかのチームに参加していた。
フィリピンは、スペインに300年、途中日本の4年間を挟んでアメリカ合衆国によって50年のあいだ過酷な植民地支配を受けた国である。少し経ち日本からの私にもある程度の本音を話してもらえるようになった頃以降、現地の人たちに繰り返した質問のひとつに「最もひどい植民地支配をした国はどこですか?」というものがある。答えはいつも同じだった。「日本です。悪いこともしたが一方病院や学校や鉄道・道路や上下水道を造ったスペイン、アメリカと違い、日本は何ひとつ作らず残さず、すべてを奪い去り殺戮と破壊の限りを尽くした。兵士らは女性たちを性奴隷(軍慰安婦)にし連れまわった」。
今年5月2日、個人・法人名こそ伏せられているが他は原文そのままの「神出病院における虐待事件等に関する調査報告書【公表版】」が発表された(神出病院ウェブサイト同日記事ページから無料閲覧ダウンロード可)。まとめたのは「神出病院における虐待事件等に関する第三者委員会」(委員長・藤原正廣弁護士ら委員は全員神戸市が推薦)。神戸市の改善命令(2020年8月17日発出)にあった検証のための第三者委員会設置を、経営法人・医療法人財団 兵庫錦秀会は拒み身内で固めた「危機管理委員会」設置をもって代えようとしたが、世論や市民運動などの批判に耐えるものでは当然なく、同法人は第三者委員会設置を余儀なくさせられ昨年9月24日にようやく発足したものである。
281ページにわたるこの報告書は、刑事事件で裁かれた6人の看護職員だけでなく、彼らに決定的な影響を与えた先輩看護師長を含む他の職員たちによる凄惨な暴力の数々、医師らの指示・黙認の下行なわれてきた滅茶苦茶で乱暴な隔離拘束などの行動制限、冬期に湯が出ないシャワーが修繕されずそのままの状態であることに象徴される医療法の定めをまったく満たさない劣悪な施設環境と人員配置、医療行為の放棄・停止とも呼ぶべき医療機関としての機能の麻痺状態などなどを描き出す。
その背景として、兵庫錦秀会の前理事長である籔本雅巳氏(公表版報告書ではB前理事長)による同病院の完全な私物化と巨額の不正な富の収奪の行為が記される。
彼は日大特別背任事件の共犯容疑で逮捕される前月の昨年9月理事長を退任したが、依然彼の妻・息子ふたりが理事会におり、理事会がこの委員会の調査の妨害を企てたことが報告書に記されている。手足を縛られたかたちの委員会が突き止めることができたのは、彼の行為のほんの一部だが、それでも目を疑う内容である…
<以下、全文は、おりふれ通信414号(2022年8月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>
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