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オンラインシンポジウム「精神科サバイバーの経験と『統合失調症』というラベル(ヒアリング・ボイシズ?『統合失調症』?スキゾフレニア?)」開催の経緯と振り返り

松本葉子

 

2022年4月2日にODNJP(オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン)主催オンラインシンポジウム「精神科サバイバーの経験と『統合失調症』というラベル(ヒアリング・ボイシズ?『統合失調症』?スキゾフレニア?)」が開催された。ヒアリング・ボイシズ・ネットワーク・イングランド議長のレイ・ワディンガムさん、デンマーク・ヒアリング・ボイシズ共同設立者のオルガ・ルンシマンさん、日本からは京都の高木俊介さんがシンポジストとして参加された。

 この企画のきっかけは、フィンランドケロプダス病院の看護師ミア・クルティさんに、私が「統合失調症とは何なのか?」分からなくて、相談したことにあった。私はその頃、「あなたは統合失調症ではなくて複雑性PTSDだった。」と言われたばかりの頃で混乱していた。私にはその時までに「自分は統合失調症だ」と信じて生きてきた15年ほどの年月があった。「統合失調症」は確かにMRIや血液検査など、目で見ることはできず、実体もよく分からないものだったけれど、私は、「自分は統合失調症なんだ」というくさびとともに生きてきた。15年には、そのくさびによる痛みや苦しみや、不自由さがあった。だから、突然それは間違いだったのだと言われてしまうことは、15年ほどの年月さえもが否定されてしまう感覚がした。そういった悩みをミアさんに打ち明けると、ミアさんから、生きた経験を持つ人としてオルガ・ルンシマンさんとレイ・ワディンガムさんをご紹介いただけた。お2人は、「声が聞こえる」という自分自身の経験を、精神医学から押し付けらた「疾患」の物語に回収されることに異議申し立てをするような運動をされていらっしゃる方だと私は認識している。

 もう一人のシンポジストである高木俊介さんは、日本で以前は「精神分裂病」と言われていた名称を変更するにあたって「統合失調症」という名前を考えた人だ。高木さんは実際にも私の父親くらい年が離れていて、私のくさびの名づけ親だと思っている。私は高木さんから、その名前を考えたときの思いをシンポジウムでお聞きしたいと考えた。

 4月2日のシンポジウムが開催された背景にはそういったことがあった。おりふれ通信を購読されている方の中にも「統合失調症」や他の様々な精神医学の「疾患」の名前をつけられた方がいらっしゃるのではないかと思う。しかし、その名前は、自分の本当の名前のように、なぜ、その名前がつけられたのかを考え始めると、よく分からなくなるのではないかと思う。精神医学の「疾患」は、腫瘍や細菌のように検査で見えるものではない。実体は見えないのだから、本当は名づけた人と率直に話し合う機会が必要なのだけれど、その機会は不足しているのではないかと思う。

 シンポジウムでは、まず、高木さんから、名づけの際の率直な思いがシェアされた…

<以下、全文は、おりふれ通信412号(2022年6月号)でお読み下さい。ご購読(年間2,000円です)のお申し込みは、本ブログ右下のメール送信で。または FAX042-524-7566 立川市錦町1-5-1-201 おりふれの会へ>

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