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投稿 長野精神医療人権センター設立の経緯と現状、課題

長野精神医療人権センター代表 東谷 幸政

 

 はじまり

私が東京地域精神医療業務研究会のメンバーとして東京の精神科病院への立ち入り調査を繰り返していた頃、東京都多摩市の桜が丘記念病院で私の訪問調査に対応して下さったのが中谷真樹医師だった。

精神科病院への訪問調査の結果は、「東京精神病院事情」という冊子にしてまとめて、当事者や家族が精神科病院を選定するときの参考にしていただいている。

 私が定年退職して間もなく、長野県に移住すると、甲府の住吉病院に院長として中谷さんがおられた。私が長野県で、中谷さんが山梨県で、それぞれ人権センター設立運動を進めて、最終的には2つの組織を合体させて、甲信精神医療人権センターにしていこうという構想を二人で作った。

事務局、相談員、協力弁護士などを隣県で融通させれば、少ないマンパワーと資金でも回せると考えた。残念ながら、両県ともに運動の蓄積がなく、精神医療人権センターの必要性についての認識は全く無い。

運動のスタート

 長野県に移住してから知り合った当事者の方に呼びかけて、「長野県の精神医療福祉を考える会」を立ち上げたのは2016年の秋。スタートメンバーは4人。当事者が2人、元中学教師の市民が1人。そして私。

 毎月1回、第1日曜日に長野県富士見町の私の自宅に集まり、例会を開催した。

長野県には駒ケ根市を中心とした地域のネットワークが以前はあったが、現在は消滅しており、一から組織を作らなければならない状況だということがわかった。活動を継続しているのは、ピアサポートの当事者ネットワークと地域家族会で、ソーシャルワーカーのネットワークは極めて弱体であった。地域の研究会などのネットワークも見当たらなかった。

 2年ほど毎月の例会を開催したがあまりメンバーは増えず、人権センター作りの展望は見いだせなかった。このためイベントを開催して広く仲間を集めようという事になった。

これまでの活動とこれから

1.2018年の12月に松本で「オープンダイアログ」の映画上映会を開催した。

精神科病院への強制入院体験を持つ当事者2名の方から長野県における精神病院入院体験をお聞きした。私からは、東京での病院訪問調査活動の報告と、民間人権センターの必要性を訴えた。参加された当事者や家族から、悲惨な報告が相次いだ。あまりにも不当な入院が横行している長野県の実態が明らかにされた。約70名の方が参加し飛躍的に会の活動が広がった。以降、毎月の例会参加者は倍増した。

2.201912月に、南松本で甲府の住吉病院長の中谷真樹さんと同病院のソーシャルワーカーの小川瑛子さんのお話を聞く講演会を開催した。

中谷さんからは住吉病院の実践報告、特にオープンダイアログ、WRAP、家族会、減薬支援の活動を中心に話を伺った。小川さんからは地域で暮らす障害者支援の報告を頂いた。参加者は50名。

3.2021年4月、精神病院勤務の経験がある長野県朝日村保健師の河西ひろ子さんの講演会を開催した。20数名の医療関係者、当事者、家族が集まり、地域のネットワーク形成の大きな足がかりとなった。

4.長野県の精神病院の実態を明らかにするために、長野県情報公開条例にもとづいて630調査の情報開示を求める開示請求を行った。長野県からは開示するとの回答があったものの、開示された病院情報はほとんどは黒塗りで、情報をまとめて当事者・家族に開示しようという目論見は実現できなかった。

5.長野県内にある精神科病床をもつ33病院に院内活動に関するアンケート調査を行ったが、回答があったのは4病院のみであった。アンケートの結果をまとめて冊子を作り、「東京精神病院事情」のような情報提供をしようという構想は実現できなかった。

アンケート調査票の郵送前に説明に伺ったりの「根回し」が足りなかった。

6.当事者、家族、精神医療福祉関係者を対象とした、生活実態調査および医療福祉に関する満足度調査、ニーズ調査を実施しようと、調査票の検討を行ってきた。アンケート調査票はほぼ完成している。調査研究の実施時期については今年度を考えているが未定である。

7.2022年5月15日に、松本市で長野精神医療人権センターの設立総会を実施。元読売新聞記者の佐藤光展さんの講演会と、精神国賠訴訟原告の伊藤時男さんと当会代表の東谷がテレビ出演した番組「日本の精神医療の問題点」を上映した。

横浜から、横浜アクターズスクールのメンバーに参加していただき、精神医療を舞台とした演劇を披露していただいた。

規約と今後の活動方針を会場と検討して決定した。事務局を松本市内に設置した。

8.当事者、家族からの相談に対応してきた。面接と電話相談に対応してきた。

毎月第一日曜日の午後に例会を行い、相談者からの相談に対応してきた。相談者(当事者、家族)に対して7~8人の会員(当事者、家族、医療福祉関係者)が対応するミーテイング形式の相談対応を行ってきた。私たちなりのオープンダイアログ的実践であると考えている。

私たちが今後長野県で目指していること

①退院促進活動と権利擁護 ②相談活動 ③調査研究活動 ④広報宣伝活動 ⑤精神医療国家賠償請求訴訟への協力活動 ⑥アドバイザリーボードの育成強化 ⑦ネットワーク事業 ⑧クラウドファンデイング ⑨各国の先駆的実践との交流

長野精神医療人権センター事務局

〒390-0861松本市蟻ケ崎1873-1

相談電話 090-8818-8268 東谷幸政

月~金曜 午前10時から午後6時(祝日は休みます)

転送により、別の方が出ることがあります。

メール higashitaniyukimasa@gmail.com  面接による相談は予約が必要です。

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