投稿 私のハーメルンの笛の音
アーティチョーク
めんどりが、羽の下で雛を守るように、私も息子を守りたかった。
それは、息子が統失(統合失調症)になった時のこと。
退院した息子を、1、2年は、ゆっくり休ませ守ってやりたかった。が、息子は、復職を選んだ。
私は、パパッと荷物をまとめ、息子の住むつくばの地へ引っ越した。同じく統失の娘を連れて。
「再発はやむなし。でも、孤独の中での再発だけは、絶対に阻止!」
夫をひとり岡山に残すことに、迷いはなかった。
金曜日になると、起きられない病。
復職し1年後の息子は、そんな中にいた。頑張った末の息子の姿をみた。ついに退職。
「岡山へ帰ろうか?」
と、息子は言った。私も娘もうなずいた。
起きるのは御飯とトイレ、外出は通院の時のみ。朝寝て昼寝て夜寝て、4年半。これが、その後の息子。
うっすらと無念を吸って、それとなく無念を吐いて、それすらどうでもよさそうに、眠り続けた。
「ウンコ製造機」
息子のことを陰でそんな風に言う夫を、
「あれは、療養上手をしてるのよ。ゆっくり休むのが一番いいのよ。自分にとって何がいいかを、ちゃんと分かってるのよ」
と、私と娘でニコニコたしなめつ、祈りだけが支えの日々。
ぬッと息子が起きたのは、賜物。やがて、ネコと一緒に出てゆきネコと一緒に自立して、彼女もいてくれて、、、
娘や息子と同じく統失の私は、今、笛の音を聴いている。
それは、私が探してきたハーメルンの笛の音。
「ネズミをとりこにし、死ぬまでついて行った音ってどんな音なんだろう?」
想えば切なく探した音。
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