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投稿 私のハーメルンの笛の音 

アーティチョーク

 

めんどりが、羽の下で雛を守るように、私も息子を守りたかった。

それは、息子が統失(統合失調症)になった時のこと。

退院した息子を、12年は、ゆっくり休ませ守ってやりたかった。が、息子は、復職を選んだ。

私は、パパッと荷物をまとめ、息子の住むつくばの地へ引っ越した。同じく統失の娘を連れて。

「再発はやむなし。でも、孤独の中での再発だけは、絶対に阻止!」

夫をひとり岡山に残すことに、迷いはなかった。

 

金曜日になると、起きられない病。

復職し1年後の息子は、そんな中にいた。頑張った末の息子の姿をみた。ついに退職。

「岡山へ帰ろうか?」

と、息子は言った。私も娘もうなずいた。

 

起きるのは御飯とトイレ、外出は通院の時のみ。朝寝て昼寝て夜寝て、4年半。これが、その後の息子。

うっすらと無念を吸って、それとなく無念を吐いて、それすらどうでもよさそうに、眠り続けた。

「ウンコ製造機」

息子のことを陰でそんな風に言う夫を、

「あれは、療養上手をしてるのよ。ゆっくり休むのが一番いいのよ。自分にとって何がいいかを、ちゃんと分かってるのよ」

と、私と娘でニコニコたしなめつ、祈りだけが支えの日々。

 

ぬッと息子が起きたのは、賜物。やがて、ネコと一緒に出てゆきネコと一緒に自立して、彼女もいてくれて、、、

 

娘や息子と同じく統失の私は、今、笛の音を聴いている。

それは、私が探してきたハーメルンの笛の音。

「ネズミをとりこにし、死ぬまでついて行った音ってどんな音なんだろう?」

想えば切なく探した音。

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