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提言 措置入院を受け入れる病院について

東京地業研 代表 飯田文子


 この間問題としてきた精神保健福祉法改訂案は、参議院通過後、衆議院では論議される間がなく、国会会期末とともに継続審議となった。法案は諸団体が指摘するとおり、精神医療の治安目的化を明確にすることで、患者を苦しめ、医療者にとっては患者との信頼関係の構築が難しくなり、社会の精神障害者に対する差別・偏見を強化するなど、ひとつも良い点がなく、廃案にするしかないものである。

 今回の法改正は、相模原事件と無理矢理つなげる形で、全入院者の1%に満たない措置入院者の「退院後のフォロー」ばかりに焦点を当てたものとなった。措置入院は、昔のように「経済措置」として多数が長期間入院する手段として利用されることはなくなり、都道府県による措置率のばらつきも0.1%~2%の範囲に狭まってきて、大きく問題視されることがなくなってきていた。しかし今回措置入院の出口問題が政治的に焦点とされたことで、圧倒的に問題があり数も多い医療保護入院のみならず、措置入院のあり方も考え直してみなければと思った。
 
 東京の措置患者数で見ると、2007年には入院1年未満176人、1年以上14人だったのが、2013年には1年未満243人、1年以上6人と、措置入院数は増えている中で、長期入院の人は減ってきている。2013年の措置患者249人は、38人が都立松沢病院を中心とする国公立病院、残る211人が25か所の私立措置指定病院に入院している。措置入院は知事命令でなされる強制入院であり、本人、家族は入院先を選べない。本来は国公立病院が入院先となるべきだが、民間精神科病院中心の日本の状況では、東京の例に見るように措置入院のほとんどを「措置指定」された私立精神科病院が受け入れている。この指定病院の質が問題である。

 私たちは5年に1回いわゆる630統計をもとにした「東京精神病院事情」を出版してきた。個別精神科病院についてマンパワーと平均在院日数など活動性を表す指標を点数化して評価したものである。その中から、東京の25指定病院と単科国公立病院を一覧表にしてみた。この表に見るように、医師1人当たりの患者数が11人の烏山病院から、57人の多摩済生病院まで、マンパワーだけ見ても大きな病院間格差がある。措置指定にはもちろん厚労大臣が定める基準(*医師数が(A-52)/16+3以上であること A=入院患者数/3+外来患者数/2.5
看護師と准看護師の数が、入院患者数/6+外来患者数/30以上であること)があるが、精神科特例並みの基準に過ぎず、東京都内の指定病院はマンパワーに最も乏しい病院でもクリアしている。水準の低い病院にも措置入院を引き受けてもらわねば制度が維持できないという行政の怠慢であり、低い基準の病院に有無を言わさず入院させられる患者はたまったものではない。
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(詳しくは「東京精神病院事情2008→2013」お買い求めを。ホームページ arinomama.net

表の合計点が高い病院では、今回法案にあがった措置入院者の個別ケース検討会議のようなことは、措置入院に限らず既に必要に応じて行っている。現実には措置入院のまま退院する人はほとんどおらず、他の入院形式に切り替わって、外出・外泊などを行って退院に向かうのであり、こうした入院者の退院に向けて、地域の支援者や外来クリニック職員や、訪問看護師などが入院先病院に出向き本人を交えての打ち合わせ会を持つことは、当たり前に行われていることである。
以上から考えられることは、措置入院者個人に焦点を当てるのではなく、措置指定病院の医療の質を上げることが必要である。一般科なみの人員配置基準を含む措置指定基準を設定し直し、基準に達しない病院は指定を取り消す。このことを提言する

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