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住宅扶助基準引き下げにどう対抗するか?~あきらめないで!闘うすべはある!

徳武聡子(司法書士、生活保護問題対策全国会議事務局次長)

1.住宅扶助基準引き下げ
厚生労働省は、平成27年7月1日から、生活保護の住宅扶助基準を大部分の地域で引き下げることを決定しました。これにより影響を受ける生活保護世帯は、全体の約3割の44万世帯といわれています。                   
いずれも大幅な減額ですが、特に2人世帯の住宅扶助基準の減額は「生活破壊」とも呼ぶべき深刻なレベルです。
ただ、この住宅扶助基準は一斉に実施されるのではありません。平成27年7月以降に次の賃貸借契約の更新が来るまでは、引き下げ前の現行基準が適用されます。契約に更新時期の定めがない人は平成28年6月まで猶予されます。なお、平成27年7月以降に申請する利用者には、新基準が適用されます。

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(1 2-6 7の数字は世帯の人数。家賃の単位は万円)

2.引き下げに至る経緯
 住宅扶助基準は、史上空前の規模の生活扶助基準引き下げが断行された直後、平成26年3月から厚労省社会保障審議会生活保護基準部会で検証作業が始まりました。
当初より、住宅扶助基準額(支給上限額)が低所得世帯の家賃平均額よりも高額だという屁理屈をこねた財政制度審議会資料を示すなど、引き下げありきの結論が導かれるのではと危惧されていました。
しかし、厚生労働省が平成26年夏に実施した生活保護世帯の居住実態調査では、生活保護世帯の劣悪な居住実態が明らかになりました。
例えば、国は住生活基本計画(平成23年3月閣議決定)で健康で文化的な最低限度の住生活を保障する基準として「最低居住面積水準」を定め、全世帯での達成を目指しています。この最低居住面積水準の達成が、生活保護の単身世帯で46%、2人以上世帯で67%と、一般世帯よりも大きく下回っていました。また、腐朽破損物件の割合、建築基準法不適合、エレベーター等の設備の有無、駅からの距離など、いずれも一般世帯より居住環境が劣悪であることも判明しました。
一方、家賃額について、生活保護世帯では住宅扶助基準額ギリギリに設定されがちであるとの厚労省(財務省)の言い分に対し、近隣同種の住宅より明らかに高額な家賃かどうかについてのケースワーカーの回答は、疑義ありが0.6%と、明らかにおかしいケースは1%にも満たない結果でした。
これを受けて、生活保護基準部会の報告書では、住宅扶助基準引き下げありきではなく、「単純に一般低所得世帯との均衡で捉えるのではなく、実質的に健康で文化的な最低限度の生活を保障しているかという観点から、検討・検証を行っていく必要がある」「より適切な住環境を確保するための方策を検討することが必要」として、むしろ生活保護世帯の住環境を改善する必要性を示唆していました。
ところがこの報告書が提出されたわずか数日後に、厚生労働省は住宅扶助基準の引き下げを含む予算案を発表したのです。住まいは人権、ということを、全くないがしろにした対応です。

3.引き下げにどう対抗する?
上記のような経緯で引き下げられた住宅扶助基準ですが、いくつかの例外措置等が定められており、これをうまく活用することで、引き下げ前の住宅扶助費の支給を受けることができます。
(1)特別基準の設定
「世帯員数、世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ない」場合には一般基準の1.3倍~1.8倍の特別基準を設定してもらうことができます(「保護の実施要領について」局長通知第7の4(1)オ)。従って、①多人数世帯の場合、②車いす利用等でもともと特別基準を設定されていた場合、③都市部等で新基準の家賃で借りられる適切な物件が近隣にない場合などには、この特別基準の設定を求めて福祉事務所と交渉してみましょう。
(2)例外措置の適用
(ア)通院又は通所をしており、引き続き当該医療機関や施設等へ通院等が必要であると認められる場合であって、転居によって通院等に支障を来すおそれがある場合
(イ)現に就労や就学しており、転居によって通勤または通学に支障を来すおそれがある場合 (ウ)高齢者、身体障害者等であって日常生活において扶養義務者からの援助や地域の支援を受けて生活している場合など、転居によって自立を阻害するおそれがある場合
これらの場合には、引き下げ前の基準が適用されます。特に(ウ)では「場合など」と規定してますので、個別具体的な事情から「転居によって自立を阻害するおそれがある場合」には、幅広く旧基準の適用を認めることができると解すべきです。

こういった例外措置に当たると思われる場合には、理由などを書面に書いて「申入書」などの形で福祉事務所に提出するのも一つの方法です。
なお、生活保護問題対策全国会議では、住宅扶助基準引き下げに対する対抗法について、Q&Aを発表しています。厚労省の各通知や福祉事務所への申入書ひな形なども掲載しています。公式HP(http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-244.html)をご覧いただき、どうぞ居住の安定のためにお役立て下さい。


Qa


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