« 2014年10月 | トップページ | 2015年1月 »

『精神病で運転免許を返上しなくちゃいけないの?』

  たにぐち万結


今、私は、警察の聴聞を待っています。私の運転免許証は、取り消されるのでしょうか。停止されるのでしょうか。
そもそも、なぜこのようなことになったのでしょう。
私は、今年の5月に誕生日を迎え、6月の半ばに免許証を更新しようとしていました。その前に、更新の案内のハガキが来ます。そこに、「病気等で不安のある方は運転適性相談窓口にご相談下さい」と書いてありました。どうしたらいいのかわからない私は、事の重大さもわからないままに、主治医に相談したのです。まさか、このような事態になるとは思ってもみませんでしたから。
昨年、長く通っていたクリニックから、入院するために、総合病院の精神科に移りました。付き合いがまだ浅く、私のこともよくわからない主治医に相談すると、「直接、警察に相談してみなさい」と言われ、正直者の私は、警察に相談してしまいました。それが、苦難のはじまりでした。
すぐに、診断書が送られてきました。中身を主治医に書いてもらい、免許証の更新の日、地元の警察署の窓口に持って行きました。そこで診断書を渡すと、警察官がすぐに、あわてたように電話をかけはじめ、そして、私は窓口に再度、呼ばれました。
電話の向こうの、免許試験場にある警察から、「免許更新はできません。取り消しになります」との声。そして、「返上しますか」と言われました。
なんで、返上しなくちゃならないんだろう。せっかく取った免許証なのに、無事故無違反なのに、そんなのおかしい。ただ、精神病になっただけ、精神科病院に入院していただけの、普通の人間なのに。これは、市民権を奪い取られることなんじゃないのか。そう思った私は、返上を拒否しました。どうしても嫌だったのです。何度も、「地元の運転免許試験場の中の警察に何度も通うことになりますが、それでもいいですか」と言われました。私は、免許証を守りたいがために、受け入れるしかなかったのです。
かなり、腹が立っていました。免許証を取るのに、どれだけの労力が、何十時間が、何十万円がかかったか。どれだけ、大変だったか。それを、精神病であることで、奪い去ってしまえるなんて、そんなことが許されるのだろうか。
結局、更新の手続きをさせられ、更新料をとられました。その上に、診断書を2通取らされ、合計、使ったお金は、1万円を超えました。そのお金が、返ってくることはありません。
診断書の、氏名からはじまる1番から4番のうちの、医師の判断である4番には、昨年秋に1ヶ月の入院をしていたためか、「再発のおそれは否定できない」と書かれていました。それが、今回のてんまつの原因となったようですが、再発の可能性なんて、どんな名医でも、判断できるのでしょうか。そこに、この法律のおかしさの一端が現れていると思います。
8月に、運転免許試験場にも、足を運びました。「出頭通知書」という書類が送られてき、「事情聴取」という屈辱的な言葉が綴られていました。重ねて言いますが、出頭させられたり、事情聴取を受けさせられなければならないような犯罪を、一度も犯したことはありません。
「事情聴取」には2時間が費やされました。お薬手帳などのコピーを取られ、3度も、「けいれんやまひ、意識消失はありますか」と訊かれました。
今まで通った病院やクリニックの通院歴・入院歴のすべて、家族構成、発病の原因、発病時の症状まで訊かれました。発病の原因など、知るはずもありません。こちらが知りたいくらいです。家族が、更新に反対しているかも訊かれ、いいえと答えました。
細々、どうでもいい話ばかりが訊かれました。例えば、途中で主治医が変わったのですが、その原因や、元主治医の歳まで訊かれ、こんなことまで話さないといけないのか疑問に思いました。終始、私にとっては、くだらないことばかりだったのです。

そして、今度の聴聞の呼び出し状には、「免許停止」と書いてありました。どうしても許せません。免許証が返ってくればいい、そんな問題ではありません。統合失調症を持っているからといって、免許証を持つ権利を侵害され、差別的扱いを受けているのです。精神障害者の欠格条項にも当たり、法の下の平等という、憲法の理念からも外れています。
聴聞によって、私のようなケースでは、果たしてどうなるのでしょうか。前例がほとんどないので、知る由もありません。

ここで声を上げなければ。同じように免許証の更新時期を迎える、精神障害者の仲間たちと考えていかなければ。こうした事態を防いでいかなければ。
同じ体験をされた方と、手を携えていきたいのです。一緒に連携をしていきましょう。

◆編集部から
 前号、前前号の三野さんの精神科に通院する人の運転免許をめぐる法制度解説につづき、今号には、大阪のたにぐち万結さんの深刻な体験記を掲載します。他の人の話でも警察の対応は、統合失調症、躁うつ病などの病名がついていれば免許交付に否定的に動いているようで、病名を名指しした差別法の問題が早速現実化しています。9月号で三野さんは「運転適性相談窓口」に行くより、日本精神・神経学会の「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」を読むことで得られる知識の方が格別に多い。分からないことは主治医に質問すべき、と書かれていましたが、始まったばかりの今の時期、主治医にまずガイドラインを読むよう要請しなければという事態もあるようです。
たにぐちさんも呼びかけているように、前例のない今だからこそ、声を上げ、更新時期を迎える精神障害者の人達と考え、こうした事態を防いでいく必要があると思います。三野さんなど、知恵を貸してくださる専門家もいます。引き続き体験談をお寄せください。

| | トラックバック (0)

« 2014年10月 | トップページ | 2015年1月 »