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病棟転換型居住系施設について

東京都地域精神医療業務研究会

 障害者政策委員会の場で、厚労省検討会で地域の受け皿作りの一つとして議論されている病棟転換型居住系施設が話題となった。そこで後藤委員からの質問に対して北島課長は個人の意見として「病院も含めて地域社会であると思っている。ただ地域生活で自立して生活するということとのつながりは、どういう施設かによるところがあるので、この検討会の中で病床が単に看板のかけ替えになって、そこを地域と呼ぶようなことがないようにしていく必要があると思っている」と答えた。

 そもそもこの議論のきっかけとなった厚労省内「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」策定検討会での岩上氏(特定非営利活動法人じりつ代表理事・精神保健福祉士)の発言「病院で死ぬということと病院の敷地内にある自分の部屋で死ぬことには大きな違いがある」について、障害者政策委員会では反対意見が相次いだ。尾上委員は「どんな違いがあるんでしょうか。大きな違いがあるとは全く思えません。これはいわば、精神障害のある人は病院や施設に入っているのが当たり前だという考え方があるから、この二つには大きな違いがあると思っているのではないか。もっと言えば、障害のある人は二級市民という見方が無意識のうちにこの文章の中ににじみ出ているのではないかという感想を持たざるを得ません」と、支援者にありがちな「原則は反対だが長期入院の患者ことを思うと・・・」論者に再考を促した。またこの居住系施設に健常者が入居する予定がないなら、まさしく障害者権利条約違反であると断じた。石川委員長は「まだどういう人が住むのか決まっていないということだが、健常者が住みたいと思うとは到底思えないが」とちくり。この転換施設が必要悪と考える人々には耳が痛いのではないだろうか。

 出発点となった厚労省内指針検討会での議論も1月23日付朝日新聞社説もそうだが、精神科病院の問題点について何ら言及していない。そこを批判せずにこの施設を認めることに非常に違和感を持つ。何故なら、この転換施設には精神科病院の問題点がそのまま持ち越されるからである。限られた人間との交流しかできない精神科病院の閉鎖性、強制入院に裏打ちされた病院スタッフと患者の関係、地域で自立して暮らすためのノウハウ獲得の欠如などが全く解消されない。「原則は反対」論者の方々の想像力の欠如という他はない。
 政策委員会での上野委員の意見を聞いて想像力を働かせて欲しい。「当院は典型的な精神科病院であると思うが、町中から離れたところにあって、地域との交流がない。そもそも周囲にあまり人が住んでいないということもある。例えば当院に転換型居住系施設が出来たらば、退院してここに入所した人がどうなるかというと、買い物も病院内の売店で済ませて多分病院の敷地内ですべての生活が完結してしまうと思う。地域の生活に移行したとは到底言えない。私も色々な例を聞いたことがあるが、病院の目の前のグループホームに退院した方の話として、病院の訪問看護を受けて病院のデイケアに行って病院からの配食サービスを受けて、そして病院のスリッパをはいてジャージ姿で過ごしている。その方が『僕はいつ退院できるんでしょうか』と聞くという。そういう実態になるんじゃないかと思う」。
 また、この施設を設置する病院がどのくらいあるのだろうか。例えば、東京西部にある病院で設置するところが出てくるだろうか。死亡退院が年間2万人と厚労省が示しているが、退院者のうち3分の2が死亡退院である滝山病院が設置するとは到底思えない。
 そもそも、住まいと呼べる居室の確保をするためには、相当な投資が必要である。住まいであればキッチン、トイレ、浴室などが必要になるが、その改装費用はどこが出すのか。もしも公費で助成するのであれば、何故わざわざ精神科病院の施設に投資するのか大変疑問だ。「仲間のいるところで生活したい」という患者さんの声に応えるためという「良心的」意見もあるが、それはまさしく長期入院のために起きた施設症ゆえの願望なのではないだろうか。病院内だけの限定された人間関係や文化の中で作られてしまったものをエンパワーするためには、病院と異なるコミュニケーションや生活様式の獲得が不可欠だと思う。
 さて、そのような転換施設に替わる住居として考えられるのが、公営住宅や空き家である。ここを活用することのメリットは、病棟転換と違ってより広範囲の“住まいの貧困”にあえぐ人々の社会資源となり得るということである。人里離れたところではなくて、普通の市民が暮らす街の中で「生き生き、のびのびとした生活」を営んでいくことが障害者権利条約の理念であると考える。

 最後に、政策委員会で佐藤委員が述べたように「計画相談の強いニーズを持っているのは精神科病院の中に長期に入院している人ではないか。その人たちを優先して計画相談を来年いっぱいにやっていく。そのことを国と地方自治体が義務としてやる。病院管理者はそれに対して協力しなくてはいけないということを義務づける」というのも、閉鎖的な精神科病院の中へ外の風が入るという面も含めて強く支持する。
(編集部註:障害当事者委員が多数を占める障害者政策委員会での発言中の「健常者」とは、精神を含む障害をもたない人の意)

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