書評 『病院の世紀の理論』 (猪飼周平、2010、有斐閣)
七瀬 タロウ(精神障害当事者)
本著は、20世紀を「病院の世紀」と捉え、その成立過程をイギリス、アメリカ、日本の医療政策史、医療史、社会政策史を対比しつつ、近代日本の医療システムの成立プロセスを理論的、実証的に入念に論じた労作である。また後半の章で、第6章「病院の世紀の終焉―健康戦略の転換の時代」で「包括ケアシステム(疾病構造の生活習慣病中心化、人口の高齢化や障害パラダイムの発展による)への移行」や「医師―患者関係の変容」、また、第7章「治療のための病床」では「社会的入院(高齢者の社会的入院の分析が中心であるが精神障害者も若干述べられている)」の問題が、病床の「所有原理」という日本独自の体制の下で、治療上の「ニーズ(必要)」ではなく、社会的な「ディマンド(需要)」により、いかに増大していったのか等が詳しく論じられている。
いきなり結論部分から議論を紹介するのは著者には大変恐縮なのであるが、本著P.268に「重要なことは、日本において『社会的入院』一般を解消するとは、「所有原理型医療システム」を解消するということであり、それは病院の世紀を終わらせることを意味している」とある。私には、ここが本著を読み解く大きな一つのポイントのように思われる・・・
以下、全文は、おりふれ通信313号(2012年12月号)でお読み下さい。
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