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日精協誌2012年1月号巻頭言への抗議と質問

編集部より 私立精神病院の団体である日本精神科病院協会の協会誌1月号の巻頭文に対して、東京都地域精神医療業務研究会は以下の文書を出しました。

日本精神科病院協会会長 山崎 學 殿

東京都地域精神医療業務研究会
代表 飯田文子

私どもは、1971年全国精神衛生実態調査に対して地域で生活する病者の調査よりも精神病院の実態を明らかにすることこそ必要と主張し、活動を始めた任意の団体です。それから40年以上が経過しましたが、残念ながら、精神科に関わる患者さん達の生活や治療、精神科病院のありようが、ほとんど改善されていないことに焦りと無力感を感じています。今回、貴協会誌1月号巻頭言を拝見し、驚くと共に、改めて貴協会が日本の精神医療を変える事に大きな抵抗をしていることを認識しました。もちろん個々の会員の全員が同様だとは考えません。貴協会が患者さんの方を向いた精神科医療を目指すよう改変、改革されることを求めます。

貴協会誌1月号巻頭言に対して強く抗議します。更にいくつかの質問に答えて頂きたい。

 巻頭言は、「日本の精神科医療は世界一」という結論のために日本の精神医療を変えていこうという団体、人々を批判、否定し、欧米の「脱施設化」についても否定しています。その上で入院が最大の治療であるとの論調のみで、病者の地域での生活や治療のあるべき姿には一言もふれていません。

質問Ⅰ
 「海外では日本の精神科医療の現状が正しく理解されていないということでした。35万床の精神病床数だけが強調され、しかも精神科病院における患者の処遇は、脱施設化前の欧米の精神科病院、つまり大規模入院施設で刑務所もどきの処遇がいまも行われているといった偏見に満ちたものでした。」について
① 「35万床だけが強調され」と言っていますが、精神科病床が35万床もあることこそが日本の精神科医療を象徴しているのではないでしょうか。
② 脱施設化前の欧米の精神科病院の実態をご存じなのでしょうか。
③ 刑務所もどきと言われますが、現在、刑務所の方が公的な施設として精神科病院よりも外の目が入りやすくなっていると思われます。刑務所の実態を見聞された上でのご意見でしょうか。
質問Ⅱ
「日本の精神科医療について歪曲化して発言している確信犯的原理主義者、外国カブレの学者、精神科病院を批判することで生活の糧を得ているといった人たちです。」について
① 「確信的原理主義者、外国カブレ、精神科病院を批判することで生活の糧を得ている人」との表現も問題ですが、具体的にはどんなことを行っている人たちを指しているのか教えてください。
② 精神科病院に多くの人を入院させて生活の糧を得ている人たちが多くいることは知 っていますが、精神科病院を批判することで生活の糧が得られるとは思えません。実例を挙げていただけますか。

質問Ⅲ
「一方でわれわれも英語圏の精神科医療関係者に対して、日本における精神科医療についての情報発信を怠ってきたことを反省しなくてはいけないと思っています。」について ① 日本の状況を発信するだけでなく、他の国からも学ぶべきことは学ぶという姿勢を持つべきではないでしょうか。

質問Ⅳ
「欧米の脱施設化は、精神科医療に対する国の財政的困窮といった側面と、イタリアに見られるような政治運動の一環として行われたという両面性を持っています。」について
① 脱施設化は貴方が挙げられた二つの面だけを問題として進められたわけではありません。精神科病院への入院そのものが持つ入院者への人権侵害、人格無視といった人権問題。入院は生活者として生きる経験を奪う治療であり、入院の長期化はさらに社会復帰を困難にしてしまうことをどうお考えですか。

質問Ⅴ
「イタリアにおける脱施設化は30年かけて完了しましたが、現在、総合病院で15床程度の病室では十分な急性期対応ができず、入院を拒否されたり、デポ剤による過鎮静にして在宅で看させられるために、家族の負担は増大しています。」について
① デポ剤等による過鎮静は、日本の精神科病院でもよくみられますが、イタリアのデーターの出所は?
② 病院内での過鎮静はかまわないが、在宅での過沈静は、家族の負担になるから問題
と主張されているのでしょうか?

質問Ⅵ
「病床削減を行ったアメリカ、イギリス、カナダ、イタリアでは精神科病床を増やす必要に迫られ、精神科病床の増床を始めています。」について
① どこからの情報でしょうか。
② どんな病床をどのくらい増やしているのでしょうか。また入院期間はどのくらいで しょうか。

質問Ⅶ
「馬鹿のひとつ覚えのように『地域移行』『平均在院日数の短縮』『入院抑制』を推進すれば、過鎮静にして在宅で看るといった欧米型の精神科医療に追い込まれ、患者にとっても家族にとっても好ましい結果にならないのは明らかです。」について
① “馬鹿”という表現は、多いに問題。
② “馬鹿”は厚生労働省を指しているのですか。
③ 治療は入院治療しかないということですか。「地域移行」「平均在院日数の短縮」「入院抑制」をどのように考えていますか。それとも全否定ですか。
④ 在宅で看るのはすべて過鎮静のように書かれていますがデーターは?
 ⑤ 患者さんや家族の声を聞いたことがありますか。

質問Ⅷ
「見学したロンドンの精神科病院の男子トイレで見た、薬の副作用で立っていられないで、額をトイレの壁に押し付けてよだれを垂らしながら用足しをしている患者さんの姿がいまも脳裏に焼き付いています。」について
① トイレにいた方は、入院中の方だったのでしょうか?通院中の方だったのでしょう  か?
② 日本の精神科病院では、貴方が見かけたような方は、おむつをして寝かせられているのではないでしょうか?外国から来た貴方が病院内を自由に見学できたからこそ目にしたシーンではないでしょうか。
③ 日本の多くの精神科病院は、外部に対して開かれていません。貴協会所属の病院の多くは一般の見学を受け入れていますか?

質問Ⅸ
「欧米の失敗の轍を踏まないように、精神科医療改革は時間をかけて慎重に進めるべきです。」について
① 欧米の失敗の内容は?
② 貴協会も日本の精神科医療改革は必要と考えているのですね?
③ どのような改革が必要と考えているのですか。
④ 「慎重」にとは、改革のタイムスパンですか、それとも内容ですか。これまでも時間をかけ過ぎのように思われますが。

質問Ⅹ
「医療提供のバロメーターである、アクセス、コスト、アウトカムいずれをみても、日本の精神科医療は世界一だと思います。」について
① アクセス、コスト、アウトカムの内容と基準を教えてください。
 ② 世界一の根拠は?

以上の質問に2012年3月末までに回答をお願いします。          2012年2月

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