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あと出しジャンケンの弁11 「医療観察法体制」の全面展開としての「省令改悪」

岡本省三

「私にとって書くに値するのは、自明的でない事柄か、既に他の人びとによっては論じ尽くされていない事柄である」(L.フォイエルバッハ『宗教の本質に関する講義』1849)

一、目的と構成
 現代ネオリベラリスト国家が必然的に指向し、そして実現しつつある「超管理・超監視“治安”国家」(2007年3・4月号拙稿)の不可欠の環・純然たる「治安法」として規定される「医療観察法」(以下「本法」)は、嘗て挫折した「保安処分」には到底為し得なかったであろう「成果」を既に収めてきた。
 恐らくは「立法者」の当初の意図をも超えるこの「治安法」としての成果を一層強固にし、全社会的に展開・瀰漫せしめる機能を、「省令改悪」は現実には、その帰結においては、賦与されているものとして規定せざるを得ない。
 本法の歩みを、幾度となく「最早機能不全」だの、果ては「破綻」とすら評価することを行ってきた多くの皮相な(失礼!)批判者・解釈者達にとっては恐らく荒唐無稽な「暴論」に相違ないこの結論を立証することが拙文の意図である。(私をして「シニックな傍観者」だの「揚げ足取り」だの「アラ捜し屋」だのと誣いる人は今はもうおるまいが)
 まず「予備的考察」において本法の犯罪的凶暴性と「完璧な虚構性」とを[A]法律論的検討、[B]医学的検討によって徹底的に暴露し、その上で「省令改悪」の意味を展開立証することとする。
 従って本稿は以上の二部により成る。

二、予備的考察
[A]法律論的検討
 「保安処分」企図を児戯に等しいものとする本法の異常な凶暴性(それはわずか一年後、今度は遂に「挙国一致」(反対票2票)で可決成立せしめた「裁判員法」の、ケタ外れの凶暴性にとっていわば坦々たる路を準備した「下稽古」である)
 本法はちょっとした小細工だけで次の大戦果を挙げている。即ち、憲法第37条(刑事事件における公平な公開裁判)、同第39条( 遡及処罰の禁止・一事不再理)の絶対的規範をいともたやすく一挙に廃棄し無効にすることに成功した。「保安処分」にとってのこの「鉄のクビキ」は今や跡形もない。(「付則第2条」による外見的合憲性は、本法の本質への小さなトゲであり、相互に共存し得ない。為に権力は必要なときこれを「削除」してこの矛盾を「解決」することができる。) これは一体全体何を意味しているのか。例で説明してみよう。(イ).20年前、一度「対象行為」を行った「対象者」あり、とせよ。この同一人物が2005年7月15日以降「再び同様の対象行為を行」わない「保証」などがあろうか。かくして、この昔の「対象者」はその死が終止符を打つまでの気の遠くなるような未来にわたって絶対に避け難く「医療&観察」の「対象者候補」であり続ける。本法にとってそれは自明であり、またそうでなければ本法の趣旨は「生かされない」。
(ロ).50年後にもう一度「対象行為」を行う「対象者候補」があっても不思議ではなく、さすればこの、「昔の対象者」は再度「現役復帰」を強いられる。
(ハ).同一「対象行為」が何度でも繰り返されない保証もまた有り得ぬ以上、この「三番目のお方」はこれから何度でも「現役復帰」させられる(以下同様)・・・・
 本法の徹底的違憲性・凶暴性・その畏怖すべき本質はこの法律論的検討によっても既に明白である。

[B]医学的検討
①再犯予測はもとより根拠をもたない(注 中島直『犯罪と司法精神医学』(2008)批評社、第9章参照)、故に②予測不能の「再び同様の対象行為を行う恐れ」とやらに施すと称する「医療&観察」はその客観的根拠を一切持たない。委細を極める本法も、既にこの段階で「二重の虚構」のうえに創作された「土台なき空中楼閣」・「架空の存在」であることを暴露している。
 その出発点において一切の科学的・客観的・実証的手続きと絶対的に訣別して「創作」されている以上、権力がこれに与える内容規定の一切はただ「恣意性」のみがこれを賦与しうる。この「完全な無根拠性」=「無にのみ立脚しているという本質」から、如何なる客観性・合理性・実証可能性などの「無用な制約」からも「医療&観察」の内容規定は予め完璧に解放されている。とすればそこにはおよそ如何なる代物であれ一切合財が免責され、完全な恣意、デタラメが支配する。「医療&観察」の内容規定はおよそ何でもよく、そこでは「何でもあり」と「何もなし」とは全く同義である。 かくして「省令改悪」はまたしても一切の「学問的批判、要請」から無傷でスリ抜けてしまうのである。誰がバッターになっても全員が予め「三球三振」なのだ。権力の唯一の要請はただ「切れ味のよい治安法」たることのみである。

三、省令改悪は何をもたらすか
             (以下次号)

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