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あと出しジャンケンの弁Ⅹ ネオリベラリズムと「福祉」の運命 -ネオリベラリズムは「福祉」を極小化する-(補論その2)

岡本省三
 
    「私が本当に信ずるのは、批判的精神の存在、および専門家の特殊利害や常識論的見解を超越して        その批判精神を発揮する能力と意志をもつ市民の存在である」(E.W.サイード 『イスラム報道』2003)

「Beers Criteria日本版」批判その2ー「ダメな薬」はわずか70種類?!ー

[読者に]
①前稿中の手書き原稿との異同のうち、文意を甚だしく損なう三個所のみその「正誤」を示す。(イ)8頁18行目「Beers Criteria日本語版」の「語」を削除 (ロ)8頁下から13行目「未知の述語」→「術語」(ハ)9頁下から2行目「代表制」→「性」②この種のPolemik(論争)での対象論文からの長短の引用は「」で示されねばならない。また私がその随所に打ち込んだ[!][?!]の類は批判を一層効果的なものとする「薬味」として重要な役割を果たす。更には、私の(良かれ悪しかれ)凝縮され、かつ漢字熟語を多用した文体においては、しばしば読者の集中力を保ち、特別の記銘を求める手段として「」または“”も意図的に用いられている。これによる論旨の明快化、通読の容易化は明らかである。従って「活字バージョン」がそれらの多くを「消去」しているために読者に無用の困難を課していることにつきその寛恕を請うものである。

[前置き]
 予告の「リストの紹介」は、行文の示す通り今回はその「解釈」によって代えられる。なお対象論文は次の「国立保健医療科学院」のHPで見ることが出来る。http://www.niph.go.jp 

[一]課題の設定
 対象論文は自ら、「単純化され過ぎ」の「批判」の余地、更に「非網羅的」「代表」的なものへの「限定」を認めつつもなお平然として、わずかに70種類(一般名)の「リスト」を以て「わが国の専門家委員らのコンセンサスにより、高齢患者における不適切な薬剤処方の基準が示された」と「国際的(?)な研究グループ」の名において「宣言」することを躊躇していないのは実に驚嘆に値する。
 この大胆不敵・自信満々が、実は「リスト製造」自体、彼らが時には公然と、時にはdefacto(事実上)承認している如く、「高齢者医療」の絶対的劣化・解体作業過程で不可避的に生ずべき事態に正面から対決しうる「最良のツール」の「開発」を直接の目的とし、「特命を帯びて」片付けた“お仕事”であることを既に知る我々にとっては十二分に納得できることである。いかほどスカスカであろうとなかろうと、左様なことは彼らにしてみれば一向に差し支えがないこと、それを深く銘記するのがここでの我々の役割である。でも、いや、それにしても彼らのあまりといえばあんまりな、カエルの王様モドキの「自信」のカラクリは、ここで全面的解明を要する課題であろう。

[二]「スカスカリスト」の“魔法が解ける・・・”(『夏の夜の夢』から)
[A]第一に次の圧倒的事態を確認しなければならない。即ち、いかにスカスカであろうと、この「リスト」が「高齢患者」用「処方箋製作家たち」のおよそすべてに対し「絶対的な自己規制力」を行使することである。(ご自身の安泰、「安全安心」に無関心な御仁が万々一おられれば話は別ですが)とにかく「リスト」からだけは絶対に処方してはならぬ!のだ!! 「その逆に」(前引)このことだけを肝に銘じておきさえすれば、およそその余のありとあらゆる薬剤(ゴマンとあり)は全部OK。「不適切」ではないことを、この「国際(?)研究グループ」はその身に負ったおよそすべての「権威」によって「保障」しているのである。例の「処方時における医師の自由が制限される」(原文)ことも心配ご無用である。
[B]ただ一つ肝腎なこと。それはNLの究極目的(既述の通り)に良く「奉仕」するための(「出来合い」でケッコウ)「権威の太鼓判」つきの「何か」がただ「存在」することだけ。「“存在”が自己目的」、必要なことのおよそすべてであって、その「良し悪し」など二の次、三の次、正しく「第二義的問題」に過ぎない。かくして今「リスト」は「存在」してくれるのだ!ヤッタア!というものであろうよ。
[C]ここでようやく「対象論文末尾謝辞の残り」をご披露する刻が来た。「本研究は文部科学省研究費補助金の一部およびファイザーヘルスリサーチ振興財団の研究助成金の研究費により行われた」
 グローバリゼーション(NLの同義語)のこの時、苛烈な国際競争に勝ち残り、そして(例の)「報いられる」こと。それは何よりもこの「先端科学」(だそうです)領域にも「国家プロジェクト」を集中させ、最優先の予算配分を行うこと・・・。この「リスト」はその「成果の結実」のまずまずの一例である。あの方々の大言壮語・自信過剰(たしかに!)・鼻息の荒さ・勇み足の数々、皆さんもうぜーんぶ納得!でしょ。(要は「産官学協働一体化」!)
[D]次に進もう。もうオサライするまでもなく、「国益」=「ビジネス・マネー」。ここにその“系”(corollary)がある。「ビジネス」=「巨大製薬資本」今国際的合従連衡もただならぬ「戦さ世」。「わがクニ」勢は劣勢と伝え聞くが、とにかく頑張レ!! という訳で、その「弱点」のイロイロを官学民挙げて克服中である、曰く、「治験」に時間がかかりすぎる。曰く、「単純化」が遅れている。曰く、M and Aが少ない。もっとTOBで「規模拡大」を。曰く、とにかく「改革」をもっと進めよ。ペースダウンしてる!
 かくして「頑な」の悪評を流されていた某学会もようやく「理事会企画シンポ」で「治験問題」を正面から採り上げるところまで進んできた。また、「治験」のリーダーが「薬事審議会」を牛耳っているのも、要するに「泥棒が自分の裁判官を務める」のも「時代の要請するところ」であり、俯仰天地に愧じるなし、だ!(皆さんチト風呂敷が拡がりすぎデス)
 本論に戻って。巨費を投じて「開発」に成功したせっかくの「薬剤」が「不適切」?「冗談じゃない!」。かくして「わずか70種類」のシロモノが目出度く誕生したのである。
(「その2」終わり)

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