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生活保護通院移送費削減通知の撤回を求める

            2008.4.16.
厚生労働大臣 舛添要一様
                    東京都地域精神医療業務研究会 代表 飯田文子
                    立川市錦町3-1-33 tel/fax042(524)7566

生活保護通院移送費削減通知の撤回を求める

 私たちは精神医療・福祉の現場で働く従事者の団体です。精神病院の閉鎖性やそのもとでの長期入院問題の解決と、地域での精神医療と生活保障を求める立場から、下記の理由で生活保護通院移送費削減通知の撤回を求めます。


1.厚生労働省が掲げてきた精神病院社会的入院者の退院促進施策と矛盾する。
 現実に退院している長期入院者の多くは、生活保護を受給し地域で単身生活を送っているが、通院交通費削減は、これから退院しようとするただでさえ不安でいっぱいの人々の退院への気持ちを削ぐものである。また精神病院が交通不便な郊外に偏在していることを考えると、退院後の不安定な時期に慣れた病院に通院することができなくなる。

2.精神科外来通院は通常長期にわたることが多い。デイケア・ナイトケアなどで通院が月に20回にも及ぶこともある。交通費が出なくなると必要な通院もできなくなり、ひいては病状悪化につながる。

3.精神科外来受診においては、医師ほか職員との信頼関係が非常に重要であり、また未だ厳然として存在する精神障害者差別等のため、自宅近くより少し離れた精神医療機関を選ぶ人も少なくない。そうした現実があるにもかかわらず、受診先や距離を一律に制限することは著しく不適当である。

4.通院交通費を自己負担せよということは通院継続への大きなハードルとなる。
 精神科受診者の中には、ご本人の動機付けは薄いが医療側から見て治療の必要度の高い人がおり、来院の促し・説得などにより外来通院がやっと継続している例もある。治療中断が生活破綻や再入院につながることが危惧される。

5.以上、今回の通知は当面の生活保護費を減らすことができても、これまで通院交通費を保障されて外来通院を継続していた人々の病状の不安定、再入院を招き、長い目で見れば社会保障費を増やし、当事者の生活の質を落とすことになる。

[解説]
 厚生労働省は3月、生活保護の通院交通費を今後災害現場や離島などからの搬送に限り、これ以外は例外的給付とする。その場合も福祉事務所管内の医療機関へ、最低限の日数、最も経済的な交通手段で通院することとの方針を出し、4月その旨を自治体に通知、ただし当面3ヶ月は「是正期間」として現状維持とした。理由は「濫給防止」であり、背景には北海道滝川市の受給者に通院交通費として2億円以上を支給し、マスコミで大きく取り上げられたこと等がある。
 これに対し、反貧困ネットワークなどが昨秋の生活保護基準切り下げ検討の時同様、素早く反論。滝川市等での行政責任を保護受給者に転嫁するものである・昨秋見送らざるを得なかった保護基準切り下げを別の形で実質的に行うもので、医療を受ける権利の侵害だと主張。東京地業研でも、精神医療従事者の立場から4月16日の厚労省交渉に向けて前頁の要望をまとめた。その後も厚労省交渉は続けられ、その中で厚労省は「もともと通院移送費は生活扶助費(食費・高熱水費)に含まれている。一般世帯でも月に千円から二千円の交通費は払うでしょう」「(通知の『例外的給付』に『へき地』『高額』な場合は支給するとあるが)へき地や高額の内容は各福祉事務所で判断する」「改正の趣旨は一律に切るのではなく、個々の事情に応じて必要性を判断すること。必要な方に必要な分を出すということだ」などの話をしているとのこと。 自治体では、埼玉、千葉、横浜、川崎、東京
の生活保護担当課長が3月21日「通院移送費は、医療扶助の内容として、被保護者の最低生活保障上、必要欠くべからざるものとして認められてきたものである。このことから、生活保護実施の連続性に配慮し、支給範囲の運用については、地方自治体の意見を聞いて慎重に検討されたい」との要望書を出している。東京都は4月25日障害者団体との話し合いで、現状維持の方針と応えてもいる。一方たとえばさいたま市浦和福祉事務所では『平成20年度の基準改定により、通院交通費が廃止されることになりました。つきましては、病院にバスや電車等で通院している人について、4月1日以降の通院交通費は自己負担となり、支給されなくなります。ご理解とご協力をお願いします』、また東京都小金井市では『原則、通院のための交通費は支給できません。ただし、身体障害等により電車・バス等の利用が困難な場合、他の交通機関の利用料を支給することができます。交通費を支給できる場合でも、原則として小金井市内または最寄りの地域とします』という「お知らせ」を早々と出した。個々の受給者に交通費が出なくなると伝えたり、通院先を近くに変えるよう指導を始めている自治体の話もあちこちで聞く。自治体交渉は重要だ。
 障害者についてはDPIの山本創さんが情報を集めようと呼びかけている。一つ一つの例について福祉事務所の公式見解なのかまた理由や内容を確認し、情報を集中しよう。
(情報は編集部へ寄せて下さっても結構です)

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