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「退院支援施設」強行実施!?

<編集部から>
 昨年夏、厚生労働省から急に提出された「退院支援施設」構想(精神病院内に病棟をリフォームした施設をつくるとするもの)については、当事者中心の厚労省交渉の経過や、この問題をテーマに開かれたシンポジウムのレポート、私たちが毎年執念で東京都に情報公開請求し、入手後集計・検討し続けている「精神病院統計」のデータから見て「退院支援施設」とはどう考えられるのかなどを掲載してきました。おりふれ通信の編集方針のひとつ「精神病院問題にこだわり続ける」から言っても、こんなにひどい
 結局厚労省は、3月23日を最後に交渉に応じようとせず、3月30日厚生労働省前に集まった私たちの緊急抗議集会の声を無視して、4月1日実施の姿勢を変えることがないまま経過しています。
 以下、これまでの交渉の中心的担い手の1人であったDPI日本会議事務局長尾上浩二さんが、仲間への報告として書かれた経過説明と問題点の整理を、尾上さんの許可を得て掲載します。

DPI日本会議 尾上浩二
 年度末の慌ただしい時期にも参加頂いた方々、反対声明等を出して頂いた方々をはじめ、皆様どうもご苦労さまでした。
 厚労省は3月23日には交渉継続を確認していたにも関わらず、その後、「代表とのみ会い、説明をする」として交渉を打ち切ってきました。
 3月23日以降も、精神医療・福祉従事者の組織である精従懇のシンポジウムでも「退院支援施設」の反対アピールが上がる等、障害当事者や関係者に反対が広がる中、4月1日に強行実施したことは決して許されるものではありません。
 厚生労働省の頑迷な姿勢から、かえって、この「退院支援施設」に関する内容のでたらめさが見て取れます。3月23日の交渉の内容でより明確になった論点(疑問点)を以下説明します。

 「精神障害者退院支援施設の運営等関する指導事項(案)」というもので、厚労省は「昨年から(私たちが指摘してきた)問題点を、これで払拭できる」と当初言っていましたが、私た
ちが一つひとつ質問を重ねていくと、それに対して満足に答えることができず、そのために、次回の話し合いの継続が3月23日には確認されていたのです。
 その時に、私たちが指摘していた問題のポイントのいくつかを下記に記します。
1.「地域移行推進協議会」の構成や人選について
 厚生労働省の説明は、「地域移行推進協議会」を設置し、「退院支援施設」の評価や地域移行の調整を図る(だから、「閉じ込めにはならない」?というわけです)。
 「地域移行推進協議会」のメンバーについては、「事業者(退院支援施設の設置者)、利用者、家族、受け入れ先の市町村の立場に立つ者、相談支援事業者、地域住民の代表等で構成する」と説明しました。
 しかし、このメンバーの内、誰が必須メンバーか尋ねても、「誰が必須かという形では決まっていない」と答えました。さらに、この「地域移行推進協議会」のメンバーの人選・任命、運営に当たる事務局は誰かと尋ねたところ、当該の「退院支援施設」を設置する事業者であると驚くべき答えが返ってきました。
 必須メンバーも決まっておらず、人選・任命、運営を当該の「退院支援施設」を運営する事業者に任せてしまえば、事業者にとって都合のよい者で構成して運営していくことができる仕
組みです。これでは、何一つ歯止めになるどころか、むしろ、それに「お墨付き」を与えてしまうことも可能となります。

2.ハード(設備)面での対応
 厚労省は、原則として病棟単位(フロアー単位)で転換する等、病院との一定の独立性を確保するとの説明がありました。
 「フロアー単位で転換」ということは、例えば、4階建ての病棟があった場合、1~3階は病院、4階は「退院支援施設」という構造が認められるわけです。これのどこが、病院との一定の独立性を確保することになるのか全く不可解といわなければなりません。むしろ、こんなことを書かなければならない程、看板をかけ替えるだけで「退院支援施設」に「移行」できる
ということを意味しています。
 3月23日の交渉では、さらに、「病院との一定の独立性を確保」とは何をもってなされるのか、例えばお風呂は別々でないといけないのか?と尋ねたところ、「ケースバイケース、お風呂は水回りの問題があるから別々にするのが難しい場合がある」との回答がありました。食堂や浴室等が同一でも認められるというわけです。これのどこが「一定の独立性」なのでしょうか?
 この点も、他にも玄関やトイレ、給食設備等々具体的に示してほしいと質問しても、答えられず、話し合いを継続することになっていました。

3.「病院-退院支援施設」間を往復することでの隔離の継続の問題
 私たちが、昨年から指摘してきたことの大きな問題点の一つに、病院と「退院支援施設」間の往復の問題があります。この両者の間をグルグル回すことで、一生、実質的には病棟に閉じ込められてしまう状態がつくられてしまいかねません。
 しかし、その点については、昨年9月の説明から何一つ付け加わるものはありませんでした。つまり、「標準利用期間は2年ないし3年で、更新申請に当たっては審査会で審査をすることでチェックする」ということでした。
 ですが、例えば、「4階の退院支援施設で訓練をしていたが調子を崩したので、再度、3階の病床に再入院。そして、急性期を過ぎたら、再度4階の退院支援施設に移って再チャレンジ」という場合は、この更新には当たらず新規となります。そうした医者の「診断」に審査会が関与できるはずもありません。この点の質問に対しては、「医療批判をしているのか?」と開き直りとも言える回答しかありませんでした。私たちからは、これまでの痛ましい歴史の経験に基づいて危惧しているということを言いましたが、この部分は資料に書いている説明の繰り返ししかありませんでした。

4.「退院支援施設」に移った者のカウントと「社会的入院者」の数
 同じく昨年から指摘した問題で答えがなかった問題として、「退院支援施設」に移った者のカウントの問題があります。
 「退院支援施設」に移ることで医療統計上は「医療から外れる」ことになります。そのことにより、(実態は変わらないのに)見かけだけの「精神科病床入院患者数」が減ることをもっ
て、「社会的入院解消へ前進」したとされてしまうと批判してきたわけです。
 昨年9月には厚生労働省も、「地域移行の途上にある者」ということになるが、統計上処理するかは検討するといっていました。しかし、そのことすらも明らかにされませんでした。

5.ソフト(運営)面での対応
 ここで示されている、外出訓練・グループホーム体験入居等の敷地外活動や、当事者活動(ピアサポート)の活用と言われるものは、「退院支援施設」とは本来関係なく、それ自体で充実させていくべきことです。
 ピアサポート等はこれまで何一つ制度的な支援がなく、手弁当で何とか続けてきたのが現状です。これまでも精神障害者の地域生活のあり方検討会等ではピアサポートの制度化が課題と
なっていました。しかし、その後、厚生労働省は何一つ具体化してきませんでした。にも関わらず、「退院支援施設」への批判に対して、あわてて「ピアサポートの活用」を持ち出してい
るに過ぎません。

 以上のように、3月23日のやりとりで、問題点はより明らかになってきたところでした。
明確になるような状態だったからこそ、厚労省は「代表者とのみ会い、説明をする」と切り換えてきたのだと言えます。
 その後も、私たちは粘り強く話し合いを求め、3月29日付けで(3月23日の交渉で明らかになった疑問を整理した)質問並びに要望書を提出しました。そして、3月30日当日まで何度にも渡る折衝を行いましたが、厚労省は頑なに「代表とのみ会う」との姿勢を最後まで崩さなかったのです。

 「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」を合言葉に策定された障害者権利条約も各国が署名し、いよいよ発効します。そうした時に、厚労省は約束を反故にし、話し合いももたれずに、こんな「退院支援施設」構想が施行されることは、歴史の皮肉とも言えます。
 私たちは、障害者権利条約をも追い風にして、精神障害者をはじめ全ての障害者の地域生活の確立を求めて闘い続けていましょう。

 3月30日抗議行動のアピールにも示されている通り、当面、この「退院支援施設」を実態化させないための取り組みをしていきたいと思います。各地でも、都道府県の指定や、市町村障
害福祉計画の中で「退院支援施設」が進められることがないように働きかけて頂きますようお願いします。

 3.30厚生労働省前「病院敷地内退院支援施設構想」反対緊急抗議集会 参加者アピール
 本集会にお集まりの皆さん!厚生労働省は、われわれ当事者の粘り強い反対運動や精神医療・福祉従事者の強い反対、そして、マスコミの厳しい批判を受けながらも、当初予定していた4月1日実施を強行すると言う態度をついに最後まで、かえることはありませんでした。しかしながら、問題の核心であるところの「社会的入院者」の解消、長期入院者問題ならびに精神障害者の人権侵害問題解決に今回の強行実施がまったく繋がらないものであることは、火を見るよりも明らかです。
 本当の闘いの正念場は、むしろこれからです。
 このようなその場しのぎの安易な解消策は、決して本当の意味での「社会的入院者」の解消には繋がらない天下の愚策であることを、指定者である都道府県や支給決定に携わる市町村に対して、粘り強く訴えかけ、退院支援施設の実態化を阻止する運動に力を注いで行く必要があります。
 また、退院支援施設が「一つの選択肢」だと、あくまで言うのであるならば、他の選択肢にも個別の入院者の実情にあった退院支援策を、具体的に要求していく必要も当然あるでしょう。
 「本人」が、本当の意味で、多様な選択肢を選べるように、そして「本人」をエンパワメントできるような仕組みを作り上げていきましょう。
 皆さん、今後も、力を合わせて、「本当の意味での解決」に向けて、今後も粘り強く、取り組んでいきましょう!
           2007年3月30日 「退院支援施設構想」反対厚生労働省前抗議集会参加者一同

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