« 投稿 パンフ・イタリア保安処分体験者の手記発行 | トップページ | 「退院支援施設」を「精神病院統計」の点数から検討する »

東京精神病院事情2005年版 飯沼病院訪問調査

東京精神医療人権センター・東京地業研

2006年7月、東京地業研の留守電に飯沼病院の事務方から吹き込みがありました。東京地業研の飯田が電話すると、「『東京精神病院事情』のホームページhttp://www.arinomama.netを見たが、飯沼病院が16点という評価は納得できない。どんな基準で点数をつけているのか説明に来てほしい」ということでした。飯田は「本を読んでいただけば基準についての説明もあるのでまず本を読んでください。お手元にないなら送ります。本を読んでいただいたうえで、必要ならば病院に調査にうかがうか、話し合いが必要であれば病院の外でお会いします」と伝え、本を郵送しました。12月終わりに「訪問調査に協力します」との連絡が事務長からあり、去る2月21日、他の病院から2~3年遅れて34番目の訪問調査実施となりました。結果のあらましは以下のとおり。本の『東京精神病院事情2005年版』に追加することは今からでは無理ですが、ホームページには本と同じ内容を全文掲載します。


│飯沼病院 (個人)
│板橋区常盤台2-33-15 TEL03-3960-0091 FAX03-3960-0019
│設立年:1946年   精神病床数:373床(総病床数426床)
│開放病棟:4棟197床 閉鎖病棟:3棟176床 専門病棟:老人精神病棟1棟67床 デイケア実施

*立地条件 
 東武東上線ときわ台駅北口徒歩7分。駅前商店街を過ぎ、住宅街の中にある。

*建物と病院内の環境
 道路から4階建ての病棟がみえるが、古い鉄格子に囲まれた一見して精神病院と分かる建物である。玄関を入ると受付と外来待合室。待合室には木目の机や椅子が置かれ、診察を待つ人達の姿があった。病院全体が古くて狭い。事務長の話によると改築を考えているとのことだが具体的なものとはなっていない様子であった。
 デイルームの片隅に細長い洗面台があるが古く、汚い。デイルームは、病棟入院者全員が集まることはとてもできない狭さである。花などが飾られ、少しでも居心地の良い環境にしたい
という努力は感じられた。    
 トイレは、男性用は中央部分のみ隠れるドア、女性用は、同じドアの下の部分に板を張って下も隠れるようになっている。トイレの鍵は、閉鎖病棟では、外からも開けられるタイプ、開放病棟では、中からしか開けられないタイプであった。換気扇の効果があまりなくどの病棟もトイレの匂いが漂っていた。
 面会は、主にベッドサイドか廊下の片隅、デイルームでということであった。訪問中にも家族の方が面会に来ている姿があった。
 病室は、各病棟とも半分は、畳部屋で一室8~9名が定員。開放病棟には、一室14人定員のベッド部屋も一室あった。ベッド間のカーテンはなく、鍵付きロッカーもない。(見学しなかったうつ病の方達中心の病棟にはベッド間にカーテンがあるということだった。)
 保護室は、全6室。男子閉鎖病棟でも年間数回で、ほとんど使用していないという。ナースステーションからは離れた場所に、扉を開けると二部屋並んであった。ベッド、ベッドなしの両方、トイレは囲いが全くなく、和式で穴が開いている感じ。ポータブルトイレが置いてある部屋もあった。トイレの水は部屋の外から流す。ドアの下の方には小窓があった。  

*スタッフ  
 都内単科精神病院の平均から見ると看護者数は平均よりもやや多いものの 医師、特にコメディカルは数が少ない。医師は、担当医制をとっており、医師が病棟を回るスタイル。コメディカルは、全員PSWであるが、一名がデイケア担当、三名が担当制で入院患者を受け持っている。看護は、二交代制、病棟内で作業療法も担い(作業療法士はいない)、熱心に入院者の方達と接している姿があった。

*入院者の状況
2005年6月末の統計から見ると回転率96%と、都内単科精神病院の同時期の平均129%と比べ低いが、2003年から見ると退院する人は増えている。統合失調症で入院している人190名53.2%は、やや少なめ。生活保護法での入院者218名61%は、都内第二番目の多さである。老人精神病棟の入退院が病院内では一番多いということだが老人保健法の入院者の回転率は106%。
現金については事務所に預けるのが原則。(管理費一日120円)自分で管理出来る人には週3000~6000円を渡すというが数は多くはなさそうだった。各病棟に飲み物の自動販売機が設置されていたが一日2本限定、自販機利用のために看護者に現金をもらう人が多数いる。タバコは、院内全館禁煙を目指して2年程前から学習会等を開き、現在病棟により異なるが一日2~3本に制限している。
院内に「カサブランカ」という入院者が働く喫茶店が、毎週水曜日に開かれている。一日120人の利用者があるとのことで、ここでのコーヒーとケーキが入院者の唯一の楽しみのように見えた。
 デイルームが狭いためか、ベッドに座っている人が目についた。    

<訪問した私たちのコメント>
 「東京精神病院事情1998→2003」(2005年版)は、2003年6月の精神病院統計をもとにして各病院の点数を出している。その結果が16点だった。病院側から最新のデータを用いてほしいと言われたので、私たちが入手できた最新のデータ(2005年6月)をもとに点数を計算してみたところ19点であった。都内単科精神病院の平均が24点であるから平均点以下の病院ということになる。16点が納得できないということであったが今度は、他病院との比較も含めて納得していただけただろうか。
 病院の周りが再開発の中で新興の住宅街に変貌している。その中でこの病院だけが時代に取り残されてしまった感は否めない。外からも目立つ鉄格子、内側では、看護の工夫はあるもののそれだけではとても追いつかない病室の狭さ、プライバシーが守れない環境、古い洗面所やトイレ等々。外来待合室は、それなりの工夫があり居心地が良かったので病棟にもこれぐらいの工夫をしてほしい。
訪問の最後に院長より「ときわ台駅前にカフェレストランを開いた。意図は、患者さん達が社会復帰していくのに作業所でままごとのような作業をしていたのではダメ。ちゃんとした仕事をしてもらうため。でもやってみたら洒落すぎていたのか患者さん達が仕事をするのは無理だった。でもぜひ寄っていって下さい。」と言われ帰りがけそのカフェレストランに入った。今見てきたばかりの病棟との落差にしばし唖然とした。ちゃんとした仕事をということはそのとおりと思うがその前に病院内でやるべきことが山積みと思った。例えば、入院中の方達が唯一の楽しみとしているらしい院内の喫茶店「カサブランカ」を考えてみても閉鎖の老人精神病棟の中にあり鍵を開け閉めして入る狭い空間に過ぎない。病棟から離れた鍵のかからない場所にもっと広い空間を確保できないものだろうか。

|

« 投稿 パンフ・イタリア保安処分体験者の手記発行 | トップページ | 「退院支援施設」を「精神病院統計」の点数から検討する »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19973/14572137

この記事へのトラックバック一覧です: 東京精神病院事情2005年版 飯沼病院訪問調査:

« 投稿 パンフ・イタリア保安処分体験者の手記発行 | トップページ | 「退院支援施設」を「精神病院統計」の点数から検討する »