« 東京精神病院事情2005年版 飯沼病院訪問調査 | トップページ | 障害者権利条約を良く知って使いこなそう »

「退院支援施設」を「精神病院統計」の点数から検討する

東京都地域精神医療業務研究会

現在「退院支援施設」が問題となっているが、提案されている制度が本当に「社会的入院の解消」に役立つのかどうかを、東京都の「精神病院統計」の点数*から考察してみた。
*仮に「退院支援施設」制度が導入された場合、制度を利用すると考えられる精神療養1の病棟がある単科病院のみを対象とした。

1.精神科病院の2極化が顕著
病院が入院した人をすみやかに治療し、退院させているかどうかを回転率、家・施設退院率、デイケア利用者数で見ると、回転率が高い病院は他の項目の点数(人数)も高く、回転率の低い病院は他の点数も低い傾向が顕著である。

【回転率180%以上の病院】 デイケア
 順位  回転率 家・施設退院率  利用数
  1   304   89       709
  2   270   90 4126
3 221 76 483
4 213 83 741
5 191 92 3112
  6 188 87 1442
7 181 92 1079

【回転率70%未満の病院】
(老健法入院患者数が3割超の病院を除く)
  1 24 50 0
2 46 44 0
3 56 80 179
4 56 75 232
5 61 25 151
6 63 70 0
さらに、回転率の高い病院は訪問調査においても、地域社会との交流があり、病院生活のアメニティが高く、患者の人権が尊重されており、退院に向けての具体的な努力(グループホームの見学、地域の社会資源との連携、当事者団体の定期訪問の受入れ、外出、外泊の支援)や体制の整備(コメディカルが多く、チーム医療が良く機能している)がなされていた。
(注)『東京精神病院事情』1998→2003の各病院の「■退院への取り組み」の項を参照

2.回転率の高い病院は「退院支援施設」を必要としているか
回転率の高い病院で病院敷地内にグループホーム的な施設を設けている精神病院はほとんどない。敷地外に生活訓練施設や授産施設、地域生活体験室を設けている病院もあったが、医療法人が社会福祉施設を運営する問題点を考慮しており、現在提案されている「退院支援施設」のようなあり方を肯定するものではない。
回転率の高い病院は、様々な退院への取り組みを総合的に実施しているが、ハード(建物の改変等)に依存した試みはほとんどなく、むしろ患者さんへのマン・ツー・マンの取り組みやミーティングなどにより病院全体の意識付けを行うなど、ソフト面での取り組みが際立っている。

3.回転率の低い病院は「退院支援施設」制度の導入により退院を促進できるか
回転率の低い病院に「退院への取り組み」を聞いても、何も具体的に行われていないところがほとんどで、なかには「患者には退院して地域で暮らす権利がある。それは当然のこと」と認識していない病院もあった。
このような病院が「退院支援施設」を設けたとしても、社会的入院患者が減少するとは到底考えられず、本来の目的からいえば貴重な税金を「ドブに捨てる」結果になろう。

4.「努力する病院」を無視し、「税金に依存する病院」を優遇する危険性
「退院支援施設」の制度がなくても、意識のある病院は活発な退院促進への取り組みを行っており、その結果として病院全体の回転率は上昇している。現在、病院や地域で行われている優れた退院促進への取り組みを調査したり、評価することなく、手を上げる病院にハード偏重の財政補助を行うことは、病院関係者や一般市民に誤ったメッセージを伝えることにならないだろうか。
現在、優れた実践をしている病院や組織は「退院支援施設」に見向きもしないであろうし、財政補助なら何でも欲しいところは「退院支援施設」なる名称の施設ができても、患者の地域生活実現にはつながらず、病院敷地内で病棟と施設の間を往き来するだけになるだろう。 以上
東京精神病院事情ホームページ
 http://www.arinomama.net

|

« 東京精神病院事情2005年版 飯沼病院訪問調査 | トップページ | 障害者権利条約を良く知って使いこなそう »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19973/14572040

この記事へのトラックバック一覧です: 「退院支援施設」を「精神病院統計」の点数から検討する:

« 東京精神病院事情2005年版 飯沼病院訪問調査 | トップページ | 障害者権利条約を良く知って使いこなそう »