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『懲りない精神医療-電パチはあかん!!』をぜひ読んでください 

七瀬 タロウ(精神医療ユーザー)


『懲りない精神医療-電パチはあかん!!』
編集・企画 前進友の会 
千書房 2005年刊 1,200円

私はこの本を、三回程繰り返して読んだ。最初は、電気ショック療法に対する当事者による強烈な批判の書として。二回目は、現在の精神医療全般に対する強烈な批判の書として。三回目は、自分の「人生」「体験」そのものを考え直すための書として。そして今日、紹介文を書くために、改めて読み直した。本著は、およそ、短い要約にはなじまない本なのであるが、以下、本著の内容を、可能な限り、紹介していこうと思う。
第一部の中心舞台は、2003年12月6日、京都府立洛南病院(院長 岡江晃)主催の「第8回精神科急性期治療研究会」(「電気ショックの効用」についての発表会)。10月20日の洛南病院訪問調査によって、電気ショックを過去30年間欠かさずやり続けてきたという、調査結果を得た前進友の会のメンバーは、かつて反十全会闘争(1974年9ヶ月で859名の入院患者を殺した京都の悪徳病院に対する闘争)等を共に闘ってきた洛南病院の医者達が、長年電気ショック療法を行い続けてきたことに強いショックを受け、12月1日に「抗議文」を提出、そして、12月6日には、前進友の会総勢6人で「発表会」会場(ぱるるプラザ京都)にビラ撒

きに突入する。そして、総勢100名程の医者達が集まった「発表会」は結局中止に追い込まれた。
その後の経緯等は、直接本著にあたって欲しいのだが、ここでは、前進友の会が何故(修正型を含めた)電気ショック療法に反対しているのか、そしてそれが、何故現在の精神医療総体に対する批判ともなりえているのかを論じて行きたい。そして本著を、病に苦しむ当事者のみならず、電気ショック療法は「効く」場合が多い、希死念慮が強いうつ病患者に対する最後の治療法として大変有効である等々考えている、電気ショック療法肯定派の多くの精神医療関係者等にもぜひ一読して欲しいと思い、筆者の意見も交えながら、紹介を続けていくことにする。
まず、副作用の問題である。記憶ならびに認知機能障害(せん妄、逆行的健忘、記憶力低下)は明らかに認められている。本著でも、国語辞典を引く際に、「あ、か、さ、た、な、」まではいいが、その後の順序があいまいで辞書を引くのが大変な例等が挙げられている(39頁)、また、これは本著で紹介されている例ではないが、奥さんの顔と名前を忘れた、それどころか結婚した事実まで忘れた例や、これは最近のアメリカの例であるが、看護婦が電気ショック療法を受けた結果、それまでに覚えた看護技術をすべて忘れてしまったのだが「医療過誤裁判」で勝訴し、多額の賠償金を勝ち取ったという例も報告されている。なお本著60~68頁に、前述の「発表会」の冒頭で、このような電気ショック療法の宣伝になるような発表会はやめて欲しいと壇上で10分間訴え続けた黒川医師(光愛病院)によって、詳細な副作用等の各種問題点がわかりやすく整理されているので、当事者運動にまったく興味がない精神医療関係者にもせめてここだけは読んで欲しい。
さて次は病状の再燃の問題。電気ショック療法は急性期治療の有効性が高いとされているが(この理解が「病棟機能分化」体制下の急性期治療における、電気ショック療法の蔓延をもたらしている)、6ヶ月以内に約50%が再燃する。そして、再び電気ショック療法の繰り返し。そして何よりも、電気ショック療法は、回復にとって決定的に重要な、自然治癒力の発動を極端に遅らせるという、警告を鳴らす医師(星野弘)もいる(79頁)。
結局、精神医療において「治療する」「治す」とは一体どういうことなのか、その根本が電気ショック療法において根源から問われているのだ。
大体ココロに限らず、そもそもどこにも病気がまったくない人など、健康すぎてかえって不気味である。かつて、ファシズムが「健康の帝国」を目指していたことを、そして精神障害者を大量に抹殺したことを、忘れないようにしよう。
そして「治療」の名の下に、「人格」とやらまで破壊されるのは誰だってまっぴら御免である。電気ショック療法は、確実に「人格」を形成する「記憶」=過去を破壊する。例えば一風変わった芸術家風のおじいさんが、入院して電気ショック療法を受け、打ちひしがれてほとんど廃人同様になって退院したという話も聞いたことがある。それでも「治療」としては成功したことになるのである。
最後に私自身の「人生」「体験」の問題として、本著を読んだ感想を述べてみたい。たとえ、精神的外傷等をも伴うものであれ、「記憶」=過去こそが、現在の私を形づくっているのであり、中井久雄が述べるように、好ましい「体験」こそが、私を変えていく力を持っているのである(63頁)。(例えば私の場合「規則正しい生活」を送る様にと最初の主治医に禁止されていた「旅行」に思いきって出かけたが、(3ヶ月間、東南アジア各地放浪の貧乏旅行、フィリピンの片田舎で、英語のテキストと格闘しながら、100ドルでスキューバライセンスの資格も取りました!)その「体験」は、多くの現地での友人との出会いも含め、人生観を覆すような様々な「体験」の連続だった)。
さて中井によれば、服薬等は、しばしば好ましい「体験」を伴うが、電気ショックは「体験の連続性を破壊する」のであり、また当人の「体験」には絶対になりえない。さらに、電気ショック療法は「精神科医の人格に影響を与える。無感覚になるか神経衰弱になるかは別として。看護師についても同様」。ECTはなんと治療者の人格まで変えてしまうのだ!
与えられた字数をすでに大幅に超過しているので、最後にこれだけはこの際是非いっておきたいことを述べて本稿を終えることとしたい。
現在、電気ショック療法やロボトミー手術の被害者は、後遺症の実態調査をうけることも何の補償をされることもなく、精神病院や老人病院等、社会の片隅で今もひっそりと暮らしていると聞く。私も本著で主張したが(96頁),日本精神神経学会は、ロボトミー被害者や、電気ショック療法の中、長期的な後遺症についての実態調査を絶対行うべきだと思う。その作業はいずれ必ず必要となってくるのであり、被害者の救済に役立つのはもちろんのこと、日本の精神医療総体に対する「治療的効果」も期待出来ると思う。
紙数の関係で、深刻な、電気ショック療法の懲罰的使用の問題、患者を手間をかけずにおとなしくさせるのに大変有効であるという看護側の「本音」の問題、さらに江端さんが強調する「コロされたキーサンナカマ」の「怨念」の問題や、プシ共闘の現在の問題、また私自身も当時関わった「反保安処分の大合唱(たいした「大合唱」ではなかったとも思いますが)」の問題等を十分に紹介出来なかったのが大変残念であるが、本著に掲載されているES体験者(35~39頁)の手記等、電気ショック肯定派の方には、ぜひお読みいただきたいと思う。
さて本著には、電気ショック療法にかぎらず、精神医療全般に対する多くの当事者団体、活動家の生の声も掲載されている、ぜひ一人でも多くの人に、一読といわず二読、三読を薦めたい。最初、前進友の会の持つ独特のトーンに多少の抵抗感を覚える人も少なくないかもしれないが、実は自分自身に突きつけられている問題だということに、やがて気がついていただけるのではないかと思う。

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