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障害者自立支援法について加藤みどりさんに聴く

編集部 木村朋子

 加藤みどりさんは、東京都立川市で24時間介護を受けて独り暮らしをされている、全盲、四肢体幹機能不全による車椅子利用の女性です。以前「おりふれ」のインタビューに応えて下さり、2003年12月号に迫力の語り、半生記を掲載しました(今回ホームページhttp://orifure-net.cocolog-nifty.com/ にもさかのぼって載せました)。今回、自立支援法(とその時代)をどう見るかの私たちの足場をはっきりさせていくためにも、お話を聞きに再びお宅をたずねました。

 まず、私たちが20歳代から30年かけて勝ち取ってきた介護保障が、自立支援法では上から与えられるものになり、内容も地域差をなくし全国一律という名の下に薄っぺらくされようとしているという言葉が強く印象に残りました。
 20代の時、施設を出て地域で生きていくために、必死で介護ボランティアを集めた。ボランティアが来ないとトイレにも行けず、ベッドにも移れなくて一晩中車椅子に座って明かしたこともある。「全国公的介護保障要求者組合」で生活保護の他人介護加算を勝ち取り、最初は1日4時間分にしかならなかったのを徐々に増額させ、ようやく立川で24時間介護の生活となり、だからと言ってその後も決して安泰ではなく、2003年1月の介護派遣時間上限撤廃闘争など、闘い続けて今の生活をつくってきている。それを、「国家予算がない」「全国平等に」という自立支援法では、毎月の介護時間の上限が125時間とか言われている。私は700時間ないと生きていけない。厚生労働省交渉で出てくる若い官僚は、今までの歴史、経緯も知らないし、重度障害者の生活も知らない。積み重ねてきたものが無効化され、また振り出しに戻るよう。もう一度30年前と同じようにやれと言われても、とても当時のエネルギーはない・・・
 「あなたが外へ出ることは社会の迷惑だし、あなた自身がみじめになることだ」と反対されて、でも施設から出た加藤さんのその後の人生は、施設長のこの言葉が真実ではない!と身を以て証明してきたものだと思います。支え合って地域で生きるということの意味を、最近では高校などに呼ばれて話しに行くとのこと。生徒の行儀のいい整然とした学校でも、ゴミが散らかり先生が注意してもすぐには聞かず授業中私語、出入りの多い学校でも、話せばちゃんと生徒個々の感想が返ってくる、そういうことを反映させる自立支援法でなければ、というのが加藤さんの思いです。
 地域で暮らして、いろんな人とつきあって、分かり合う場が増えなければ、自立も支援もない。自立支援法ではこれまでの移動介助がなくなり、重度訪問介護の中でやりくりするようになるので、時間数も減って単価も下がる。私みたいな重度の人は社会参加、余暇活動はできなくなる。障害者のくせに、障害者だから我慢してと、過去言われ続けてきたが、障害者は一歩下がって当たり前というのは絶対おかしい。目の見えない人が1人で移動出来ること、そのように訓練することが良しとされるが、隣で寄り添ってくれる人がいれば安心して、今まで気づかなかったことに気づいたり別の豊かさが生まれるかもしれない、と加藤さんは言われますが、それは隣で寄り添う人にとっても同様のことでしょう。

 精神障害の長期入院の人が退院して地域に帰ってくるのも、数値目標をあげてこの法で推進出来るように言われてはいるものの、ますます難しくなるのではないかということも危惧しておられました。長期の施設入所者が社会に出る時と同様、多様できめ細かなサポートがいるし、地域の人とつながっていくことがなければそれはできない。しかし生活支援センターの機能は縮小されるようだし、通所の場も「就労」一辺倒(就労にしても、これだけ言うからには、やる気はあるが波がある・疲れやすく休憩時間が小刻みにたくさん必要など、今まで働けないと言われてきた人に、多様・多種類の働き方が保障されてしかるべきと思いますが)。

 加藤さんは、「立川市在宅障害者の保障を考える会」のメンバーとして、立川市とも話し合い、要求を続けています。立川市について、これまで頑張ってきたと思うし、進んだ制度をもつモデル地域は必要と思う。しかし今回の自立支援法で、全国一律のかけ声の下、他は1日20時間でやれているのだから24時間は必要ないのじゃないかと考えるとしたら大間違い、と先進的に取り組んできた自治体の後退も危惧されています。障害程度とサービスの必要度を認定する審査会に、委員として障害の当事者を入れるべきという要望にも、「検討中」ということで回答を延期され、その期日にたずねると、「実はもう決まっていた。これから当事者を入れるのは無理」と、不誠実な態度に憤っておられました。一方さまざまな障害者団体が集まり自立支援法について問題提起のイベントを行うとともに、立川市に要求することを出し合って近く市長に手渡す予定とのこと。今の危機的状況に、障害者が一体となって取り組んでいかなければ、というのが加藤さんの強い思いでした。
太字部分が加藤さんのお話です)

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