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障害者自立支援法とグループホーム

NPO東淀川ふれあい市民の会 二條紀彦

 生活の実態を踏まえていないとの各方面からの批判を他所に、「障害者自立支援法(以下支援法)」は十分な審議を尽くさないまま成立した。「私たちの声を聞いてください」との切実な障害当事者の声は聞いたふりをするポーズだけでほとんど法案の内容には反映されなかった。来年4月1日に施行を前に具体的な実施内容を決める厚生労働省が権限を持つ政令や省令の動向をみながら、グループホーム(GH)はどうなっていくのか、どうして行けばよいのかを考えてみたい。
私の属する法人では大阪市東淀川区(人口約18万人)内に現在3か所のGH(それぞれ4人定員)を運営しており、常勤職員3人と、非常勤職員1人が勤務している。国基準の補助金と大阪市の上乗せ補助で定員を満たしていれば1か所年間約530万円の補助金が入ることになるが、現在定員は満たしておらず、運営は安定しないのが現状である。
 まず、施行の予定は2006年10月からはケアホーム(共同生活介護;介護給付)が導入され新しい体系に移行することとなる。また、4月から9月の間は現行のGHの入居者に原則1割の負担と日額制(1ヶ月のうちに何日GHを利用したかによる報酬支払い)が導入される。
1) 障害程度区分による振るいわけ
 申請による障害程度区分の認定は介護保険と同様の6つの区分となることが有力だが、
ケアホーム(CH)で3つのタイプ(夜勤対応、準夜勤対応、夜勤なし)、GH(共同生活援助;訓練等給付)の4つの類型になる。一人でもCH対象者がいれば、運営する法人の現在のGHはケアホームとなれる。CH対象者は要介護○以上、夜勤なしは○○歳以上の要支援も含むことになっているが、○がどうなるかはまだ示されていない。GHの利用希望者は原則対象となる(訓練等給付)ので、申請すれば現在の入居者はそのまま利用継続はできる。ただし、精神では要介護に該当する人はほとんどいないと考えられ、当法人でも介護保険利用者以外は該当しないと考えている。要支援(夜勤なし)とあるのは精神の福祉ホームB型などが移行できるように想定したものではないかと考えている。
 ただし、GHとしてスタートすれば、後でCH対象となる人が入居してもその人は介護給付の対象とはならないと考えられる。
2)入居者の定員
従来の1か所のGHという算定の考え方が変更される。事業者(法人)単位で算定することとなるのである。当法人の3つのGHはそれぞれ独立したものでなく、3つあわせて1つという捉え方になるわけである。原則は個室で、住宅1か所に2人以上、複数の住宅で5人以上が最低単位となる。つまり、いくつかの住居を総計して法人単位で認定される仕組みとなるということである。家賃と報酬の問題がなければ、現行での定員を満たす努力は必要でなくなるが、現在入居している人の居住の権利を守るならば引っ越しなどはできることではない。援護寮や入所授産施設、福祉ホームも5年間の経過措置があるとはいえ、居住の分はCHかGHに移行することになる。この場合も含めて集合型は4人から7人単位のユニットが構想されており、例えば20人定員の援護寮であれば、3つのユニットに分けて運営することになる。また、入居定員が9人の場合2つのユニットに分けて、共用部分は共通でも可となる。当初はCHとGHをはっきり分けることが考えられていたが、重度の人も中軽度の人も一緒に暮らす良さが失われること、引っ越しを強要することになるとの批判で撤回された経過がある。社会福祉法の規定では事業は5人以上とあることに対応した策と考えられるが、大阪市内でも多い4人定員のGH1か所で運営しているところは外れる問題があり、またサテライトタイプは住宅1か所となりうるのかといった問題が指摘されているところである。
3)職員の配置
4つそれぞれのタイプで○人に1人の職員で複数の住居を担当可能としているが、精神の場合入居者9人に1人の配置で可能との意見もあり、大幅に水準が下がる危険性がある。
また、朝・夕方、夜間別に入居者○人に1人の職員の基準(外部委託も可能)が検討されており、職員の質の低下や朝・夕方、夜間別の区分けで現状より職員実数を増やすことが可能か疑問となる。さらに、○○人に1人の管理責任者を置き(都道府県単位で○日程度の研修を行う)、個別の支援プログラムの策定が義務づけられるようである。
 これまで支援の目標などは大阪市と協議して上乗せ分の内容として作ってきているが、あくまで現場の支援内容から組み立てたものであり、今後は細かく管理的なプログラムが要求される可能性も高いと言える。
4)ホームヘルプの利用
入居者1人あたりの単価の報酬額を使って、外部委託(事業者が契約)で利用可能となるが、精神では介護給付該当者がどれだけいるのかという問題があり、大阪では特段の理由がない限り本人のニーズがあってもほぼ利用が出来ない現状がそのまま続く可能性が高いと言える。
5)事業費の単価
居住者の障害程度に応じて支払われ、利用人数×一人当たり単価となり、現行の月額単価から日額単価に変更される。管理責任者も単価に算定されるが、実質的には単価の切り下げの可能性が高い。精神の場合、2,3日の入院も出来ないことになるし、入院中は対象とならないとなれば安心して住む権利が侵害されることになる。また、土、日職員が出勤して対応しなければその分が切り下げとなることになる。
6)現行のGHの自己負担
2006年4月から実施され、日額制が導入され、1割負担額は月額6600円に想定されている。<預貯金などの資産額350万円以下>の人には個別減免制度が設けられ、
1)66000円(年金2級のみなど)以下・・・0円(生活保護も)
2)66000円以上(年金、工賃など)・・・6600円-3000円+(総収入-66000円)×0.15を上限とする
3)66000円以上(仕送りなど)・・・(総収入-66000円)×0.5を上限とする
<預貯金などの資産額350万円以上>・・・個別減免なし
というように予定されていて、自治体向けに計算ソフトの試行版も配布されている。
当法人では自己負担が発生する人が現在2,3人考えられるが、負担なしにする予定で考えている。4月から9月までは「みなし支給」で、10月からは障害程度区分に沿った支給決定となり、入居者個別の申請や所得調査などへの対応が求められることになる。
また、事務的に最大の問題は毎月請求事務をしなければ運営費用が入ってこないことである。
これまで、おおまかに問題点をあげてきたが、厚生労働省が求めているものは「事業者」
の感覚であって、利用者の生活を豊かにすることではないことが明らかである。「契約」という美名の下に、今回精神障害はいわば“だし”に使われているといわざるを得ない。
 こうした状況に立ち向かっていくには、少なくとも現状の水準を後退させないように障害種別を超えたネットワークの力が必要である。また、場としてGHを確保するというだけではなく、そこに暮らす人の生活の質をどう高め、地域で安心して暮らせる場所とする実践の質が求められているのではないだろうか。
まだ、細部にわたって支援法の内容の検討と具体的な対応の練り上げが出来ているとはいえないが、「安上がりのグループホーム」のねらいに屈することなく、生活の豊かさを追求する原点を固めながら、グループホームの質量共の拡大のために微力ながら力を注いでいきたい。

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