« 2005年10月 | トップページ | 2005年12月 »

障害者自立支援法とグループホーム

NPO東淀川ふれあい市民の会 二條紀彦

 生活の実態を踏まえていないとの各方面からの批判を他所に、「障害者自立支援法(以下支援法)」は十分な審議を尽くさないまま成立した。「私たちの声を聞いてください」との切実な障害当事者の声は聞いたふりをするポーズだけでほとんど法案の内容には反映されなかった。来年4月1日に施行を前に具体的な実施内容を決める厚生労働省が権限を持つ政令や省令の動向をみながら、グループホーム(GH)はどうなっていくのか、どうして行けばよいのかを考えてみたい。
私の属する法人では大阪市東淀川区(人口約18万人)内に現在3か所のGH(それぞれ4人定員)を運営しており、常勤職員3人と、非常勤職員1人が勤務している。国基準の補助金と大阪市の上乗せ補助で定員を満たしていれば1か所年間約530万円の補助金が入ることになるが、現在定員は満たしておらず、運営は安定しないのが現状である。
 まず、施行の予定は2006年10月からはケアホーム(共同生活介護;介護給付)が導入され新しい体系に移行することとなる。また、4月から9月の間は現行のGHの入居者に原則1割の負担と日額制(1ヶ月のうちに何日GHを利用したかによる報酬支払い)が導入される。
1) 障害程度区分による振るいわけ
 申請による障害程度区分の認定は介護保険と同様の6つの区分となることが有力だが、
ケアホーム(CH)で3つのタイプ(夜勤対応、準夜勤対応、夜勤なし)、GH(共同生活援助;訓練等給付)の4つの類型になる。一人でもCH対象者がいれば、運営する法人の現在のGHはケアホームとなれる。CH対象者は要介護○以上、夜勤なしは○○歳以上の要支援も含むことになっているが、○がどうなるかはまだ示されていない。GHの利用希望者は原則対象となる(訓練等給付)ので、申請すれば現在の入居者はそのまま利用継続はできる。ただし、精神では要介護に該当する人はほとんどいないと考えられ、当法人でも介護保険利用者以外は該当しないと考えている。要支援(夜勤なし)とあるのは精神の福祉ホームB型などが移行できるように想定したものではないかと考えている。
 ただし、GHとしてスタートすれば、後でCH対象となる人が入居してもその人は介護給付の対象とはならないと考えられる。
2)入居者の定員
従来の1か所のGHという算定の考え方が変更される。事業者(法人)単位で算定することとなるのである。当法人の3つのGHはそれぞれ独立したものでなく、3つあわせて1つという捉え方になるわけである。原則は個室で、住宅1か所に2人以上、複数の住宅で5人以上が最低単位となる。つまり、いくつかの住居を総計して法人単位で認定される仕組みとなるということである。家賃と報酬の問題がなければ、現行での定員を満たす努力は必要でなくなるが、現在入居している人の居住の権利を守るならば引っ越しなどはできることではない。援護寮や入所授産施設、福祉ホームも5年間の経過措置があるとはいえ、居住の分はCHかGHに移行することになる。この場合も含めて集合型は4人から7人単位のユニットが構想されており、例えば20人定員の援護寮であれば、3つのユニットに分けて運営することになる。また、入居定員が9人の場合2つのユニットに分けて、共用部分は共通でも可となる。当初はCHとGHをはっきり分けることが考えられていたが、重度の人も中軽度の人も一緒に暮らす良さが失われること、引っ越しを強要することになるとの批判で撤回された経過がある。社会福祉法の規定では事業は5人以上とあることに対応した策と考えられるが、大阪市内でも多い4人定員のGH1か所で運営しているところは外れる問題があり、またサテライトタイプは住宅1か所となりうるのかといった問題が指摘されているところである。
3)職員の配置
4つそれぞれのタイプで○人に1人の職員で複数の住居を担当可能としているが、精神の場合入居者9人に1人の配置で可能との意見もあり、大幅に水準が下がる危険性がある。
また、朝・夕方、夜間別に入居者○人に1人の職員の基準(外部委託も可能)が検討されており、職員の質の低下や朝・夕方、夜間別の区分けで現状より職員実数を増やすことが可能か疑問となる。さらに、○○人に1人の管理責任者を置き(都道府県単位で○日程度の研修を行う)、個別の支援プログラムの策定が義務づけられるようである。
 これまで支援の目標などは大阪市と協議して上乗せ分の内容として作ってきているが、あくまで現場の支援内容から組み立てたものであり、今後は細かく管理的なプログラムが要求される可能性も高いと言える。
4)ホームヘルプの利用
入居者1人あたりの単価の報酬額を使って、外部委託(事業者が契約)で利用可能となるが、精神では介護給付該当者がどれだけいるのかという問題があり、大阪では特段の理由がない限り本人のニーズがあってもほぼ利用が出来ない現状がそのまま続く可能性が高いと言える。
5)事業費の単価
居住者の障害程度に応じて支払われ、利用人数×一人当たり単価となり、現行の月額単価から日額単価に変更される。管理責任者も単価に算定されるが、実質的には単価の切り下げの可能性が高い。精神の場合、2,3日の入院も出来ないことになるし、入院中は対象とならないとなれば安心して住む権利が侵害されることになる。また、土、日職員が出勤して対応しなければその分が切り下げとなることになる。
6)現行のGHの自己負担
2006年4月から実施され、日額制が導入され、1割負担額は月額6600円に想定されている。<預貯金などの資産額350万円以下>の人には個別減免制度が設けられ、
1)66000円(年金2級のみなど)以下・・・0円(生活保護も)
2)66000円以上(年金、工賃など)・・・6600円-3000円+(総収入-66000円)×0.15を上限とする
3)66000円以上(仕送りなど)・・・(総収入-66000円)×0.5を上限とする
<預貯金などの資産額350万円以上>・・・個別減免なし
というように予定されていて、自治体向けに計算ソフトの試行版も配布されている。
当法人では自己負担が発生する人が現在2,3人考えられるが、負担なしにする予定で考えている。4月から9月までは「みなし支給」で、10月からは障害程度区分に沿った支給決定となり、入居者個別の申請や所得調査などへの対応が求められることになる。
また、事務的に最大の問題は毎月請求事務をしなければ運営費用が入ってこないことである。
これまで、おおまかに問題点をあげてきたが、厚生労働省が求めているものは「事業者」
の感覚であって、利用者の生活を豊かにすることではないことが明らかである。「契約」という美名の下に、今回精神障害はいわば“だし”に使われているといわざるを得ない。
 こうした状況に立ち向かっていくには、少なくとも現状の水準を後退させないように障害種別を超えたネットワークの力が必要である。また、場としてGHを確保するというだけではなく、そこに暮らす人の生活の質をどう高め、地域で安心して暮らせる場所とする実践の質が求められているのではないだろうか。
まだ、細部にわたって支援法の内容の検討と具体的な対応の練り上げが出来ているとはいえないが、「安上がりのグループホーム」のねらいに屈することなく、生活の豊かさを追求する原点を固めながら、グループホームの質量共の拡大のために微力ながら力を注いでいきたい。

| | トラックバック (0)

公営住宅に知的、精神障害者も単身入居が可能になります

東京精神医療人権センター  小林 信子

かつて欠格条項見直しの過程で公営住宅法施行6条が改正され、一足先に身体障害者は”必要な介助を得る事が出来るなら”と単身入居枠を認められた。これは2000年5月から施行されている。
 しかし実際に各自治体では、決してうまく運用されているわけではなく、法改正前の発想で利用者を閉め出している現実がある。そこで去る25日、自立生活センターやDPI、欠格条項をなくす会などの代表者の後ろに隠れて、郡和子民主党議員の仲介で国土交通省の担当者との話し合いに出席してきた。
私はまとまった知識がないので細かい事はよくわからないが、社会復帰には何よりも住居確保が不可欠で、まずは公営住居に精神障害者の単身者枠が確保されることはともかく朗報である。12月2日に交付され、来年の2月1日に施行となる。精神障害区分では1級から3級までが該当し、手帳の所持・不所持は関係なし。ただ、「自活」が出来るということを誰がどのように証明するのかという問題があり、これは国交省が厚労省と話し合っているとのこと。精神科医は医療の連携や障害認定は出来るかもしれないが、その人が「自活」出来るかどうかなど判定できないだろう。厚労省も医者やPSWがそれをするとは考えていないという。それは知的や精神障害障害者にとって「自活したい」と言う自発性を表明することがすばらしいことなので、緊急時や困った時に相談できるサポート体制が一応整えばOK・・というわけにはいかないのだろうか。かつて建設省は大家意識で「面倒な人は入居させない」という態度だったが、国交省は地方自治体の福祉部局と合同で推し進めていくという態度ではある。
 それに、郡議員の選挙区の宮城県がこれらの先駆的なケースを行っているので国としても踏み切ったらしい。何よりも来年10月施行の障害者自立支援法に「居住サポート」があるからだと担当者はいっていた。大阪の障害者が切り開いてきた道理にかなった入居者資格認定の申し立て書などを基本にするとは言っても楽観は禁物。まだまだ障害者の中で理解が得られていない精神障害者の日常生活は、市町村でも最もサポートシステムが整っていない部分であるし、地域差が甚だしい。市町村でどのくらいの「サポートシステムが整っているのか」を判定材料にするとき、民間団体や当事者団体ー例えばJILのようなーはそれらに該当するのかどうかは、国側から明確な返答はなかった。そして「自活」の定義も大問題だし、繰り返すが誰がそれを判定するのかという精神障害者にとっては根本的な大問題が控えていることも事実である。
 今後も国や障害者団体の動向に注意を払って少しでも快適な住居を、一つでも多く確保していきましょう。

| | トラックバック (0)

連載第6回「当事者職員」として働いてみて‥その後

久保田公子

○亡き母のことば
 昨年春、私の母は3年間の闘病の末、亡くなった。その母が生前、私が中・高生だった頃から幾度となく言っていたことばがある。「この世の中、誰一人として同じ人はいないんだからねえ、不思議なもんだ」。私はそのことばに何かを感じながらも「そういえばそうだなあ」くらいにしか受けとめていなかった。それが、このところようやく「本当にそうだなあ」としみじみ思うのである。そして、ウーマンリブを生きた田中美津氏の「大したことのない、かけがえのない私を生きる」ということばと重なり合って私の心に染みる。まさに人は誰一人として同じであることはなく、他者と比べることの出来ないかけがえのない存在なのだと。
 また同じく病いを抱えていても、そこへ至る過程も回復していく過程もそれぞれ違っており、専門的知識や自分の経験だけで「分かったつもり」になることは、戒めなければならない。「当事者職員」といえども、である。だからこそ、繰り返しになるが人は互いにたやすくは分かり合えないこと(=限界・壁)を前提にした「距離」をもちつつ共感していこうとする姿勢が必要なのだと思う。

○ただただ関心を寄せるということ
 この頃、またよく思い出すことがもう一つある。作業所を開設した当初の頃、プログラムの一つとして小グループに分かれて自分のこれまでの体験・生活を話すという場をもった。そこでは、自然と職員も自分のことを語ることになった。何人かのメンバーが話した後、自分の番になった。私は緊張した。何しろそれまで勤めていた精神病院においては、院内誌(文集)に寄稿するぐらいしか職員である自分が自分を語ったり、さらけ出したりする場は殆どなかったのである。そんなわけで緊張していた私が、何とか語り続けることが出来たのは、専門学校を出て入職し20歳になったばかりのKさんが私に向けてくれた「目」があったからである。その「目」は、私に「関心を寄せてくれている」、力をもった目であった。それは興味本位の「関心」では無論なく、医療・福祉の従事者、支援する側が陥りがちな相手を観察したり把握しようとするような「関心」でもない。「ただただその人に関心を寄せる」とでも表現したらいいのだろうか。人はそのような姿勢に支えられ、自らを語ることを通して力を出していくことが出来るのではないだろうか。(つづく)

| | トラックバック (0)

編集部だよりー読者のお手紙から

自立支援法について、東京都内で精神病院の医療事務に就いているという読者から、次のような所感が寄せられました。
「・・・8月8日の衆議院解散翌日の朝刊で「自立支援法も廃案」の見出しを発見した時はどんなにうれしかったことか。ところが再提案・可決のどんでん返し。我々精神医療事務に就くものとしては安穏としていられない。これまでの32条の申請方法の変更には、我々、そして患者、その家族を含め皆、振り回され続けてきた。非課税証明書を添付しろだの、保険証や医療証の写しが必要だの、5%助成の受給開始日は市によって異なっていたり・・・例を挙げればきりがない。ここのところ、ようやく手続き方法も落ち着いてきたかと思いきや、自立支援法の成立である。業務上大混乱の予感を隠しきれない・・・」
 この間の、特に東京都内での32条の手続き変更、複雑化と混乱はひどいものがありました。手続きが理解できなかったり、期限等にうまくできず自己負担を強いられたりする例もありました。手続きのバリアフリー=誰にもわかりやすく簡素であることも、障害者の「自立支援」にとっても、また無駄な官僚的事務作業や経費を減らす意味でも、必要なポイントと思います。(編集部 木村)

| | トラックバック (0)

もやい特別講座に参加して ~生活保護について~

柏木診療所 岩田 邦生

 初めに、自立生活サポートセンター・もやいとは、野宿者を始めとする生活困窮者に対して、アパート入居時に必要な連帯保証人の提供をしたり、入居後の生活支援や地域生活への復帰をサポートしているところです。
 私がこの講座に参加しようと思った理由の1つとしては、生活保護を取得するにあたってどこをポイントにして福祉事務所と交渉すれば良いのかを、もやいのスタッフがロールプレイで解説してくれるという講義があったのです。ケースワーカーとしての経験が浅い私にとって、福祉事務所の職員が生活保護の申請をしてくる人にどんな対応をしているのかを知る絶好の機会だと思ったからです。
 まず、生活保護を受けたいといっても誰でも簡単に生活保護を受けられるとは思っていませんが、まともに話しすら聞いてもらえずに帰されてしまうケースが多数あるというのには正直驚きました。例えば、1万人が生活保護の相談をするために福祉事務所に行ったとします。その相談者のうち、1000人が申請書をもらえて、残りの9000人は申請書をもらえずに帰されてしまうというのです。そのときに福祉事務所の人が相談者に対して言うことが、『65歳以下だから生活保護は受けられない。』『あなたの手持ちのお金がすべてなくなったらもう一度相談に来て下さい。』『死にもの狂いで頑張って仕事を探せば、絶対に仕事は見つかるから!』などと言って帰してしまうそうです。私はこの話しを聞いたときに正直言葉が出てきませんでした。仕事をしたい気持ちは十分あるけれど、年齢でひっかかってしまい、職に就けない人たちがたくさんいます。たとえ健康に見えていても、病気で働けない人だっています。お金がなくなったらまた来て下さいと言われても、福祉事務所に行くまでの交通費はどうなるのでしょうか?誰もが簡単に生活保護を受けられるというわけではありませんが、福祉事務所に相談をしに行くということは、何かしら生活をしていくのに困っているからだと思います。覚悟を決めて福祉事務所に行く人たちをあっさりと帰してしまうことがあっていいのでしょうか。もちろん福祉事務所の職員すべてがそういう人ではないというのもわかっています。ケースワーカーの人数が少なく、一人のケースワーカーが担当している生活保護受給者の人数も多いことで、職員側に余裕がないという問題もあるでしょう。ただ、相談を受ける側として『困っている人たちの話しを聞く』ということは、どんな事情があったとしても簡単にすませてはいけないと思います。
 さて、ここで少し話が変わりますが、この講座の中で生活保護申請のときのポイントとして説明していたところをお伝えします。
 まずはとにかく福祉事務所の人にお話しを聞いてもらい、申請書をもらうことが始まりですが、何度行ってもお話しを聞いてもらえなかったり、なかなか申請書をもらうことができなかった場合、手作りの申請書を置いてくるだけでも福祉事務所側の反応が変わってくるそうです。それと、相談をしに行く時に一緒に同行してくれる人(信頼出来る人)がいれば、ついて来てもらうだけでも効果があるそうです。詳しくは、もやいの事務局長をされている、湯浅 誠さんが書いた『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』という本を参考にされると良いかもしれません。生活保護を申請するまでの段階から、生活保護を受給した後のことまでわかりやすく説明されているのでお勧めです。
 最後に、私はこの講座に参加して『人の話しを聞く』という基本的なことかもしれませんが、その重要さを改めて考えさせられました。自分が患者さんに接するときの態度はどうだろうか?と振り返ると、やはり反省するべきことがたくさんあります。私も自分の余裕の無さによって相手の話しを短く切り上げてしまったり、ピリピリとした空間を作って話しづらい雰囲気にしてしまったりと…。これでは相談する側の人にとっては、自分が言いたいことも言えなくなってしまいます。
私は、これから先も仕事をしていく中で、自分の発言や態度について振り返ることや相手の立場にたって考えること、そして、なるべく心に余裕を持って接するということを忘れないで頑張っていきたいと思います。

| | トラックバック (0)

英国マインドのホームページhttp://www.mind.org.ukから

http://www.mind.org.uk
マインド調査報告
高齢者への深刻なネグレクト(無視・放置)を告発! 
2005.10.10 ワールド・メンタルヘルス・デイに寄せて

<要点・利用できるサービスの年齢制限・治療の選択肢のなさ・地域の家庭医による年齢差別、薬の情報提供を含む・自殺率の高さにもかかわらず(自殺者の1/3は55才以上)、何らの予防策が採られていない・電気けいれん療法の多用>

サービス利用:最近では65才になると、施策上「稼働年齢の成人」から「高齢者」へ位置づけが変わり、利用できる精神保健サービスの範囲が制限されるようになる。これは行政が予算上の制約をつけているためで、たとえば「政府精神疾患特定基金」は稼働年齢対象のサービス開発のみに資金提供することになっている。それでこの基金によって運営されているデイセンターなどを利用するメンバーは、65才に達するやいなや、出ていかねばならなくなるのである。

高い自殺率:政府は高齢者の自殺率について言及もしていない。75歳以上では、6%の人しか家庭医から自殺について問われていないようだが、1/5の人は気分の落ち込みについて質問されており、1/3は精神科医に紹介されている。

治療の選択:調査への回答では、治療の選択肢の狭さの訴えが目立つ。とりわけ話しをする治療は待機者が多いという理由で。また精神療法や認知行動療法、運動療法や針治療などは、高齢者には有効性が低いという理由で受けられないことがしばしばである。「薬をのむこと以外の治療法は、何も言ってくれない」というのがよく聞く不満である。

薬による治療:調査は、マインドがこの間行ってきた薬とその副作用についての情報提供の重要性をアピールするキャンペーンの正しさを裏付けた。とりわけ、高齢者は、前記のように薬の服用以外の治療の選択肢がほとんどない状況なのでなおさらである。私達の調査では、38%が治療について十分な情報を与えられていない、40%が治療の選択肢について十分相談できていないと感じている。加えて王立薬学会の調査では、高齢者の半数が処方どおりに服薬していないとのことである。また高齢者は、新しいSSRIより古いタイプの三環系抗うつ剤を処方される傾向にあり、最近の分析では三環系抗うつ剤が処方される場合、適量を処方されているのは65歳以上の人の43%のみという結果も明らかになった。

電気けいれん療法:2002年の調査では、65才以上の人々への電気けいれん療法の使用は、他のいかなる年齢グループへの使用より2倍は多く、そのことへの納得できる理由の説明もない。記憶喪失など深刻な副作用も起こすこの異論の多い治療法は、高齢者には特に心臓への負担となる危険性があるにもかかわらずである。

診断ミス:老年期の精神保健問題の増加、老齢人口の増加は周知の事実である。しかし高齢者の精神保健問題は医師や病院スタッフに見過ごされ、精神科医の診察を受けることもまれという深刻な問題がある。65才以降、6人に1人が医療を要するうつ状態に陥り、これはケアホーム居住者の40%に当たる。認知症は65才以上の20人に1人、80才以上では5人に1人が発症する。今後10年で65才以上人口は15%、85才以上人口は27%増加すると予測されている。

キャンペーンを!:このレポートは、マインドの新しいキャンペーンを導き出す。国政、プライマリ・ケア・トラスト、自治体行政等々が一体となって、高齢者がその他の人々と同様のレベル、質の医療とケアが受けられるよう保障せねばならない。マインド事務局長のリチャード・ブルックは、「調査は、社会的に弱い立場に置かれしばしば孤立しがちな人々に対する、恥ずべきネグレクトを明らかにした。65才になると同時に突如それまでのサービスや治療が取り上げられることは、多くの人にとって打撃となるに違いない。この不公正な差別は撤廃されねばならない」と語った。家庭医の中には高齢の人々に優れたサポートを提供している人々もいる。しかし多くの医療保健専門職には、増加する高齢者の精神保健問題を見分け対応するためのトレーニングが未だ欠けたままである。肝心なことは、高齢者にとっても他の人々と同様、治療の選択は、たまたまの幸運ではなく権利であるべきだということである。 (要約 編集部木村)

| | トラックバック (0)

« 2005年10月 | トップページ | 2005年12月 »