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医療観察法関連の出来事―2題

東京精神医療人権センター  小林信子

 大きな反対運動が繰り広げられ、収容施設も整わないまま、7月15日ついに「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法と略す)が見切り施行されてしまった。かなり時間がずれてしまったが、医療観察法に関連する出来事を2つ報告する。

1)国立武蔵病院・第8病棟外部評価委員会について
 「センター」の小林はこの委員に委嘱されました。かねてから国立武蔵病院の医療観察法の病棟スタッフからその旨の打診があり、「センター」事務局会議で承認された後、人権擁護のために受諾しました。「センター」も私個人もこの法律には反対してきて、その考えは変わりませんが、法が施行された以上収容者の人権擁護は必要である、その機会は逃すべきではないと考えたのです。法の不備で廃案にも・・・という期待もなくなり、覚悟を決めたのでした。9月になれば病棟に対象者の収容が始まるので、8月31日、急遽第1回の会議がメンバー顔合わせを目的として、開催されたわけです。
 国立精神・神経センター武蔵病院8病棟(これが正式名称)は、法には制定されてはいないが独自に?外部評価会議規定を設け、その目的は「8病棟の運営状況や治療内容に関する情報公開を行い、その評価を受ける事で新病棟運営の透明性及び医療の質を確保し、もって円滑な病棟運営を行なうこと」である。構成員は、院長や運営局長(総務部長?級)、他病棟の医師1名、8病棟の担当医3人と看護師長、司法研究所長という“内部”委員に加え、保健所と小平市健康福祉部長という自治体関係者(これは半内部に分類されている)、外部から精神医学の専門家1名(中部センター長)、法律関係者1名(池原弁護士)、精神保健福祉関係者1名(小林らしい・・)となっている。私は外部委員のそのまた外部のようだし、委員会も基本的に年2回の開催を予定しているだけとのこと。これでは、何をチェックできるかわからないので、池原弁護士と協働して、できるだけ病棟内部に入って患者さんの相談及び権利擁護活動をする事を病院に申し入れた結果快く受け入れられた。私は「センター」として、池原弁護士と共に月2回、一緒に出張相談をする事にした。この活動を、一般の精神病院へも拡大していくぞ!という野心もあるし・・・。
 検察は措置入院という制度があることを忘れたかのように、全治1週間の怪我など、軽い傷害事件でもどんどんこの法律を適用している。一方で、審判の実態もわからず、国立武蔵病院が開棟第1号なので(花巻病院が10月始動した)、10床の急性期ウイングはすぐに満床になってしまうだろう。現在は、意識が高く手厚いスタッフと環境のよい病棟で、患者の権利も保障されている8病棟だが、問題は退院審判と退院後の処遇だろう。再犯予測だの何のというより、「センター」の経験から見て、地域社会の厳しさと資源の欠如が退院を困難にしているという精神保健福祉法の現実を踏襲するようになるのではないかと私は悲観的な見方をしている。

2)第1回社会保障審議会医療観察法部会傍聴
 医療観察法第95条では、処遇改善請求ができる事になっていて、96条では、その「処遇改善請求の審査」は社会保障審議会が行なうことになっている。というわけで、社会保障審議会の専門部会とでも言うべき医療観察部会が先日泥縄式に制定され、さる9月21日に第1回部会が開催された。厚労省はかなり防衛的になっていて、この開催日をネット上で知らせた翌日には「傍聴は一杯になって締め切り」となっていたが、実際はガラガラだった。構成メンバーは5人、法律家2人はこの法に賛成した大学教授2人(辻伸行氏・岩井よし子氏)と、社会福祉関係はPSWの教授の寺谷隆子氏、医者2人も大学教授(高橋清久氏・山内俊雄氏)という優雅な?メンバーである。行政が「精神医療審査会をお考え下されば・・・」と説明していたが、メンバーは審査会の内容もよく知らなかった。医療委員が2人で、学者の法律家を2名にして審査会とは違いを持たせた小細工が目立った。いろいろなことが不明瞭なまま、行政からの説明と顔合わせで終わった歯がゆい部会だった。議論の中で、精神医療審査会と異なり入退院
はこの部会では取り扱わず、審判で行う事を確認したメンバーからホッとした?笑いがでていた。各自があまり任務を理解できていないように見えた。
 この部会に審査請求をする具体的連絡方法―ダイアルインの番号―もその場では確認されなかったし、委員も質問もしなかった。またこの日、社会保障審議会は原則公開なので私達は傍聴出来たが、今後具体的な処遇改善の審議では、プライバシーの問題があるので非公開になると思われるが、そのことも話し合われなかった。また、医療観察法部会は目下この一斑のメンバーだけで、対象となる入院施設の一つは国立武蔵病院だが、医療委員でこの部会長も兼ねる高橋清久氏は、武蔵病院のOBで名誉総長である。当事者の排除という規定はないのだろうか。
 「きれいな病棟だし、スタッフは厚いし、まだたくさんの患者が入院しているわけではないから・・・」と、処遇改善申し立ては当分来ないでしょう・・・という“お飾り”的雰囲気で終わった部会だった。拘禁的な法律の中だからこそ処遇改善を保障するという緊張感が全く欠如した、先行き心配の多い医療観察法部会の初回だった。
 今後も、それぞれの立場でこの法律を監視してゆきましょう。

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