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斎藤病院が弁護人を面会拒否―風化している現場の人権意識―

東京精神医療人権センター 小林信子

 東京都内には、今日でも医者が代理人の弁護士を患者に面会許可しない病院がまだありました。同類の病院はまだあるのでしょうか。
始まりは3月下旬。いつものように電話相談からの患者さんに面会しようと府中にある斎藤病院に出かけたところ、主治医による「医療上の理由」で面会拒否をされたのだ。この病院は日精協の会長もしたことがある斎藤茂太氏が名誉理事長で、“有名”病院である。しかし、入院者から「人権センター」への電話は初めてだったのでリキを入れて出向いたのだった。
弁護士なら面会は保証されているので、相談者の患者さんと直接連絡を取ったうえで、2週間後に永野弁護士と共に再訪した。また待合室で40分ほど待たされ、今回は「保護者の同意がないと面会は不可」という時代錯誤の理由での拒否だった。医者と弁護士の押し問答の末「センター」は、法解釈に都の担当者の見解を求めたが、これが混乱に拍車をかけた。この間都の機構改革で精神病院を含むすべての病院の入退院の苦情や立ち入り検査は医療安全課という課が担当している。その担当者は、「通信は絶対制限できないが、面会は時によっては制限することもある・・・」というお粗末な応答で、病院側は勢いづいた。1988年4月8日厚生省告示第128号の第3項には、《都道府県及び地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員並びに患者の代理人である弁護士及び患者又は保護者の依頼により患者の代理人になろうとする弁護士との面会の制限》は「どのような場合でも行うことの出来ない行動制限」の事項として記載されている。事務局会議でことの深刻さが確認され、都の医療安全課への申し入れを決定し、5月23日に永野、内藤両弁護士と共に出向いた。事実経過確認のあと、都医療安全課としての対処は、4月12日と4月26日に病院に対して事情聴取を行い、そのときに病院側が日精協の資料について言及したので、日精協へも事情聴取を行ったとのこと。その上で、「5月12日における都側からの永野弁護士に対する通信・面会に関する電話回答は誤りであった」「保護者同意がなければ面会させないということも法的に不適切である」そして、「いかなる場合も弁護士や代理人になろうとする弁護士と患者の面会は制限してはならないものである」と確認した上で、謝罪があった。
 「センター」は特に入院中の患者さんの法的権利擁護を主として行う団体であり、今回の出来事を深刻にとらえている。かつての報徳会宇都宮病院事件をきっかけに精神保健法へと改正された現場に、「センター」の内藤・永野の両弁護士は直接関わっており、当時厚生省で立法に携わった小林秀資課長から、通信・面会に関する法律家の関わりをきちんと確認してきた経緯がある。刑事事件と同様で、弁護士との面会は決して制限されないということは確認されている。これは現在も当然変わっていない。最近は世代交代などで現場や行政も弛緩してきて、法の基本理念がともすれば忘れられがちになっていることに大きな危機感を持ったことを伝えた。都はそれらを承知し、今後は齋藤病院に対して指導を行うとした(罰則なし)。同時に、法の原点に注意を喚起する意味で都内の精神病院全体に注意文書を配布してもらいたいと要望した。
 後日、医療安全課の担当者からFAXで連絡があり、齋藤病院に指導を行ったとのこと。だが、齋藤病院は納得したのかどうかは不明だった。というのは、当日の面会拒否を正当化するために「代理人が面会要請を文書で行わなかった」という1988年の厚生省課長通知16号というものを後付理由として持ち出してきて、都としてもそれ以上何もいえなかったとのこと。こんな通知は「精神保健福祉法詳解」にも記載されていない。
 さて、気を取り直して5月下旬に今度は委任状を持参しての再訪問。またしても1時間ほど待たされた。理由は「主治医が患者と面談中」とのこと。その後、主治医に弁護士が呼び出され、主治医はその委任状の件を「都に確認するから待ってくれ」といわれさらに待つこと20分余。これは主治医が面会に納得していないということだろう。都は何を指導したのだろうか。
そして、やっと依頼人と面会することができた。「今日の主治医との面談は、予定されてはいなかった」とは依頼者の説明。この依頼者も「センターなどに連絡すると退院が遅くなる」と主治医から言われて動揺した時期もあったが、ともかくも本人の頑張りで面会はやっと実現できた。が、その要望―退院に即答えられるかどうかは、また別のこと、という現実に直面している。
 人権意識などは常に監視していなければ、すぐに19世紀にもどってしまうのだ。監視団体の必要性を改めて痛感した。

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