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精神保健福祉法改訂について

編集部 木村朋子

 障害者自立支援法の国会審議が始まった。「応益負担」、「障害程度と必要なサービス基準」の設定と、その基準に当てはめる「審査」、審査結果によって「訓練給付」される「自立訓練」や「就労」など、そういう発想に立つこと自体が間違いなのではないかという根本的問いがどこまで討論されるのか、されないのか・・・
 自立支援法により、精神保健福祉法の社会復帰施設についてと外来医療費公費負担(32条)の条文が削除になることは知られているが、それ以外にも改訂される部分があることに遅まきながら気づいた(厚労省がネット上に次々に繰り出す色つきの図表多数を含む膨大な資料はとても読み切れるものでなく、目くらましを浴びているような気分になってくる)。権利に関わることもあるので、この稿ではそれについて。
 精神医療審査会の1グループ5名の委員構成を、現行の精神保健指定医3名・法律家1名・その他1名から、医師2名以上・法律家1名以上・他1名以上と柔軟にする。(14条)これは歓迎すべき変更だが、国際法律家委員会の勧告にもあるように医師・法律家・その他各1名の計3名でよいと思う。
 厚労大臣・知事は改善命令に従わない精神病院を公表でき、改善しない病院に入院制限を命令した場合は公示しなければならない。(38条の7)現状では情報公開されてもほとんど墨塗り状態の立ち入り検査や実地指導の内容も公表してほしいものだ。
 知事は、前記改善命令・入院制限命令を受けた精神病院に入院中の任意入院者の症状等の報告を求めること、入院の要否について精神医療審査会の審査を求めることができる。(38条の2、3) 報告を求めることができる精神病院の範囲と任意入院者の基準は省令(年内に素案提示)で決めることになっている。名ばかりの「任意」入院にチェックが必要なことを認めた規定ではある。
 一定の要件を満たす病院で、医療保護入院、応急入院について、緊急やむを得ない場合、精神保健指定医以外の一定の要件を満たす医師の診察で、12時間に限って入院させられる。(33条の1、4) 夜間・休日当直医の指定医不足を乗り切る策だろうが、精神保健法成立時、指定医制度反対論に対して、あんなにも強制的医療を資格ある医師が行うことの必要性を強調したのに、現状に妥協して安易にゆるめてしまうことに危惧をおぼえる。特に応急入院を受ける指定病院まで指定医不在とは深刻な事態である。それでなくても精神保健法成立から時間が経ち、風化・逆戻りを表す事例が後を絶たない。最近でも都内の有力病院とされる斉藤病院で医師が保護者の不同意を理由に、患者の希望する弁護士との面会を拒否する事件が起こっている。指定医の質・量ともの養成策なしに認められる改訂ではない。
 前述の38条関連の改訂でも法定の最低基準さえ守らず、改善を命じられてもしない・できない病院の存在が明らかになっているわけで、これまでの数次にわたる法の手直しではどうにもならないところへ来ている。権利の問題はやはり条文づくりのみではだめで、院内の患者さんのそばで権利行使を手伝うマンパワーの配置がなくては実効性があがらない。おりしも「障害者虐待防止法」の議員立法化が論じられており、精神病院内での虐待と放置を見張る仕組みとして制定された米国のアドボカシー法的な性格を持たせたいものと思う。
 市町村の、これまでの精神障害者の福祉に関する相談に応じる努力義務が、義務にかわる。また都道府県同様、障害者相談窓口に精神保健福祉相談員を置くことができるようになる。(47、48条) 身近な自治体での福祉計画、相談、事業という一連の方向は全うなこと。各々が自分の地域でどれだけきちんと情報を得、物申していけるかが課題となることでもあるけれど。
 一方都道府県の地方精神保健福祉審議会の必置義務が、置くことができる規定に変わっている。他障害と統合、市町村中心となればそれほど必要なくなるものなのかどうなのか。しかし少なくとも精神病院について、都道府県行政が持つべき責任は大きく、今後どういう形で検討していくのがよいのかが課題。

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