« 投稿・グランドデザイン(案)先取り実態の大田区で暮らして | トップページ | 東京精神医療人権センターに寄せられた相談から »

病院調査に参加して

柏木診療所 看護師   中嶋 康子
 5年間の沈黙(?!)を破って、東京精神医療人権センター・東京地業研が病院調査をすることになり、私も調査員になった。調査の目的は、5年間の変化を相対的に見ること。調査員はそれぞれの病院を評価するのではなく、話をきちんと聞いてくることが課されている。私達より数段上を行く、病院管理者の話に巻き込まれないためのシミュレーションを交えた研修会も行われた。前回を上回る4人体制の調査員配置で、いよいよ調査開始だ。
 医療の現場から離れて早10年(2年前から出戻って医療職で働き始めたが)、病院調査は初めてなので病院をよく知っているとはいえない私だが、比較の対象がない方が見えやすい点も多いと思って参加した。10年以上前、病院の建物はどこもそれほど違わないように見えた。違いはそこのスタッフの働き様だったり、システムであったような気がする。けれど今、病院の違いは拡がっていた。いくつかの病院の中には、時代が止まってしまったような所もあって、「建物は戦前のではないか。」と反省会で話したこともあった(これは間違いで、1960年代のものだった)。そうかと思えば、病院のイメージを払拭するようなところもあった。絨毯の敷いてある廊下、木目調の家具が設置された部屋、暖かいトイレ、バリアフリー(これは病院なら当たり前なのかもしれないが)。調査する私達もつい、建物に目が奪われがちになる。「古い・汚い・閉鎖的」とつい精神病院をステレオタイプでまとめたくなってしまうが、それは違うということを教えられた。  
 建物だけでなく、対応してくれたスタッフもまたいろいろたっだ。「長期の患者さんの退院については医師が決定権を持っている。自分たちは・・・」「病院で自分の身の回りのこともできない人が、退院して生活できるとは思えない。」等々時代が戻っていくような説明をしてくれた人もいたが、全体としては、現状を率直に話し、将来的な展望を持った説明をしてくださった方が多かった。(これは、調査を受け入れてくれる病院の特徴といえるのかもしれない。)ただ、評判の良い病院であっても、地域の福祉施設との溝の深さを感じさせられた。医療からは地域の福祉が何をしているのかわからない。医療は悪で、福祉は善か?という話を聞いた。医療機関と特別な関係を持っていない福祉施設の多くは、医療の現場を知らない。そこから見える医療は、病気に対して絶対的な権限を持ち、必要とあれば強権を発動し地域から連れ去ってしまい、連絡もない。受診の話でも待ち時間の長さは聞くが、充分に話を聞いてもらっていると感じている人は極めて少ない。薬の調整を直接主治医に話せる人の少ないことにも驚かされる。医療機関の担当者と連絡を取ろうと思ってもなかなか話が通らない。等々、福祉の現場から見る医療は、地域と離れた存在に見える。
 今後さらに制度が変わっていく中で、医療と地域、医療と福祉の協力体制は重要になってくる。対立をあおるような考え方もあるようだが、病気を抱えた人が生活していくうえで、両者が対立していては豊かな生活を進めることは出来ないと思う。協力していくことは、一枚岩になることでも、どちらかが擦り寄っていくことでないことはもちろんだが、今のようにお互いのことを知らなさ過ぎることも問題だと思う。地域の人間は医療の現場に出向くこと、医療の事情を知ることを今よりももう少し積極的にやっていく必要があるだろう。医療の現場ももう少し、医療にかかっている人の地域の生活に関心を持つ必要があるだろうし、医療に関心のある人を受け入れる度量の広さを持ってもらえないだろうか。とりあえず、ボランティア団体の病院調査のようなところから・・

|

« 投稿・グランドデザイン(案)先取り実態の大田区で暮らして | トップページ | 東京精神医療人権センターに寄せられた相談から »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19973/2812537

この記事へのトラックバック一覧です: 病院調査に参加して:

« 投稿・グランドデザイン(案)先取り実態の大田区で暮らして | トップページ | 東京精神医療人権センターに寄せられた相談から »