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自由人権協会の「宅間被告人精神鑑定医のメディアへの発言と報道に関する提言」

 編集部の小林が理事を務める自由人権協会(基本的人権の擁護を目的とする市民団体)が、4月21日、表記の提言を出した。(全文は自由人権協会ホームページhttp://www.jclu.org参照)
 池田小学校事件の宅間被告を精神鑑定した精神科医が、2003年8月の判決直後からテレビ・新聞のインタビューに答え、鑑定内容や宅間被告の反応とそれに対する専門的所見を発言した件についてである。自由人権協会の問い合わせに対し、同鑑定医からマスコミへの発言の理由として、裁判所や宅間被告の同意は得ていないが、公開の法廷で証言済みで鑑定内容は事実上公開されており、判決も既に出ている、これまでも鑑定書が市販されたことがある、無関係な精神科医が推理でコメントするより鑑定人自身が発言する方が正確である等の回答があったという。
 自由人権協会は、回答に感謝しつつ、刑法にも定められた医師の守秘義務に照らして同鑑定医のマスコミへの発言、またマスコミ側の報道は許されることではないとして、以下の問題点を指摘、精神医学会とマスコミ団体への提言を行っている。
(1)精神鑑定医のマスコミへの発言 鑑定医が法廷で職業上知り得た秘密について証言できるのは、刑事訴訟法に基づいて許されていることで、即ち高度の必要性がある場合である。その必要性のない他の場所で同じことをするのは許されるはずがない。また公開の法廷で証言したと言っても、傍聴人数も限られ、録画・録音も許されていない状況で、外部に伝わる情報は傍聴人の個人的印象にすぎず、鑑定内容そのものが公開されたわけでなく、まして鑑定人の守秘義務が免責される理由にはならない。
(2)鑑定書の法廷外利用 確かに日本では鑑定書がほぼそのままの形で一般書籍として出回っているという事実がある。患者のプライバシーの権利が確立した欧米では、法精神科医や関連する専門家間で事例検討する場合にも、鑑定された本人に鑑定書と鑑定の様子を録画したビデオの利用許可を得ることになっているという。「学問的研究のため・・・」という名目で多くのことが許されると考える日本の専門家の倫理性の問題が、今回の発言の背景にあった。
(3)メディアの責任
 裁判の公開は、裁判の公正を確保するために憲法で保障されており、公開の趣旨は、一面国民の知る権利に応えるべく、報道の自由を保障している。しかし刑事訴訟における報道の自由が、被告人等の利益保護のためには制限されることがあるのは、憲法82条第2項(裁判官の全員一致で、公序良俗を害する虞があると決した場合には、公開しないで行うことができる)あるいは準備手続きの非公開、さらには規則によって写真撮影・録音が規制されていることに表れている。本件で、精神鑑定の内容に関わる報道によって、被告人のプライバシーが侵されたのみならず、鑑定医が守秘義務違反を問われかねない事態となったことを、メディアは厳粛に受け止めるべきである。 そして、提言として、
(1)鑑定医による法定手続き外の鑑定内容の開示、鑑定医の発言を直接報道することは現につつしむべきである。
(2)精神神経学会は、鑑定医の守秘義務内容と保持手続きについて、早急に自主的基準を作るべきである。
(3)メディアは鑑定医の守秘義務に配慮した取材を行うために、早急に自主的基準を作るべきである。 (要約の文責 木村朋子)

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