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WFMHメルボルン大会報告 ーもう一つの「先進国」オーストラリアの発見ー

 一
 一昨年七月のWFMHヴァンクーヴァー大会、昨年八月のWPA横浜大会のいずれについても本紙上で報告する機会を逸した。ここにオーストラリア、メルボルンで二月二十一日〜二十六日に渉って開催されたWFMH世界大会について、更にはメルボルンを州都(「州」は、米国の州より強力な独立した政府を有する)とするヴィクトリア州の、ニホンにはほとんど紹介されていない先進的な地域精神保健システムについて、膨大な資料を持ち帰ることができたため、これらを報告する。
(なお、この国の自然の美、真夏の陽光、穏やかで善意に溢れた市民達にふれることは、紙面が許さない。)

 二
1.まず、先のヴァンクーヴァー大会との対比を試みたい。即ち、㈰規模の著しい縮小、㈪「儀式性、仰々しさ」の減少、「学術性」の増大、㈫非英語圏からの参加者の減少。

 ヴァンク大会は、何よりも会場入口から受付までの長い赤絨毯の両側に林立する巨大多国籍製薬企業の「財政的援助」への感謝状の列、中でもひときわ目立つイーライ・リリー社への感謝状に大書された「ゴールド・スポンサー」なる文字、によって特徴づけることができよう。

 これと対比的なメルボルン大会の前記の特徴は、「巨大製薬資本の極めてひかえめなプレゼンス」によって説明し得るであろう。

2.私が参加した多くのセッションの中からいくつかを紹介する。
㈰WHOアジア担当総括責任者による、多年の広範なフィールドワークに基づく事実と数値による、決定的規定要因としての「環境因」の説得力に満ちた立証。
㈪ノルウェーの精神保健部門最高責任者が、WFMHの危険な巨大製薬ビジネスとの完全な絶縁を強く求め、多くの共感を得た。さらに半世紀余を経て明らかになりつつある「薬物療法」の危険性を、WFMHが常設機関を設置して調査研究すべきであるとの発言。

㈫米カリフォルニア州で正に強行されつつある、ニホンの「予防拘禁法」に酷似した立法との闘いの報告。

㈬ニホンでの「予防拘禁法」の全容とその非科学性と危険性についての私の報告。

㈭いわゆる『テロ』なるものを、DVなどの「暴力」と同列に位置付け、同様の攻撃を加えたある報告者に対する、両者の「本質的異質性」を強調した私の反論と会場からの大きな賛同。

㈮ブッシュによるイラク侵略に抗議する決議の、理事会での満場一致の採択。

㈯スリランカ・シンハラ族の女性からの「近代西欧精神医学」の完全な欠如下での驚くべき治癒体験と彼女の組織的ケアシステムの独創的実践報告。


 三
 恐らくは殆ど知られていない、極めて優れたこの国の地域精神保健システムを系統的に把握し、ニホンに持ち帰ることは、大会参加以上に私の目的とするところとなった。そして、大会の中で明らかにされた全国レベルでのそれのほか、多くの人々の協力によって、最終的にはヴィクトリア州の統括機構の最高責任者と面談する機会を得、その上でこの州の保健システムの全容を収めたフロッピーディスク数枚を寄託され、追って多数の文献を送っていただけることになった。(これに先立ち、この機構の一施設を紹介され、楽しい交流の時間を持つこともできた。)

 更には隣接するニューサウスウェールズ州(シドニー、キャンベラが所在する)についても、ビデオなど相当量の資料をいただいてもいる。

 ここでは取り敢えず、全国レベルでの地域保健システムにつき簡単にいくつかのデータを紹介する。
㈰九十年代を通じて『全豪精神保健戦略』の下に、次のような顕著な改善が見られている。
(a)当事者の「コンシューマーズ・アドヴァイザリー・グループ」の全集での組織化とその「公的政策決定」への関与。
(b)歳出ベースでの「地域移行」(九二年→九七年)病院比率:五○%→二九%
(c)「地域」へのケアスタッフの移行(九二年→九七年)三○%→四六%
(d)その他「施設」規模の縮小・NGOへの歳出増・総合病院での急性奇病等の大規模な増設、などなど

 さて、上記すべての英文資料の全容を把握し、適切で効果的な方法で紹介する作業には多くの専門家の協同作業が必要であり、これについて多少の成案はあるが、差し当たりこの紙面を借りて、読者諸氏の今後の協力を呼びかけたい。

 なお「病」者集団の山本真理さんから託された英文資料を、現地で増刷して大規模に頒布したことを付記する。


陽和病院患者協会 岡本省三

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