追悼 藤澤敏雄先生

<編集部から> 去る3月25日に亡くなられた藤澤敏雄先生のおりふれ通信2001年新年号巻頭、本紙としては絶筆になった2002年新年号巻頭と、戸塚悦朗弁護士から寄せられたお手紙を掲載します。

二十一世紀のはじめに
      藤澤敏雄

 明けましておめでとうございます。二十一世紀を迎えましたが、皆様にはそれぞれ新しい思いでおられることでしょう。ふたつの世紀にまたがって生きられることを、素直に歓びたいと思います。知人の母上が、三つの世紀にわたって生き続けられ、なお元気でおられるという話を、つい先日耳にしました。高齢化社会の到来ということを実感させられます。
 少子高齢化という言葉が使われだしてから、ずい分の時が過ぎたように思います。2000年になって、介護保険制度が導入され高齢者の介護のための対策が発足しました。福祉サービスを税金でまかなうのでなく、これまでの「措置」という考え方から、受益者の選択による契約という考えを基本にしています。サービスの質を向上させるために、権利擁護制度や情報公開などが併せて具体化するはずでしたが、まだ実体化していません。それと、受益者負担の導入で実際に介護が必要と認定されても、利用することができない人が出てきたり、従来は市町村が工夫していたサービスがなくなるなど問題がたくさんあります。新しい制度の中味が充実していくように、それぞれで力を出していくと同時に、市民としての監視の目を持ち続ける必要を感じます。
 老人の医療については、以前から強い現状批判がありました。薬漬け、点滴漬け、拘束、寝たきりにしてしまう、早い死という老人病院の実体が知られるようになったからです。昨年暮れ、埼玉県の朝倉病院という精神病院のスキャンダルが明らかとなりました。痴呆性高齢者をいろいろな地域から集め、劣悪な人的資源や環境下で、必要もない人にまで医療点数の高いIVH(中心静脈栄養)を施し、しかも多くの人たちを早い時期に死に至らしめたということです。いろいろな地域の中には、東京八王子の滝山病院を始め、いくつかの病院から転院させられた患者が入っているとのことです。かつて1984年に発覚して、精神保健法成立の引き金となった宇都宮病院事件と同じ構造がここにもあります。劣悪な病院と知りながら、東京の福祉事務所や病院が「厄介な」患者を送り込んでいたのです。
 問題は、朝倉病院事件を我がこととして考えられるかどうかということです。昨年暮れ、ある会合で国立精神神経センター総長と出会いましたが、彼は「あれは例外的な事件ですよね」とさらりと話しました。私は「いや氷山の一角ですよ」と応じました。日本の精神病院が、朝倉病院は例外的な病院だと言えるほどよくなったとは、とても考えられないのです。もの言えぬ人や、守ってくれる家族とか友人のいない人は、今なお酷い病院に収容され続け、収奪の対象とされているのです。
 かつて、老人は共同体の中で智恵袋として尊敬されていました。しかし共同体が崩壊する一方で、高齢化が進み、文化として老人をどう扱えばいいか分からぬうちに、老人は孤立していきました。過疎、過密の地を問わず、街並みの中に老人がのびのびできる場所がなくなったのです。これは、老人だけでなく、子供にとっても同じこと言えるのですが。施設や病院などで、「おじいさん」「おばあさん」といった呼称がよく使われます。時には「おじいちゃん、おばあちゃん」とも言われます。人間の尊厳という言葉があります。個別性、歴史性をそれぞれの老人がもっているという認識の中から尊厳という認識が自然と生じます。マスとして「老人」という時に、老人の尊厳が消失するのでしょう。
 朝倉病院が存続してきたのは、痴呆性高齢者一人一人の尊厳を消し去った時に、起こりえたことだったのです。老人を呼ぶ時に姓名のいづれかをきちんと呼ぶことが出発のように思います。


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日比谷派遣村・サポート日記

派遣村ココロと体のサポートチーム  和久井みちる

 2009年1月1日、私は日比谷公園の派遣村にいた。
元日は村民150人といわれているが、ボランティアは大勢集まっていて、誰が村民で誰が支援者なのかわからない状態だった。その夜はカレー。150人分の大鍋を二つ。300人分はきれいになくなった。
 4日に行ったときはもう500人を越え、あふれかえるように人、人、人だった。生活保護の集団申請が始まっていた。私は生活保護を利用して暮らしている人間の一人だ。生活保護になって1年以上になるが、未だに「わからない」ことが多い。何百人もの人が、一斉に生活保護を受けることになったら、同じように「どうなっていくのかがわからない」「誰に聞けばいいのだろう」と戸惑う人が出るだろうというのは、すぐに想像がついた・・・・

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地域を第二の精神病院にしないために

編集部木村朋子(診療所PSW)

 昨年読者の方から会費振り込みと一緒に、「もっと現場に即した記事を」「体験や思いの文章も大事だが、1面には論説を」などのメッセージをいただきました。
 論説は努力目標として、今回は現場に即したということで、最近職場周辺で感じることを書きたいと思います。
 私が病院PSWになった約30年前と比べ、地域で支える手段はずいぶん増えています。グループホーム・ヘルパー・生活支援センターや作業所などの居場所(これは自立支援法等で少々あやしくなっていますが)・地域の中の多様な相談者・宅配弁当・お金使いがうまくできない人には小刻みにお金を渡すサービス(これは昔から福祉事務所でやっているところもありましたが)などなど・・・ あの頃これがあれば長期入院後に退院したあの人達は再入院しなくて済んだかもしれないと思うこともあります。多くの支援者が本人を中心に支援者会議をもつことも、その頃はありませんでした。
 これらは明らかに進歩です。しかし支援者会議に出たり、支援のありようを聞くと、違和感や時には憤りを感じることがあります・・・・

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訪問看護ってなに?

村上ひろみ(作業療法士・訪問看護ステーション勤務)

 精神科病院での仕事が好きで、ずーっと病院の中で働いてきた私ですが、諸般の事情により少し前から地域で訪問の仕事に就いている。車の運転ができないので(危険すぎて実用に耐えない)自転車で走り回っていて、走行距離が1日15キロならいいんだが、20キロ超となるともう半泣きである。そんなことはともかくとして、1週間に1回利用者様のお宅を訪問して、一体何をやってんだ?3割負担だとするととんでもない値段になっちゃうソレって?という辺りを、けっこう弾んでやっている側から披露したい・・・・

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東京精神医療人権センターからー精神医療審査会問題と取り組んでいます

東京精神医療人権センター 小林信子

長いことご無沙汰しています。情報の発信をしていないので焦っているのは事実です。
 でも、「人権センター」は少し活動量が落ちているとはいえ、細い水脈のように確かに存在しています!昨年12月には多くの支援者からカンパも頂き、それを半年間の活動費に当てています。皆さん、本当にありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
 今回は久しぶりに、「センター」しか扱わない地味なテーマ、目下“闘争?”継続中の精神医療審査会と県の事務局が引き起こした問題について報告します。

 群馬県在住の元患者さんからの訴え
 医療保護入院中に退院請求を出し、審査会の結果は“入院継続”となった。しかし結論が出る前に退院となり、結果通知は保護者である夫には届いたが、申請者である自分には来ず不審に思った。後日たまたま市が主催する「精神障害者の権利講座」に出席し、精神医療審査会の仕組みを知って驚いた。入院中、自分には審査委員による事情聴取が行われていなかったということに気がついたのだった。自分を入院させた夫の意見はちゃんと聞いていたのに。早速、県の担当者に電話で何回か問い合わせたが、相手にされず、しかも時間も経過していたため、「それはもう時効である・・・」と突っぱねられた、ということで「センター」に相談があった。
 今年の1月「センター」は代理人となって、①審査委員がどういう構成で何人、何月何日の何時頃、本人を訪問したのか。②審査結果の通知は当然本人にも送付されるわけだが、それがなされなかった理由は何か、と文書で質問した。
 数日後、県の心の医療センターの次長と名乗る人からセンター」に電話があった・・・

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当事者のとりとめのない話

本城一信

 去る3月7日、東京の有楽町で、第33回「メンタルヘルスの集い」が開かれ、「ふるさとを下さい」が上映されると聞き、見に行ってきました。和歌山の作業所をめぐる差別と偏見を主題にした映画でした。率直な感想を述べると、一般の人の精神障害者に対する偏見を払拭するには、うってつけの良い映画でした。(本当です!)

 ただ何ヶ所か気になる部分があったのも事実です。たとえば主人公のセリフに「作業所の職員はみんな心のきれいな人達です」というのがありました。うそだあ!!

 私は以前、あるベテラン職員からこんな言葉を吐かれたことがあります。「あなた達は福祉の上にあぐらをかいて権利ばかり主張している・・・どうのこうの」「あなた達は社会の生産活動に参加していない・・・どうのこうの」また、あるメンバーさんからもこんなことを言われたことがあります。「本城さんは生活保護を受けていることを感謝しなくちゃ。人が汗水垂らして働いて納めた税金で養ってもらっているんだから」私はこの言葉で、半年間落ち込んだ・・・


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東京精神病院事情第6版発刊に向けて

東京地業研 飯田文子

『 東京精神病院事情1998→2003』(第5版)が2005年10月に発刊されてから3年以上が経った。東京地業研は、そろそろ、次の版の準備にかかろうと検討を始めた。検討の過程で精神病院の状況が東京全体としてどう変わっているのか?厚労省のいう7万床減床はどうなっているのか?等々を精神病院統計上でどの程度見ることができるのか?個別の病院訪問をすることの意味は? 等々が課題となっている。(ご意見、ご要望を是非お寄せ下さい)

 精神病院統計から見えた2003年から2007年の変化を報告する。 
 ◎2003年と同じ評価軸で、2007年を見ると都内単科精神病院の平均点が24点から27点に上昇した。

 ◎ 単科精神病院を病床規模別と点数別で8のグループに分けてみた。(251床以上病院と250床以下病院、合計点数が8~19点、20~24点、25~29点、30点以上病院の8グループ)・・・
 

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―パンフレット紹介― 悩みは多く、楽しいことは少なく、でも希望を持ち続けている人々をどう支えるか?

コミュニティサポート研究所・報告書作成メンバー 齋藤明子

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 『精神障害者ニーズ調査報告書』の表紙イラストは地域で一人で必死で生きている精神障害者の生活が、こんなに明るいムードであってほしいという報告書作成メンバーの願いを表している。太陽がさんさんとあたるところに干されているシャツとアンダーシャツと半ズボン・・・・しかし、その下に書かれている「たりないサービスって何?」という問いかけには「足りないものだらけですよ!」「十分に足りている分野ってあるの?」という声が聞こえてきそうである。
 退院促進が叫ばれても、いっこうに効果が上がらないのはなぜなのだろう。それは一言でいえば地域生活を支え、楽しくするサービスの圧倒的な不足だろう。
・使い方までうるさく制限されている上、時間数もヘルパーの数もわずかなホームヘルプ
・家賃不足や地域の理解不足から、アメニティの低い部屋しか確保できないグループホーム
・入院生活の短縮版に過ぎないようなショートステイ
・使う側にも提供側にもサービスを活かすノウハウがほとんどないガイドヘルプ
相談業務を除けば地域での支援サービスはこれだけである。
 今年のアカデミー主演男優賞をとった『ミルク』という映画がある。まだ見ていないのだが主人公のハーヴェイ・ミルクに関する本を読んだことがある。夫を亡くし沈み込んでいる女性をバラの花を1輪持ったミルク氏が「何か私にできることはありませんか」と訪ねたという。そんなサービスが地域にあれば・・・・。

 日本の制度構築は専門家任せである。しかし障害者の回りにいる専門家は医療や福祉の専門家ではあっても、精神疾患をかかえて地域で生きることに成功し、経験や知識が豊富で、それを人に伝えるのがうまい人ではない(専門家になってから発病した人は少なくないらしいが・・・・)。地域生活の推進には当事者専門家の存在は欠かせず、地域への移行に成功した海外先進国は積極的に当事者専門家の養成に予算を割いている。そういう人材が多数出てくるまで待っているわけにも行かないので、地業研はバラの花ならぬアンケート用紙を持って「たりないサービスはありませんか?」と聞き回ったわけである。「私に出来ること」と言えないところ、148人の貴重な意見をいただいた後も解決のアクションを起こせないことが、悲しく、無力感に打ちひしがれて
いるのだが・・・・・でも、地域生活を送っている人々の悩みや願いや希望を具体的に、網羅的に、見やすく、素朴な解決策をつけて提示するところまではできた!

無料です。ぜひ読んでください
 
資料部分を入れても38ページで全体は
 1.日々の過ごし方―社会参加、行き場、話し相手
 2.支援を受けて、家で暮らす
 3.一人暮らしを実現するために
 4.住まい
 5.所得保障
 6.仕事
 7.その他
に分かれている。また表組みのページにはアンケート回答者(地域で暮らし、デイサービス、作業所、地域生活支援センターなど何らかのサービスを受けている精神障害者)のナマの言葉が集められている。 

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東京三弁護士会の障害者・高齢者の電話相談が統一されました!**** 03-3581-9110 月~金 1~4時 ****

東京精神医療人権センター 小林信子

 弁護士会は各県単位で一つ設置されていますが、東京に限っては東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会とどういうわけか3つもあるのです。
 高齢者・障害者の電話相談に関しては、東京弁護士会の「オアシス」がよく知られ、「センター」とは今までお互いに持ちつ持たれつできました。第二東京弁護士会が「ゆとり~な」という名称で高齢者の成人後見などの相談をしてきましたが、精神関係はダメでした。私たちは二弁の知り合いの弁護士たちに、精神障害者からの相談を受け付けてほしいとずっと頼んできました。「オアシス」も電話相談だけではなく、出張相談も受けることでパンク状態になり、他の弁護士会も猛省?して、やっとこの12月5日から三会統一の電話相談を発足させました。三会が曜日を分担して、直接弁護士が相談を受けます。月曜から金曜日の午後1時から4時までです。
 まだ愛称はありませんが、皆さんで何かふさわしいものを考えてあげたらどうでしょうか。

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おりふれ編集後記 2008年

 今年は精神の業界(?)にもジワジワと、あるいは急激に自立支援法の影響を感じた一年だった。
  支援費制度を知らず、応能と応益の区別も分からず、もともと少ない支援しか得難い環境の中に居たので、勉強不足もあるけれど、支援法の不穏な空気を感じつつ、現実的には今までとの違いがよく分からなかった。私の場合、生活保護を利用しているので、そのせいもあるだろう。でも、気がつくと、やたら手続きが増えたり、私自身や身近な仲間たちが居場所を失ったり、通う場所を作るのが困難になったり、はっきり形に現れずとも、なんだか作業所が前より管理的になったように思うという声が出ている。そして時に「○○さんは、もうここには来てないよ」と聞く。個人的な問題なのか、制度の影響か、私達は分からないまま、仲間との繋がりを知らぬ間に分断されていないだろうか?病院でも施設でも、そこを辞める人達は理由を言わずに辞めていくことがほとんどだ。残されたもの達は「なんでだろう?」と疑問を感じつつも、様々なシーンでこういうことに慣れているから…「なんかあったんでしょう」と、見て見ぬフリが常套だ。この技が精神の業界で生き残るため必要だったりするのだもの。
  でも、そろそろこのサバイバルスキルを違うものに変えていきたい。じゃないと生き残れないと感じるからだ。私の中で「このままではヤバい!」「なんだかいろんなことがヤバい!」と強く感じている。孤立を何より恐れる私。おりふれを通じて繋がっている方々に感謝です。来年もよろしくお願いします。  石井真由美

 全文(他の編集部員の後記)は、おりふれ通信275号(2008年12月号)でお読み下さい。
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